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真相


 フェリクス様はどこか私に対して同情しているかのような、憐憫を感じさせる口調で、優しく告げた。


「君の疑問に答えてあげよう。僕は前々から王や王室に対して根回しをしていたんだ。僕が本来なら王家の人間が嫁がないような、男爵家みたいに立場の低い家へと婿入りできるように、ね」

「…………っ!」


 それは私が全く想定していなかった答えで、思わず絶句してしまう。


「おかしいと思わなかった? いくら自分がプロポーズしたからといって、次の日にいきなり第二王子との婚約が決まるだなんて。庶民同士の結婚でもないんだし、お互いの好いた腫れたで僕たち貴族は婚約だなんてできない」


 何も言えないままの私を置き去りにして、フェリクス様は軽やかに言った。


「僕たちの婚姻は、君が僕に告白する前から決まっていたんだよ。王室の間ではね」

「う、うそ、そんな」

「君が告白してくれたから、王にかけ合って早めにアーシェル家に通達に行っただけで、もし何もなくても近日中には僕と君の婚約は内定する筈だった」



 それでは、もしかして、この婚約は。

 ……私がどうあがいても、撤回できないという事じゃないか?



「もしかして君は、僕に「あの告白をなかった事にしてほしい」と言えば、この結婚自体をなかった事に出来ると思っていた?」

「そ、れは」


 微妙に図星を刺され、言葉が上手く出てこない私を可哀想なものを見るような目でフェリクス様は見ていたが、彼はどこまでも残酷な事しか話してくれなかった。


「残念だったね、今更君の一存ではこの婚約は覆らない。どうせサザンドラはフェリシアと婚約するんだ。本当に好きな人と結婚だなんてどのみち出来ないんだから、諦めて僕と一生一緒に生きてほしい」

「な、なんでフェリクス様がサザンドラ様のことをご存知なんですか?」

「言っただろう、君のことを僕はずっと見ていたって」



 そう言って笑うフェリクス様はぞっとする程に美しくて、私は震えあがりつつも彼から目が離せなかった。



 

 ……というか、ちょっと待って。

 フェリクス様の話を鵜呑みにするなら、私が何もしなくても、事態は大して変わってなかったということ!?


 正直知りたくなかった事実だったが、不思議な事に、ちょっと安心するような気持ちも湧いてきた。私が嘘告白した事は、この状況には関係なかったのだと。


 こんなの、この酷い状況を生み出したのは自分自身ではなかったのだという、単なる保身のような感情でしかないのだけれど。やはり私は弱い。



 当たり前だが、私の一存ではこの結婚は解消できないことが確定してしまったという無力感の方が当然ながらに強いのだが。

 私の人生、あまりにもお先真っ暗すぎないか!?



 フェリクス様は椅子から立ち上がると、私の元へと近づいてくる。

 思わず体が強ばったが、フェリクス様は私を見つめるだけで何もしてはこなかった。



「僕は本当に君の事が好きなんだよ、ミュゼちゃん。君が僕の事を好きになれば、きっと君は幸せになれる。多分ね」

「ど、どの口を下げてそんな事を」

「はは、僕だって可哀想なんだよ? ……何年もずっと好きだった女の子が、再会した時には他の男の事しか見ていなかったんだから」



 そういうフェリクス様は何の感情も感じさせない薄い笑顔を浮かべていて、改めて私はこの人の底知れなさを実感した。



 それと同時に思ってしまった。

 ……私はこの謎めいた人の事を、もっと深く知りたいと。

 それはフェリクス様の持つ蠱惑的な魅力に心のどこかで惹かれてしまったせいかもしれないし、もっと別の理由かもしれない。



「あなたの事を好きになれるかは分からないけど、私はあなたが何で私の事をそんなに気にするのか、知りたいです」

「そうだね、なら教えてあげようか。僕がいかに君の事を想っているのか……幸い、僕たちには時間がたっぷりあるのだから」


 フェリクス様はそういって、私の手を取ってキスをした。


「そういう密接なスキンシップをさらりとこなしてくるのはやめてください」

「あはは、君を見ると触れたくなるのが、そんなに悪い?」

「悪いです」



 そう飄々とした態度で話すフェリクス様は遠い昔に会った事があるようで、いやしかしそうでもないようにも思え、私は自分がよく分からなくなったのだった。






 そして、この時の私は他の事に気を取られていて、フェリクス様が私がサザンドラ様の事を好きであると初めから知っていたような言動をしていた事に関して、意識が向かっていなかった。

 フェリクス様が我が家から帰った次の日の日の朝にその事に気づき、やはりベッドの中で悶絶した事は言うまでもない。


 あ、あの人、それに気づいていた上であんな言動を取ってたの?

 

 ……フェリクス様って、もしかして、相当な食わせ者なんじゃないか?


 いやいや、もしかしなくても、そうである。私はそんな厄介すぎる男性と何故か結婚する羽目になっている(しかも逃れられない)自分自身の運命を呪った。






 あまりのフェリクス様の厄介さに彼の事を知りたいと思った気持ちも折れそうになったが、このどうにもならない婚約からどのみち私は逃げられない。



 結局、この後の私はフェリクス様との接点が加速度的に増えていく羽目になるのだが、また別の話である。


すみません、切りがいいのか悪いのか謎な終わり方となってしまいましたが、一旦完結とさせていただきます……!!

私の気力があれば続編があるかもしれません……。気が向かれましたら、またぜひよろしくお願いいたします(汗)

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