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教会を出て街の北側を西の方に進むと、ひときわ大きな建物があった。
「町長の家だよ。大臣の親戚でね。悪どい事をして儲けてるって話さ。」
その時、家の中から喧嘩をする声が聞こえた。
「親子喧嘩さ。息子が跡を継ぐのを嫌がっててね」
「どうしてですか?」
「町じゃあ町長は嫌われ者さ。大臣にそっくりで、チビでハゲで威張り散らして、奥さんも借金のかたに無理矢理結婚させれれて、いつも泣いていたよ」
「なんてひどい」
「それで、三年前に病気で亡くなってねぇ。息子はお母さん思いだったから家を出ようとしたんだけど、町長がならず者を雇って連れ戻しちまうんだよ」
「可哀想に…」
そんな話をしていると町長の家の戸が勢いよく開き、一人の若者が飛び出して来た。
クリアとぶつかりそうになり
「あ!すみません」
若者は謝ってクリアを見て、真っ赤になった。
「き、君名前は?僕はキース」
「あ、エレナです」
その時、町長の声がしてキースは慌てて走り去った。
そろそろ夕暮れになって来たので、クリアはテレサと別れて宿へ戻った。