みずたつさんとのコラボ!
遅くなってすみません!コラボ完成しました!
今回、文字数少なめですが、ご容赦ください!
長く伸ばした黒髪を下ろし、博麗神社の縁側にて、客人を待つ少女が一人。
その姿は博麗霊夢にそっくりであり、その仕草もほとんど同じもの。しかし、巫女と明らかに違うのはその少女の服装。
その服装、合わせてその容姿は、「霊夢の先代巫女を彷彿とさせる」と少女の父親は語る。
年は15。少女と同い年の頃の霊夢よりだんぜん発育がよく、霊夢の娘とは思えない少女……博麗 霊奈は、博麗神社にて母親である霊夢の人を待つ姿のように──いや、霊夢よりも態度は悪かったが──客人を待っていた。
お昼時のそれから、実際に客人が来るのは、陽が傾いた頃であった。その間、霊奈は眠ってしまっていたのだが。霊奈の父親であり、霊夢の夫である男、博麗霊斗に怒られて起こされるまで、ぐっすりと眠っていたため、彼女はまだ眠い状態から今日の話は始まる。
◇◆◇◆◇
「ふぁ……あぁ〜あ。眠い」
私は周りを見渡し、そう呟いた。うん。眠いとしか言いようがない。いや、もう少し言い表し方もあるかもしれないけど、私はこうとしか言いようがない。ひたすらに『眠い』。
「そんなにあくびしてたら、眠れるもんも眠れなくなるよ?」
「いやいや、眠いからあくびするんでしょうって……いつの間に来たの?」
私に話しかけてきたのは『秦 こころ』。それも……別世界の。
霊斗様は最近色んな人を異世界に送って、そこで起こす様々なトラブルや逆にこっちに来た異世界の人が起こすトラブルを見るのを楽しみにしている。正直、私はそんなのどうだっていいし、巻き込まないで欲しいところだけど……。
今回この世界(遊楽調と言うらしい)に送られてきたのは、みずたつさんという方の世界のこころ。
正直、霊斗様は別世界に居る人が来るのは大歓迎だけど、こっちの世界に居る人が来るのはあんまり好きじゃないって言ってたけれど……「まあ、そいつの新たな側面を見るのも勉強になるだろ」って、割と乗り気でこっちの世界に引き込んだのよね。
しかも、その対処を私に任せるんだから頭にくるわ。こんなの霊美(私の妹)や妖緋にでも任せれば良いのに、なんで私に……。
私はそんなことを思いながらも、別世界のこころを招き入れる。
「ようこそ、遊楽の調を司る幻想郷へ!」
「そんなこと言ったら私たちのいた所は駄弁りの為だけにある幻想郷になるんだけどな……?」
「ま、細かいことは良いからさ。思いっきり楽しんでこうよ」
こころは私の言葉に頷き、そうして面を全て捨て置いてしまった。
「あれ? 面はいいの?」
「うん。はっきり言って、アレ邪魔。いつまでも顔の前にあると前を片目だけでしか見えないから、距離感掴みづらいんだよね。帰る時に送ってくれれば、まあ何の支障もないし?」
「それ、私が送る前提になってるよね……」
私はそう言いながらも、捨てられた面を回収する。
「ねぇ、一つ思ったんだけど」
「ん? なんだい?」
「この面……特に希望の面さ……」
「「趣味悪い」よね」
「うん、良く言われる。仕方ないことだよ。強いられる理不尽には抗えないもんだし」
強いられる理不尽、とは一体なんのことか。
予想はできるからあえてあんまり深く突っ込まないけど、
私とこころが駄弁っていると、突然完全な人間になれない下級妖怪が突然襲いかかってきた。
「ヒャッハーーー!!!! あいつを殺せば、大頭から人間の魂と位が貰えるんだってよ!!」
「マジか!! さっさと殺ろうぜ!! 位がもらえれば、色んな意味でやりたい放題だ!!」
下卑た妖怪達がそう会話し、次の言葉を発する前に、私は妖怪の一匹を拳で叩きのめす。
他のも、こころが妖力弾や薙刀で倒したみたいね。
「ふん。この程度で私を殺そうなんて、100万年早いわよ」
「その服装でその戦闘だと、綺麗な巫女服もただの戦闘服だな」
「知らないわよ。霊夢のその前の巫女と同じ服装らしいわよ。それより、ちょっと場所を変えないかしら? ここじゃ慌ただしくて、ろくに話もできないわ」
私はそう言って、人里に向かってこころが付いてきてるのを確認しながら浮遊する。途中、何度か雑魚妖怪に襲われたが、そいつらは一撃で墜落させたわ。
◇◆◇◆◇
〜三人称視点〜
人里の片隅にひっそりと佇む、一軒の居酒屋。
霊奈の父親、霊斗の支援によって霊斗の友人に経営されるその居酒屋に、こころと霊奈の二人は入った。
「いらっしゃーせー! 霊奈ちゃん、今日はどうするー?」
「うーん……とりあえずあるのでいいわ」
「あいよ! ちょっと待っててねー」
霊斗の友人『霧雨 魔晴』はそう言うと、冷蔵庫からいくつかの食材を取り出し、調理を開始する。
一口大に切られ、下ごしらえの済んでいる鶏肉を油で揚げながら、ネギを縦に切り刻む。
それらを大皿に盛り付け、酒、醤油、砂糖、みりんで味付けしたタレを上からかける。
その周囲に申し訳程度の葉物野菜を盛り付け、霊奈達の前に差し出した。
「唐揚げを色々改良してみたんだ、是非食べてみてくれ」
「ありがと。いただくわ」
霊奈は短くそう言うと、割り箸で自分の取り皿に大皿に乗った鶏肉をいくつか持っていく。
「ほら、アンタも食べなさい……ってやけに静かだと思ったら、先に食べてたのね」
霊奈はそう言って、出遅れたことに悔しさを感じながら口に鶏肉を運ぶ。
「……おいしい」
「ん。おいしいわね」
「……そう言えば霊奈は、男は居ないのか?」
「ふふっ……あの人みたいなこと言うのね。私、既婚者よ」
「……マジで?」
「マジのマジ、大マジよ。ま、あいつは今は寝てるんだろーけど」
霊奈はそう言うと、再び鶏肉を口に運んだ。
まだ、少し熱い鶏肉。……が、火傷するほどでもないその熱さに、霊奈は満足気に頬を綻ばせる。
「……それで、何の話をしに来たんだ?」
「あら、いきなりそれいっちゃう? ……まぁ、飲みなさい」
「う、うん」
こころは霊奈の誘いに頷くと、霊奈の差し出したグラスに入った酒をゴクリと飲み干す。
「あら、いい飲みっぷりね」
こころは霊奈のその言葉に、満足気に頷いた。
「うんうん。そら、どんどん飲むよ〜!!」
「あら、本来のあなたがようやく見えた感じかしら」
霊奈はそう言いながら上機嫌でこころのコップに、机の上に置かれた一升瓶から酒をなみなみと注ぐ。
「ありがと」
「私も飲もうかしら」
霊奈はそう言いながら、酒の入ったコップを口元に運ぶ。少し辛い、が霊奈にとってはちょうど良い。
鶏肉もいいつまみとなって、静かに、時にはうるさく、無言で、しかし時々笑いあい、酒をお互いのグラスに注いでは、それを飲み干し、相手のグラスに注いでいく。
真顔のこころからは分からないほどの非常に心地いい空間が、2人の間に出来ていた。
2人がほろ酔い気分で飲み続ける。そのペースは、1時間で一升瓶を10本空けるほどの猛スピード。
2人からしたら何ともない状況であるが、魔晴は既に空気中に充満したアルコールの臭いに、顔をしかめていた。
換気扇を伝って動く空気の、ゴォーという音がなるが、2人はやはりそんなことも気に留めずに飲み続けていた。
霊奈は本来の目的も忘れ、こころは酔った霊奈に押し進められるままに。
気づけば、こころは机に突っ伏して毛布をかけられ、霊奈は床に倒れ、毛布すらもかけて貰えない、そんな状況が出来上がっていた。
「はー……あの人もあの人で潰れるまで付き合わされるから嫌だけど、コイツら……」
魔晴はそう言って、彼の能力を行使する。……即ち、魔法を司る程度の能力。魔晴の召喚魔法によって、こころと霊奈は伝票と共に、博麗神社へと送り届けられた。