解けてしまった謎
ということで、このネタ2,3日ほったらかしにしときました。
ほら、肉も腐る直前がおいしいって言うじゃないですか。
僕も福山君も野球部内では、この話題には一切触れませんでした。
なぜなら、どこから漏れるかわからないから。
とかく企業秘密というものは漏れがちです。
徹底的なオチが見つからない以上は、オチるまで放置です。
数日後、外野ノックを受けている斉藤君が
なにげにユニフォームの肩の辺りを嗅いでいる姿を、僕たちは
見逃しませんでした。
「あ、あ、あいつ。 やりやがった・・・」
おそらくは、無意識のうちにマヨネーズ臭を気にしていたんでしょう。
福山君を見ると、彼もまた夕焼けの西の空を見つめながら、感無量の表情でした。
練習が終わり、それとなく斉藤君に近づく僕たち。
いよいよ、これが最後のとどめです。
僕:「おい、いつもよりか、ユニフォーム綺麗じゃん」
斉:「わかるね?この前聞いたやつば試してみたとたい」
福:「で、どぎゃんだった?」
斉:「母ちゃんのやつ、マヨネーズば入れるなんて聞いたこつないって」
僕:「へぇ~。知らっさんだったとたい」
あのー。知ってるわけないと思うんですけど。
「汚れにマヨネーズ」
ソレ、ドコノクニノ呪文デスカ?
斉:「だいけんね、母ちゃんに言ってやったよ」
福:「何て?」
斉:「女の癖に、そぎゃんこつも知らんとやって!!」
僕:「お母さん、怒っとらしたろ?」
斉:「だってさ、上垣さんもう言うぐらいだいけん」
僕:「そぎゃんよね」
斉:「知らんほうが、おかしいかろ?」
次の日の午前中、当時10クラス、約450人ほどいた1年生の
教室で、マヨネーズで洗濯する地球外生物の発見に成功しました。
本人は、いたって地球人であるかのごとく振舞っておりましたが、
周りの誰もが、事実を知ってしまった今、彼にはどうすることも
できませんでした。
もっとも、斉藤君は、その日の夕方になるまで
笑われている理由がわからなかったようですが。
涙目になっている彼の最後の言葉は、こうでした。
「だって、上垣さんが・・・・。」
さて、この話はここでお終いです。
もしよろしければ、どなたか実際に実験してみてください。
僕たちはおっかなくて、マヨネーズを手に洗濯機の前までは
行けるんですけど・・・。
斉藤君のお母さんは、どういった気持ちで洗濯機の中に
マヨネーズを搾り出したんでしょうか。
そんな斉藤君も今では男の子3人の父親です。
斉藤君、もしまだ持ってたら、郡築の自宅にあった小学館から刊行されている
『現代国語例解辞典』のマヨネーズのところ見たほうがいいよ。
そう、あの赤い表紙の奴。
きっとこれからの生活に役立つコメントが書いてあるから。