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泣愛のトランペット  作者: kazuha
2章︰試験の罠
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中間テスト後

 テスト。

 テスト……。

 テスト…………。



 こんなに頑張った。間違いなく高校と比べて倍ぐらい時間を使った。高校なんてペットを吹きながら勉強していても満点は取れていた。

 なんだ、この手応えのない感じは……。

 大学指定のホームページにある、在学生用のページのさらにe-ホームという場所に飛ぶと自分の点数が出てくる。

 行った教科は5科目。化学、生物、物理、機能形態、薬学化学。

 順番通りに63、72、44、75、68。全て100点満点である。

「くぅ…………。これはなかなか……」

 60以上がセーフゾーン。逆に言えばそれを下回ればやばいということになる。

 やばい……、どれぐらいやばいのかと言うと……。


『単位を落とす』


 まだ中間だ。中間試験と定期試験で合計で120点が最低ライン。44点の物理は本試で76点取ればいいのだ!!

「それ、現実的にきつくない?」

 私の耳元で呟く遥香。ゾワッと体を震わせてから、突如言われた正論に怒りをぶつける。

「やらなきゃわからないでしょ!!」

「…………、まぁまぁ怒るなって」

 両肩を強めに2回叩かれ、いつも通り私の隣に座った。

 平然と飲んでるレッドブルの匂いが私の脳を叩くと同時に彼女から自分のスマホの画面を見せてきた。

 84、82、72、92、100。

 1度見間違えかと思った。なんだ、この素晴らしい点数達は……。次元が違うこのレベルに思考ができなくなった。

「自慢……。って言いたいんだけど、これでも私、32位らしい。トップ集団はほぼ満点だってよ」

 また、グビっと青い缶をあおる。

「友梨の点数でとやかく言うつもりはないけど、うちの学校の薬剤師合格率知ってるでしょ?」

 1学年約200人。進級率は80パーセント。最終卒業人数は多くて30人。国家試験合格率は……いや合格人数は20人弱。

 無事にストレートで6年になるのは約100人。そのうちのひと握り。

 低ランク大学だから……。そんなことは外にいる人間の戯言。中に入ってしまったのだから、本気でその数人に入らなければならない。それが……私の決めた道だから。

「そうだよね。こんなんで落ち込んでる暇なんかないよね」

「うむ。単位1つ落とした程度じゃ留年しないんだからさ、今のうちに大学生活楽しんじゃおうぜ!」

 少年誌みたいなセリフに私は苦笑いを返した。

「そうと決まればカラオケ行こうよ。みんなでさ!」

「いいね! その前にお腹空いた」

「まだ3時だよ?」

「美味しいパンケーキ食べたい!」

「んーー。調べて」

「オススメないのか」

 いい友達だ。少しだけ荒んでいた気持ちがすぐに消えていった。不安とか責任とか、そういった重たい荷物を軽く持ってくれたような、そんな感じだ。

 私は誰彼構わず電話をかけた。

 中間テストは終了。慣れてきた講義と部活動、そしてさらに身を入れ始めた勉強。

 何不自由ない学校生活。

 それがこの先、私を取り巻く間違いない道。そう希望して私は学校を出ようと携帯をカバンにしまった。

「さぁ、行こう!!」

 意気揚々と場をわきまえず声を張り上げ、駅まで足を向けた時だった。

 目の前の廊下を足早に歩く、泣き顔の二宮先輩が目に入った。

 扉1枚分。私が見えた範囲はその程度。それなのに嫌にその顔が目に焼き付いた。

「あれ……、確か吹部の先輩だよね?」

 遥香が私にしか聞こえない声で呟いたのを、私は重たい頭を落とすだけだった。

「どうしたんだろうね?」

「…………私、ちょっと見てくる」

「ちょいちょいちょい」

 既に踏み込んでいた私を静止する。

「やめときなよ。落ち込んでる時に後輩におちょくられたくないでしょ?」

「おちょくりに行くわけじゃ……」

「どんなつもりでもそうとしか思えない」

 強くひかれ、ね? という言葉にまた頭を落とした。

 納得出来ないまま、なかば強引に引っ張られて駅まで向かった。

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