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地震屋たち  作者: 春市


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3/3

少年

 「ギャアアアァ!!」


 「お、起きたな。」

 「木佐貫さん...動じてませんね。」

 「こんなこと日常茶飯事だからな。遥斗もさっさと慣れたほうがいい。」


 いまさっき跳び跳ねて起きた少年は周りの状況を飲み込めないのか、キョロキョロしっぱなしだ。


 「よーし、意識は明瞭かな?」

 「きみは悪いやつに操られてた。だけど大丈夫。俺らが守ってやるから。」


 まだこちらをいぶかしんでいるようだ。さすがにそんな簡単には信用してくれないか。が、それでも話を聞いてくれる態勢になってくれているだけありがたい。


 「取り敢えず自己紹介からしたらどうかな?」

 「そうだな、優子。」


 「俺は木佐貫。木佐貫祐吉(ゆうきち)。で、こっちの兄ちゃんが遥斗。そこに座っているのが石曽根(いわそね)優子だ。」


 「きみの名前は?」


 「東海林(とうかいりん)哲也、です...」


 「ふーむ。なかなかいい名前じゃないか。親に感謝しないといけないな。」


 「お父さん、お母さん...いない...。」


 木佐貫の後ろの方からの視線が痛い。


 (悪かったって!)


 「ええと...頼れる家族はいないかい?誰でもいい、兄弟姉妹、叔父、叔母それか...祖父母とか。どこかに...?」


 少年は涙を拭いながら、小声で返した。

 「ねえちゃんがいる...。」

 

 すこしホッとしたような顔で三人は顔を見つめあわせる。。


 「じゃ、そのねえちゃんは今どこにいる?送ってあげよう。」


 よく考えれば、こんな怪しい集団に送ってもらうというのは、学校が子どもたちに教えている最も忌避すべきことであるが、この中の誰も教師の話なぞ、ろくに聞いてこなかっただけにその考えがずり落ちていた。

 が、少年は話してくれた。

 「ねえちゃんはいるよ...でも今はいないよ。」

 「話が見えないな~。どこにいるかわからないということかい?じゃあ最後にあった場所は覚えてる?」

 「橋の...手すりのところ...一緒に落ちた。」

 木佐貫の表情がみるみるひきつってゆく。

 

 「...じゃあそうなった理由を教えてくれるかい?」


 「長くなるけど...」


 少年...東海林哲也は両親を震災で失い、祖父母の援助を受けながら姉と二人で暮らしていた。しかし、去年祖父が亡くなり、数ヶ月前には祖母まで亡くなってしまったらしい。

 祖父母の遺産は親戚がかっさらい、二人は瞬く間に一文無し。姉は弟を養うため、職を探しに一路東京へ上ってきた。しかし慣れない東京の生活は苦難の連続でついに借金の首が回らなくなったらしい。

 そこで橋から二人で...と。


 「うーん~。」

 木佐貫が難しい顔をしている。想像の百倍くらい重くて、後味の悪い話で反応に困っている。

 「じゃあ...その...橋から落ちたならどうして哲也くんはナマズにとり憑かれることなったんでしょう?」


 「橋の下にたまたまナマズがいたんじゃないかな?」 と優子。


 「ともかく...この子はいったんここで預かろう。」

 「警察に届けちゃった方が賢明だと思うけどね。」

 「しかしなあ、この子はもうナマズについて少し知ってるんだろう?規定によれば記憶をいじるかしないと、解放できない。それはかわいそうだとは思わないか?」

 「だけどねえ...」


 「あくまで穏便に済ませたい気持ちは分かる。けどな、こんな子どもに辛い気持ちをさせないのが大人ってもんだろ?」

 少し沈黙が走ったあと、石曽根はグシャグシャと髪をかき分け、

 「あーいつからそんな子ども好きになったのかなあ?」

 「わかった、このことは当分秘密にしておくよ。ただ、ボスに知れても責任はとらないからね。」

 

 木佐貫は拝むようなポーズをして、

 「ありがたい。恩に着る。」

 そして振り返りざま何かを言いかけたところで、

 「遥斗?」


 「哲也くんのお姉さん、生きてますよ。」

 と言った。

 二人が目を見張る。

 「...なぜ分かる?」


 「そりゃあ...勘ってやつですよ...。」


 遥斗は二人が(何を言ってるんだコイツは...)という目で見てきたことに気付いた。そしてあわてて付け加えた。


 「ああ、でも根拠はちゃあんとありますよ。」

 遥斗は哲也の頭の上に手をのせ、温かいような、そんな視線を被せた。

木佐貫祐吉

遥斗の相棒的存在。

ただ実際は四十手前のベテランといってもいい経験がある。


好きな食べ物

・大福

・ジンギスカン

好きな人

・石曽根

・推しの競馬の騎手

趣味

・競馬

・競馬新聞購読

・競馬番組視聴

・お馬さんに貯金すること


とはいえ、引き際はわきまえてるのであまりにスリすぎることは、ほぼ...ほぼない。

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