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第一話 ―3―
さっさと荷物を持って帰ってしまった部長。そしてその後を追って部室を飛び出していった久々寧先輩と黒潮先輩。去り際、久々寧先輩が思い出したようにこっちを振り返って、何か鈍色に輝くものをひょいと放り投げてきたのを受け取る。かちゃりと手の中で金属が鳴った。
「戸締り、よろしくね」
さわやかに彼はそう言い置いてから、飛鳥待ってよと廊下の向こうへと消えていった。手の中に握りしめられたものを見る。それは、ファンタジー部の部室の鍵だった。
「……はぁ、こういうのは部長がやるべきだと思うんだけどな」
「たまにはいいじゃん?」
「いつもやらされてる気もするけどな。……まいいか」
由香の鞄と俺の鞄を同時に背に抱え、俺は彼女の手を握った。
「それじゃ、帰るか」
「うん」