みんな一緒に
お昼休み中にテストの最終結果が出てることに気づいた。掲示板には全ての合否が並べられていた。
「よし、私は1個だけ」
小さくガッツポーズする。
「オレはゼロ」
と西条くんは去り際に置いていった。ムカつく。
掲示板を眺める私の隣にスっと茉心ちゃんが立つ。
「あっ! 物理落ちてる」
震えた声で告げるその言葉で彼女が合計3個落としたことがわかった。
「あー、ドンマイ」
「友梨ちゃんぅーー、教えてぇー」
「いや、私より西条くんの方がいいと思うよ」
色んな意味で。
彼女は泣きつくように頷きとぼとぼと部室へ戻っていく。
私も戻るか。そう思った矢先に早崎くんが掲示板に来た。
『追試なかった2人で遊びに行こう?』
覚えている。思わず彼の結果を目で追う自分がいた。今のところゼロ。……ではなかった。
「はぁ…………。5個目か……」
無情。あんなに頑張っていたのに結果は着いてこないのか。そう思うほどに哀れに感じてしまう。
「まぁまぁ、気を落とさずにさ。少しくらいなら教えられるから」
彼の小さくなった背中を強めに2回叩く。
「ごめんね……」
ふと口にされた言葉がどれだけ彼が本気だったのかを物語るようにこのホールに響いた。
すぐに言葉を返せなかった。濁流に飲まれた川魚のようにもはや身を任せるしかできないのかと思った。
「戻って勉強もしないとな」
同じ匂いがした。あの人と、全く同じ匂い。どうしても払拭したくて、抗いたくて、変えたくて、
「ねぇ、デートしようよ」
私の言葉は独りよがりに彼を突きぬけた。思わぬ言葉だったのか、帰路に向けた足を止め驚いた顔で振り返っていた。
「え?」
「今回だけ出血大サービス。いいよね?」
「い、いいの? 約束と違うけど」
「いいの! なに? 嫌なの?」
「そ、そんなことない」
「だったら、予定立ててよね。私はいつでもいいから」
「お、おう!」
彼の隣に立つ。わざと肩を当てて彼の目を見る。
「じゃ、もっと頑張って勉強しないとね」
できるなら、みんなで卒業したい。アリス先輩の気持ちがよく分かる。部活が一緒。それだけでも十分なくらい、私はみんなが好きだった。
「っえ! なんで落ちてるのよ!!」
………………雰囲気ぶち壊しなんですけど。彼女は何個だっけか。たしか、10…………。
5行もいかないうちに前言撤回したくなる。このお嬢様はどうでもいい。




