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一幕・惰眠を妨害する人

 うららかな陽気が窓から差し込む今日の日の午後。

 僕の穏やかなひと時は、まるで空気の読めていない残念な男の声によって無惨にもぶち壊された。


「今日も素敵だね、ジェイさん」


 この台詞が僕に向けられていることは知っている。だが、僕はあえて空耳であると解釈して無視を決め込んだ。

 いつもの事なのだ、こんなの慣れている。こんな事に慣れきってしまっている僕の精神状態は、この男に出会う以前よりも各段に悪化している。今よりちょっと昔の僕ならば、この男の台詞ひとつにいちいちこめかみを震わせたりしていた。それが今ではどうだろう?  眉ひとつ動かない。確実に順応しきっているではないか。これは尋常どころの騒ぎではない。異常だ。異常事態だ。

 内心修羅場と化している僕の脳内に、脳天気そうな男の声が侵入してくる。この天気で脳が干からびればいいのに。


「つれないなぁ、いつもの事だけど。でもまあ嫌よ嫌よも好きのうち、って言葉もあるし、きっとそういう事なんだよね。勿論わかっているよ」


 全くわかっていない。久しぶりにこめかみが引き攣った気がしたが、僕は無視をし続けた。

 僕だってこれまでの経験から学習している。こういう輩は相手にするからつけあがるのだ。だから僕は口を閉ざし、だんまりを決め込む。

 それにしても、このしつこさには毎回参ってしまう。ここで実力を行使してもいいというのなら、僕は迷わず魔法を使う。二度と僕の目の前に現れないよう、死なない程度にあれやこれを潰したい。これはあくまで妄想だ。しかし、理想でもある。


「わかった! なるほど閃いたよ。つまり俺がここに住めばいいんだよ。何で今まで気付かなかったのだろう? それがいい、早速そうしよう! 何事も迅速な対応が求められる時代だものね。コミュニケーションだっておんなじさ。さて、ベッドはジェイさんの隣でいい? あ、もしかして一つのベッドの方が良いかな?」

「……冗談もいい加減にしないと潰しますよ」


 堪忍袋の緒が切れそうになったので、僕はできる限り丁寧に申し上げた。

 今まで徹底的に存在しないものとして扱ってきた男の方に視線を向けると、上っ面だけは麗しいと賞賛される微笑がこれでもかってくらい貼りついている。

 柔らかい練り色の髪、長い睫毛、絶妙に配置された顔のパーツ、透けるような空色の瞳。そのどれもが、他人に言わせてみれば「欠点のない完璧な麗人」ということになるらしい。過大評価だ。

 ――まったく、馬鹿らしい。なぜ気が付かないのだろう? 確かに容姿が整っていることは認める。正直、僕は顔面の良し悪しなどに興味はないのだが、この男を目撃しただけて失神してしまう女性が数多く存在するのも確かなのだ(有害生物指定して駆除したほうがいいんじゃないか)。しかし、本来注視すべき場所はそこではないのだ。

 その「麗しさ」とやらの陰に隠された、性根の腐り具合。この、言うなれば「本性の悪さ」は容姿以上にたちが悪い。

 先ほどから、その本性の見え隠れする含み笑いが僕に向けられている。ああ、最高に気分が滅入る。

 うんざりとした表情を男に見せつけてやると、こいつは更に面白そうに笑みを深めた


「ようやく俺を見てくれたね」


 どうやら罠にかかってしまったらしい。こいつは僕の注意を引きつけるためだけに、さっきの不愉快な台詞を吐き出したようだった。

 まったく、小賢しい手段を使ってくる。僕は溜め息を吐いた。

 この男は、有言実行という言葉を具現化したかのような人間なのだ。無駄に行動力があるので、放っておくと今のような冗談みたいな話でも実際に行動に移してしまう。その場合、この男にきちんと対応して拒絶の意思を示さなければ、冗談を現実のものにされてしまう。

 ――つまり、この男が現れた時点で相手をする以外の選択肢なんて存在していなかったわけなのだが、それでも僕はあらがいたかった。

 そして、この男は自分の発言が絶対的なものであると自覚している。早い話がわかっていて嫌がらせをしているのだ。

 天の配剤とやらが本当に存在するのだとしたら、僕は神を恨む。神はなぜ、よりにもよってこんな男に厄介な能力を授けたのだろうか。これでは僕があまりにも不幸ではないか。


「……それはそうと、お務めはいかがされたのですか国王。まさかまた脱け出してきたのですか」


 僕は無関心を装いながらお訊ねした。


「やだなジェイさん。俺にはルイスって名前があるんだから名前で呼んでほしいな。知らない仲でもないのだし」

「一介の魔導士が国王を愛称で呼ぶなど、畏れ多いことです。それに知らない仲とおっしゃるのなら、国民はすべて国王の事を存じ上げておりますよ。そのように申されるのならば、まずは全国民に同様の要求をなさってみてはいかがでしょうか」

「えー、さすがにそれはなぁ。それに、俺にとってジェイさんは特別なんだよ。君は特別。さあ呼んで」

「…………」


 そして神は意地悪だ。よりにもよってこんな男に地位までをも授けたのだから。

 僕は頭の中でこの男――ジィタ王国第十七代国王、エクルイス・ジィタ・ミリガンのあれこれを潰していく様を想像し、この爆発してしまいそうな衝動を抑えつけた。

 これでもこの男は、大多数の国民から絶大なる支持を受けて王様をやっている。だからここで僕がこいつに不敬をはたらいてしまったら、おそらく……というよりは確実に、魚の餌にされてしまう。

 迷惑を被っているのは僕だというのに、まったくどうして国民はこいつの猫かぶりを見抜けないのだろう。


「ジェイさんが名前で呼んでくれたら仕事するよ。さ、呼んで」


 殴りたい。

 この男が国王でさえなければ、今頃は殴り倒しているはずだった。

 これは職権乱用というやつなのではないのだろうか。明らかに僕をおもちゃにしている。


「名前をお呼びせずとも、国王は職務を遂行される義務がおありかと存じ上げますが」


 至極真っ当な僕の返答に、国王はこれでもかというほど悲しげに顔を曇らせてみせた。


「ああ、それは勿論わかっているよ。でもね……たまには俺だって息抜きする時間が欲しいんだ。公人としての義務は勿論果たす。けれどね、僅かな私人としての時間を君と分かち合いたいんだ」

「それなら僕の所にいらっしゃるのは適当ではありませんね。ここは王宮内部ですから、息抜きにはならないでしょう」

「そんなことはないよ。こうして君と会話するだけで英喜が養われていく気がするよ。だからもっと元気になれるよう、俺の名前を呼んでほしい」

「それは気のせいというやつですね。そもそもその行為で得られるものが理解できません」

「理解する努力をするべきだと思うよ。だって俺のやる気が損なわれたままだと、それが原因で国が傾いてしまうかもしれないし。……君が俺の名前を呼ばなかったばっかりに、ね」


 そこでこの男は口の端を持ち上げた。勝ち誇ったような瞳が、げんなりとした僕の視線とぶつかり合う。


「……最悪だ」


 思わず口をついて出た言葉に、国王は満足げに微笑みを浮かべたのだった。


「ふむ、やっと俺の相手をしてくれるかな?」


 尚も不愉快な笑みを浮かべる国王に、僕は精一杯の睨みを向けた。

 僕の右手が拳を握り始める。不敬罪、魚の餌という語句が脳裏を過ぎったが、もう限界だった。

 もしもの時は殴ろう。そのあとのことはその時考えよう――


「……国王、暇を持て余しているのなら他をあたって下さい。僕は暇ではありません」

「暇ではありません、って……さっきまで寝てたじゃないか」

「魔導士は体力が資本なのです。睡眠も体力づくりの一環です」


 胡乱な眼差しを向けてくる国王に向かって、僕は言い切って答える。

 そう、僕はこの王国で宮廷魔導士をしている。以前はどこにも属さない、フリーの魔導士をしていたのだが、数年前に国に雇われ、今では高位魔導士の地位に就かせてもらっている。

 ――正直に言わせてもらえば、僕は王宮付きの魔導士……しかも高位職になど就きたくはなかったのだが、今からおよそ一年前、この馬鹿国王ルイスの策略によって今の状態を余儀なくされてしまった。

 高位職の魔導士たちは、何らかの有事があった際に王族を守護しなくてはならない。その為、いつでも王族を守れるよう、常に王宮内部に待機していなければならないのだ。

 そのもっともらしい規則に則り、僕はこの王宮内に居を構えている。おかげさまでこの鬱陶しい男と物理的な距離が縮まってしまった。まったく嘆かわしいかぎりだ。

 しかしいくら王宮内とはいえ、守られる側の国王がうろちょろと出歩いていたら守るもなにもあったものではないと思うのだがその辺はどうなっているのだろうか。

 逆をいえば、僕がこの馬鹿国王の寝首を掻くことも可能ということになるのだが……ものは考えようだ。そんな冗談でも考えないと、僕はそのうち発狂してしまう。


「まあいいや。寝ようが何しようがジェイさんの勝手だものね。それより、そろそろベッドから起き上がってくれても良いんじゃないかな?」


 そう指摘されてはじめて、僕は自分の状態を思い出した。

 ――そういえば寝転がったままだった。

 一国の主を目の前に、寝たまま対応するなど――この国のうるさい爺様に見つかってしまったら厳罰だけでは済まされないだろう。いや、この場合は睡眠時に訪れた国王が悪いのか? まあ、細かいことは横に置いておこう。僕は仕方なくベッドから起き上がった。

 椅子の背もたれにかけられていた上着を手に取り、室内着の上に羽織る。そして、そのまま椅子に腰を下ろした。


「それで、用件はなんですか?」


 僕はきちんと国王と向かい合いながら尋ねた。格好がてきとうなのは目を瞑ってもらおう。


「だからそれは先に話したじゃないか。俺はジェイさんに会いに来たんだよ」

「もう会いましたね。用件は済んだでしょう、さぁ出て行って下さい。邪魔です」


 しっしっ、と手を払ってみる。


「酷いなぁ。でも俺の目的は他に移ったからね。ほら呼んでよ、名前をさ」


 嫌な所に話が戻ってきてしまった。本当、こいつが国王でさえなければ窓から放り出しているところなのに。僕はこれ見よがしにため息を吐いてみせた。


「……エクルイス・ジィタ・ミリガン国王、面倒なのでどこかに消えろ」


 結局、僕はこいつに振り回されるはめになるのだ。だいぶぞんざいな口のききかたになってしまっているが、今更そんなの知ったこっちゃない。なにが国王だ、いっそ泣いてしまえ。

 こちらが妥協して名前を呼んでやったというのに、馬鹿国王ルイスは僕の部屋から出て行こうとはしなかった。泣きもしない。それどころか、椅子に腰をおろしたまま面白そうな表情を浮かべてこんなことを言ってくる。


「やっと俺の名前を呼んでくれたね。でも俺が要求したのは愛称の方だよ。照れずに呼んで欲しいなぁ、俺と君との仲じゃないか」

「どんな仲だ。気持ち悪いことを言うな」


 さすがに切れた。ぶち切れた。

 しかしルイスは僕の怒声にもへこたれずに、首を傾げて尚ものたまう。


「説明が必要なの? 今更?」


 ――ああもう面倒くさい。全て面倒くさい。

 堪忍袋の内容物がみるみる目減りし、ついには枯渇する。もういいや、とりあえず一発殴ろう、と拳に力を込めたその瞬間――


「見つけましたよエクルイス様! やはりここにいらっしゃったのですね!」


 唐突に聞こえてきた声が、僕の衝動を停止させた。


「あーあ、見つかってしまった。残念」


 残念そうに呟くのは、残念な国王だ。


「見つかってしまった、じゃないですよエクルイス様! 今日は静かな環境で仕事をしたいと仰るからお一人にして差し上げたのに……どうしてここにいらっしゃるのですか! ランスロット様もお怒りですよ! ぼくの立場も考えて下さいよぉ!」


 今にも泣き出してしまいそうな顔で(いや、既に半泣きしている)嘆いているのは、この馬鹿国王の補佐役であるリーズリース・クラットだ。僕や国王より年上の二八歳だと記憶しているが、かなりの童顔なのでたまに十代に間違えられる。

 彼は行方をくらました国王を捜して、王宮中を駆けずり回っていたのだろう。さすがに僕も同情してしまう。気の毒だ。


「爺やか。相手が爺やでは仕方ないな、執務室に戻るとしよう。それでは私はここで失礼するよ、ジェイ。また私の息抜きに付き合ってくれると助かる」


 それだけ言い残して、ルイスは僕の部屋を後にした。

 ――なにが「私」だ。まったく、この変わり身の早さだけは感嘆に値する。だからといって評価する気はさらさら無いのだが。

 とにかく嵐は過ぎ去った。寝直すなら今のうちだ。


「ジェイ様、お騒がせしてしまい誠に申し訳ございません」


 また睡眠が妨害された。

 まだ室内に残っていたらしいリーズリースが、腰を折ってねぎらいの言葉をかけてくる。まあ彼になら睡眠を妨害されても不快には思わないのだが。

 まったく、律儀な性格だ。リーズリースは誰に対しても敬語を使う。彼は魔導士とは相対的な、武を尊ぶ警邏騎士団の団長でもあるのだが、さっきのように稀に頼りない仕草をみせる時があった。

 童顔で敬語……。部下に対する示しとか、その辺は大丈夫なのだろうか。……まあ僕が心配することではないのだけれど。


「リーズリースも大変だね。気の休まる時間がないだろう?」

「いえいえ、ジェイ様ほどではないですよ……っと、そうでした。ジェイ様にランスロット様からの伝言がございます」


 唐突に話を変えたリーズリースからあることを察して、僕は気を取り直すように姿勢を正した。彼が国王ルイスの後を追わずにここに残ったのには、勿論理由がある。


「仕事だね?」


 僕がリーズリースに問いかけると、彼は頷いて応えた。

 ちなみにランスロット様というのは、先ほどの会話に出てきた「爺や」のことを指している。幼い頃から彼に指導教育されてきた国王ルイスにとって、この「爺や」というものはとても厄介な存在であるらしい。

 まあ確かにランスロット様は国王とは違った意味で曲者だと僕も思う。というか、厳格すぎるほどに厳格なのだ。まず、冗談が通じない。この時点で存在が冗談みたいな国王ルイスとは正反対だ。

 彼はジィタ王国における、あらゆる組織図の頂点に君臨している。もちろん一番上に君臨するのは国王であるルイスなのだが、実際に組織を取り仕切っているのはランスロット様だった。

 そのランスロット様からの伝言となると、内容はほぼ決まっている。リーズリースは口早に答えた。


「お察しの通りです。ジィタ王国より北西に一二○、国境近くにある自然洞窟群に盗賊団が居を構えているとの情報が入っております。付近で数名の旅人が行方をくらましており、その行方不明者について件の盗賊団が関与しているのではないかとの報告が入っております」

「詳細は?」

「はい、おおよそのことは調べがついています。盗賊団を構成する人数はおおよそ三○。その中心にいるのは額に切り傷のある大男――彼はガセンと名乗っていますが、半年前にクーザル国から脱獄したルベンズ・アトファであると見てまず間違いないと思われます。脱獄後に以前の仲間たちと合流し、ジィタ国内に逃げてきた模様です。クーザル国では死刑宣告を受けています」

「行方をくらました旅人について、なにか分かっていることは?」

「正確な人数については把握しきれておりません。ただ、自然洞窟群近辺にて、捕縛されたと思われる旅人の死体が数体見つかっております。性別はすべて男性。身元が確認できた旅人の関係者に話を聞いた限り、その旅グループには女性も数名加わっていたようですが……そちらはまだ見つかっておりません」

「男性のみが死体で発見され、女性だけが行方不明か……。わかった。ところでこの仕事は」

「抹消です」


 僕からの質問を先回りするかのように、リーズリースが答えた。

 ――さて、一概に宮廷魔導士といっても、僕たちは国王の安全を守るだけが仕事ではない。ましてや寝てばかりいるわけでもない。僕たちは国内で起こった、ある特定の騒ぎを鎮める役割も担っている。

 国内の安寧秩序を保つのが警邏騎士団の仕事ならば、僕たち宮廷魔導士は、それとは別の方面から王国を守護している。つまり、表沙汰に出来ない問題を片付ける役割である。

 宮廷魔導士の力は、人の目に触れない、極秘裏に問題を処理するときに行使される。そしてその仕事は、よほどの制約がない限り、抹消――つまり暗殺行為を意味している。

 僕は椅子から立ち上がると、壁際に置かれたクローゼットの前に移動した。そこから服を取り出し、着ているものを脱ぎ捨てて着替え直す。

 黒色で統一された、宮廷魔導士専用の制服。その上に先ほどの上着を羽織り、僕はリーズリースに振り返った。


「ほかに何かあるかな」

「盗賊団の処理方法については特になにもありません。ただ、行方不明者の生存が確認できた場合は、そちらの保護を優先して下さい」

「わかった」


 平然と受け答えるリーズリースに向かって、僕は簡単に言葉を返す。そして足早に部屋から退室する僕の背中に、「お気をつけて」という声がかかった。



 ――王宮内部、地下3階。

 公には存在しないとされているこの場所に、僕たち宮廷魔導士の本部がある。

 見張りの前を通過し、本部の扉を開けると、中にいた女性の一人が足早に近付いてきた。彼女は指先で眼鏡の縁を持ち上げながら、しっかりとした口調で状況を伝えてくる。


「ジェイ様、魔法陣の用意は出来ております」

「ありがとう。転送先は?」

「自然洞窟群から南西に一、本拠地と思われる洞窟から見て、死角となっている場所に転送場所を設定しました」

「うん、いい位置だ。それに仕事が早い」

「いえ、当然の判断をしたまでです」


 彼女はそう答えるなり、すぐさま几帳面そうな横顔を奥に向けた。少しだけ耳が赤くなっている気がするけど、それには触れないでおいた方がいいだろう。彼女は実力ある魔導士なのだが、照れ屋なのだ。彼女は顔を背けながら、「どうぞ」と僕を部屋の奥に促した。

 奥に進むと、床一面に魔法陣が描かれた部屋が広がっている。

 ここは転移室。数名の魔導士の魔力によって作動するこの転移装置は、かつて戦があった頃に王族を安全な場所に逃がすために使用されたといわれている。

 今では国同士で和平条約を結んでいるから戦はないが、僕たち魔導士は任務を遂行する際に、この転移装置を使用する場合があった。

 僕は部屋の中心に向かって進む。そして、魔法陣の中央に立った。

 魔法陣の周りでは、五人の魔導士たちが呪文を唱え始めていた。魔法陣が青白く発光し始める。


「では、頼むよ」


 その台詞を合図にするように、僕の身体がゆっくりと魔法陣の中に吸い込まれていった。



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