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第一話 ―6―

「佑介く~ん。どうしよう、お皿割っちゃった……」

「えぇー……」

 それは朝食を作っていた時のことだった。申し訳なさそうにそんなことを言いながら台所に顔を出したのは、赤城(あかぎ) 友里音(ゆりね)……つまるところ、俺の母親だ。

「どうしよう……」

「あぁー……それじゃあ、大きなかけらはここに入れて」

 冷蔵庫の横にためてある袋の中から、紙袋を一つ、ビニール袋を一つ取出し、紙袋の中にビニール袋を入れて袋を二重にしたものを彼女に手渡す。

「それで、由香にこれ渡して。小さなかけらをこれで取ってって伝えて」

 そして、次に後ろの引き出しからガムテープを一つ取り出して彼女に渡す。

「うん、分かった。頑張るね」

「……お願いね」

 何をどう頑張るというのか。別にそんな大変な作業はないと思うのだけれど。ただ、問いただすのも面倒だったので、お願いするにとどめておく。

「それじゃ、いってきま~す」

 パタパタと遠ざかっていく足音。やっと朝食を作る作業に戻れると一安心。

 卵をボールのふちにぶつける。カチンと心地のいい音とともに、卵の表面に走る亀裂。両手に持ち直して、卵をフライパンの上に落とす。ジュッという音とともに、綺麗に落ちた白身と黄身が、フライパンの上で踊る。

 あとは、ソーセージと食パンでも焼いて、終わりでいいか。いつもよりは手抜きの朝食だけど、今日はいつもよりも忙しいからしょうがないと割り切って。

「佑介くん、終わったよ~」

 カチャッと、皿の破片の入った紙袋を俺に差し出して、エッヘンと胸を張る由香。そんな作業は誰にだってできると思うのだが、まあ彼女は褒められて伸びる子だ、そんな事を言って拗ねられでもしたら面倒だし、ここは大人しく。

「よしよし」

「えへへ~」

 頭をなでると、にへらと笑う。まったく、本当に単純な奴だな。将来変な奴に騙されなければいいと思うが。

「そんじゃあとは、あの二人が悪さしないように見張っててくれ」

「あいさー!」

 にこにこ上機嫌で台所から飛び出していく彼女の後ろ姿を見送ってから、またフライパンの上へと目を戻す。

「……あ」

 そこには、黒く焦げた何かがでんと鎮座していた。

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