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助けて

最近、知らない声が聞こえることが増えた。

いわゆる幻聴ってやつだ。

聞いたことのない、少女のような幼い声で

「助けて」と。


鬱病になったんだろうか、と心配したがあいにく肉体的にも精神的にも健康だ。


いや、今の状況は欝になりそうだが



私、橘 柚香は学校で大ッ嫌いな数学のテストを受けていた。

数字の羅列に頭を抱えて悩む。

わからなさすぎてつらい。


今までぎりぎり赤点回避をしてきたが今回はちょっとやばい。

本気で頑張らないとやばい。


本気で頑張らないとダメなのに…


…眠い


徹夜と数字の羅列があいまって、少しでも油断したら意識が飛びそうなくらい眠かった


徹夜といっても勉強なんて一切していない。

やっていたのは最近はまっているRPGのオンラインゲームと、天体観測だ。

…何をやっているんだろう、私は馬鹿か。馬鹿だ。

数学がこんなに致命的なのに。

昨日…今日か。今日の自分を恨んだ。


…やばい、もうダメかもしれない。

一応最後までやったが、ところどころ飛ばして空欄になっているところが目立つ。

何とかして埋めないと赤点になってしまう。それだけは回避したい。



『…た…て…』


と、不意にどこからか声が聞こえてきた。

まただ、またこの幻聴だ。


『助けて…』


助けてほしいのはこっちだ。

それにいくら助けてほしいって言ったって私には何もできない。

姿も見えなければどこから聴こえてくるかさえわからないのだ。

そんなもの助けようがない。


『…助けて…』


一際大きく声が響いたかと思うと、突然目の前が白い光に包まれた。




「…うぅ」


草の青い匂いで目が覚める。あぁ、この匂いはやっぱきついなぁ。

なんだかいつもより匂いがきつい気がする。

というかなんで草の匂いがするんだろう。


ゆっくり目を開けるとそこは知らない世界だった。

月の光に照らされた色とりどりの花が咲いていて、見上げると満天の星空がある。

そこらの絶景スポットや天体観測で見れた星空より断然綺麗だった。




…いやいやいやちょっと待って。私は確か学校でテストを受けていたはず。

こんなわけのわからない見たことない草原なんかに迷い込んでいるわけがない。


そうだ、これは夢だ。テストは嫌だけど早く現実世界に戻らなければ。

こんな漫画やアニメやラノベでよくある展開になんかなるはずがない。

…戻るにはどうすればいいんだろう。戻る方法がそもそもわからない。


2、3分目を閉じて考えてみる。


出た結論、とりあえず自分の頬をつねってみる。

戻れるかどうかは怪しいけど、やってみる価値はあるかも。

私は自分の頬に手を持っていく。


もにゅ


「…もにゅ?」


もにゅっていった?自分の手がもにゅって言うの?

自分の手なのにまるで餅みたいな、もにゅもにゅした感触がある。

いや餅より少し硬い…まるで肉球のような。



見てみるとそこには猫のような肉球を持った、白い毛並みの腕があった。



…はぁ?思わず二度見してしまう。

何回瞬きしても目の前にあるものは獣のような腕。

自分の腕を動かすような感覚で手をグーパーとしてみる。

するとその腕もまるで私が動かしているかのようにグーパーと開いたり握ったりを繰り返した。



「…!?…っ!?!?」


これ自分の腕!?


やっぱり夢だ!!!こんな非現実的なことありえない。ありえるはずがない。

柔らかい肉球でぺちぺちと自分の頬を叩く。ふさふさとした毛が肉球をなでて少しくすぐったい。


…毛?

自分の頬に手を宛てがうとふさふさとした毛の様なものが肉球に触れる。

このふさふさしたものはなんだろう。私ってこんなに毛深かっただろうか

あいにく夢の中で、しかも鏡なんていう便利なものもないので今すぐ確認する術がなかった。

仕方がないのであたりを散策してみようと思う。

池みたいなのがあったら確認できるかもだし。


ふと足を見てみると、脚も同様に白い毛が生えていてまるで獣のようだった。

もう驚かない。自分で言うのもなんだけど、我ながら順応性が高いと思う。


しかしこの脚、歩きにくい。

まるで爪先立ちをずっと続けているかのような感覚だ。

ひょこひょこ歩いている姿は傍から見れば変な人だろう。

辺りに人がいないのが唯一の救いだった。逆にこれはいなさすぎるんじゃないかってくらい。


まるで一人この世界に置き去りにされたような


変なことを考えるのはよそう。どうせ夢の中。目が覚めたら現実だ。

そういえばあれほどひどかった眠気もいつの間にか覚めている。

まぁ夢の中なら当然だろう。


歩くのにも少しずつなれてきたところで大きな湖を見つけた。

水面に大きな月が反射してきらきらと光っている。

これほど透き通っていれば大丈夫だろう。

淵に手を掛け身を乗り出すようにして覗き込む。そこには


白い体毛らしきものに覆われた肌

頭にはアニメでよく見る白いうさぎ耳が生えている


自分そっくりな人がいた。



どなたですかあなたは



一瞬思考回路が停止する。誰だこの人は

水面に映った人と見つめ合うこと約30秒。

私はやっとこの水面に映った人が自分だと理解する。


「…っ??!!」


おかしい、おかしいよこの世界。

いくら夢の中とは言え自分にうさぎ耳が生えて獣っぽくなるなんてありえない。

というかどんな夢見てるんだ私。もしかして:ゲーム脳


いやいやそんなことを考えている暇ではない。どうしようどうしようどうしよう。

早く夢から覚めなければ。これは夢だ、夢なんだ。

そうだ、私は普通の人間で、今学校にいて、嫌いな数学のテストを受けているんだ。

嫌だけど早く夢から覚めてテストの問題を解かなければ。


悶々と悩んでいると不意になにかの気配を感じた。

後ろが見えているわけではないがなんとなくわかる。人がいる。

嫌な予感を感じ振り返ろうとした瞬間、背中に軽い衝撃と小さな浮遊感が体を襲った。


「っ、あ、…!」


それが誰かに押されたんだと理解するまもなく、私は目の前の透き通るような湖に沈んでいった。



一瞬だけ見えたのは、無機質で、どこか悲しそうな目をした少女だった



「…お姉ちゃん…私たちを、私たちを助けて」



沈んでいく中で、そんな声が頭の中に響いてきた。

だから助けて欲しいのはこっちだってば。

落としておいてそれはないだろう。



もがく気力もなく、私は意識を手放した──

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