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第13話 迷宮の奥

結局、一服できないままに休憩が終わってしまった。

ローレンツが火を点けたり消したりして、オイルライターで遊んだ後、

何食わぬ顔でライターをポケットに入れようとしたので、

慌てて注意して取り戻した。

喫煙者から命の灯し火を取るなんて、不届き者め!


「よし行くかっ、立てるかマルッティ!」

「はっ、はい、おじさん」


ローレンツに促されて重い腰を上げるマルッティ、その表情は疲れ切っている。

マルッティよ、まだ休憩し足りないのだな。

境遇は違えども自分にはその気持ちがよくわかるぞ。

自分も一服できない休憩なんて、休憩じゃないと思っている。

マルッティよ、君は休憩を欲する同志だ。

そんなことを考えながらローレンツにしぶしぶ付いていこうとすると、

カーリナがローレンツの目の前に立ちはだかり、制止する。


「ローレンツさんちょっとだけ待ってください。

師匠、四の鐘が鳴っています」


師匠思いのカーリナが喫煙させてくれるのかと思ったが、違ったようだ。

四の鐘がどうしたと言うのだ、今はそれどころではないというのに。

一応、耳を澄ますも鐘の音は自分には聞こえない。


「気付かなかったな。鐘が鳴ってたのかカーリナ」

「えっ!?今も鳴っていますよ。師匠には聞こえないんですか?」

「なんだヒデキ!お前これ聞こえないのか?」


カーリナとローレンツが不思議そうに質問してきた。

今一度、意識を耳に集中したが、やはり鐘の音は聞こえない。

余程小さい音なのか?二人の表情を見てこちらが不安になってきた。


「えっ、全く聞こえませんけど……マルッティ君は聞こえてないよね」

「いいえ、はっきり聞こえます。うるさいくらいです」


同志マルッティが裏切った、聞こえていないのは自分だけなのか。

へっぽこなマルッティでさえ聞こえるとは、ますます不安になる。


まず、肉体は15歳なので聴覚が衰えているわけではないだろう。

思い当たるのは、自分が異世界から転生したということだ。

生まれ育った環境で視力、色彩感覚が変わると聞いたことがあるが、

聴力にも似たようなことが起こるのかもしれない。

自分はこの世界の人間ではないので、迷宮の鐘の音を聞き取る必要がない。

つまり聞こえているが、鐘の音と認識できないだけだ、そうであって欲しい。

この世界の人々は迷宮の鐘の音で生活時間が決まっている。

生活に必要となったら、そのうち聞こえるようになるだろう……たぶん。

自分を納得させたが、可哀そうなものを見る3人の目が辛い。

こっそり耳抜きをしてみたが何も聞こえなかった。


ローレンツの指揮のもと、次の鐘が鳴るまで迷宮探索することとなった。

勿論、鐘が鳴った際は教えてもらう。

2階層に続く階段への道順をローレンツは知っているとのことで、

中間地点の部屋を出て迷宮の奥に進む。

入口から中間地点まではCランクの魔物であるブルースライムがいたが、

迷宮奥はBランクの魔物が出るらしい。


「奥にはどんな魔物がいるんですか、ローレンツさん」

「スライムのBランクはパープルスライムって奴だ。

動きは青色の奴よりも遅いから、倒しやすいぞ。

ただ毒を吐いてきて、下手すると死ぬから気を付けろよ」


毒だぁー!?下手すると死ぬだと!?

ローレンツはしれっと恐ろしいことを言っている。

自分が不安な顔をしていたのか、ローレンツが補足してきた。


「心配すんな、毒攻撃はそう滅多にない。それにとっとと倒しちまえばいい。

おっ!丁度いい、あいつで試してみろ」


ローレンツが指さす先に紫色のボールが転がっている。

あれがパープルスライムか。

毒を吐くと聞いた手前、どことなく色味が毒々しい。

これがホントのB級の毒々モンスターか。

こちらに気付いたスライムが向かって来るが、ブルースライムに比べ遅い。


毒を吐かれる前に素早く仕留めるに越したことはない。

間合いに入ったスライムに一振りする瞬間、目の前が紫になった。

煙だ、紫の煙……タバコを吸えなかった自分に対する当てつけか。

突然のことに驚き、後退りすると地面が揺れている。

なんだ地震か?

視界が狭く、そして暗くなり、目を開けているのが辛くなってきた。

後方のカーリナが騒いでいる。


「師匠、師匠、大丈夫ですか!」


カーリナが心配してくれている。

これは……ひょっとするとひょっとして……毒?

滅多にないという毒攻撃を初っ端で引いてしまったってことか。

お座り一発で引いてしまった。

唯一の救いはスライムからの追撃がないことだ。

下手すると死ぬというローレンツの言葉が頭の中で繰り返される中、

この状況を好転させるには、まず目の前のスライムを倒さねば。


こちらの攻撃を待ってくれているかのように、スライムは大人しく佇んでいる。

まるで仲間にでもなりたそうにこちらを見ているが、

毒攻撃をしてきた魔物を仲間にする程、自分はお人好しではないぞ。

そもそもスライムに顔が無いので、こちらを見ているかどうかもわからない。


銅の剣を大きく振り上げて叩きつけると、スライムは楕円に変形した直後、

自分の身長よりも高く弾んだ、いや跳ねたのか?

スライムが床に落ちるまでにもう一撃を食らわせると、空中で煙になった。

魔物を倒した安心からか、はたまた毒のためか、その場に倒れてしまった。

もう目を開けていられない、カーリナ達の声が聞こえる。


「Bランクのスライムも攻撃2回で倒せるなんて、流石です師匠!

見ましたかローレンツさん!」

「あー見た見た。毒を受けたのもちゃんと見たぞ。喜んでる場合か!

直ぐに手当てだ。ドロップは……はずれか。カーリナ解毒剤持ってるか」

「毒消し草なら、師匠が買ったのをボクが預かっています」

「ヒデキ!今、解毒してやるからな。マルッティ!水筒をくれ」


ローレンツ達の声が自分を取り囲み、水をコップで飲まされる。

おっさんの口移しでなくてよかった。


「しかしBランクを簡単に倒しちまうなんて、ホントお前凄いな。

これで冒険者になったばかりってんだから、相当なスキル持ちなんだな」

「そうでした師匠!神より授かった特殊スキルについて、

ボクに教えてくれると言ってたじゃないですか、

一体どんなスキルなんですか」

「おお、やはりそうか。言っちゃなんだがヒデキの剣さばきは素人だ。

にも拘わらずこの強さだ。俺が思うに武器が強くなるスキルじゃないか。

どうだ?当たってるかヒデキ」

「何ですかそのスキル、ボク聞いたことないですよー」

「俺もだカーリナ。そんなスキルが本当にあるかなんてわかんねぇ。

ただ俺達が知らねぇスキルじゃないと、ヒデキの強さが説明できねぇだろ?」

「確かに……そんな夢みたいなスキルだったら、師匠の強さも納得できます。

師匠はボルボルグのオーガキングを倒していますからね」

「おいおい本当か!?ボルボルグのって確か……」

「17階層です。それも一人で銅の剣で」

「おいっ、まじか!そっそれ何回だ。攻撃何回で倒したんだ」

「んー、数えてはいなかったので……多分10回ぐらいです」

「ひえー、バケモンだな」


毒に苦しんでいる自分をほったらかしで、カーリナ達の会話が弾んでいる。

ステータス設定による武器攻撃力アップがローレンツに当てられてしまった。


「おい、ヒデキ!実んとこ、どうなんだよ」

「うぅ……」

「どうなんですか師匠!口籠ってないで教えてください」

「うぅ……」

「おっ、スマン。毒のせいで喋れなかったか。ハハハハ、今解毒してやる」


おいローレンツ、まだ手当してなかったんかい!

毒消し草が効いたのか急に気分が良くなり、

目を開けるとローレンツの顔が目の前にあった。

こういう時はむさいおっさんじゃなくて、カーリナの方が良かったな。

パープルスライムはたまに毒消し草をドロップするらしいが、

今回は石ころだった、聞くと石灰石らしい。


更に奥に進むと、またパープルスライムに遭遇した。

よし、次はマルッティに戦ってもらおう、頑張れ。


「ヒデキ、さっきのは毒を食らっちまったから、仕切り直しだ。

あいつの相手してみろ」

「えっ!またですか。次はマルッティ君に譲ろうかと思うのですが」

「いや、マルッティだと無理だ。わかるだろ」

「じゃーじゃー……あっ、カーリナ!カーリナどうだ、戦ってみたいだろ」

「ボッ、ボクですか。パープルスライムとは戦ったことないですが、

やってみます。危なくなったら師匠お願いしますね」

「おっ!ビビったヒデキの代わりにカーリナがいくか。

安心しろ。本当にやばくなったら俺も助けるから、思いっきりいってみろ」


ローレンツがチクッと嫌なことを言ったが、ここは無視だ。

思えばカーリナの戦闘は始めて見るな、高Lv.村人のお手並み拝見だ。

カーリナが銅の剣を構え走り出す。

普段、迷宮で鍛えていて魔物慣れしているのか、

マルッティとは違い、カーリナの攻撃はスライムに当たっている。

スライムが逃げ回っていることから攻撃は効いているのだろう。

ただし攻撃は当たるものの、なかなかスライムは倒れてはくれない。

カーリナに疲れが見え始めると、空振りするようになり、

間隙を縫ってスライムが逃げてしまった。


「しっ、師匠!そっちに……お願いします」

「おっ、おう。まっ、任せろカーリナ」


カーリナから逃げたスライムはこちらに向かって来た。

スライムと対峙すると、嫌でも毒攻撃を思い出し、動揺してしまう。

今後の事を考えると、ここで苦手意識を克服せねばならない。

覚悟を決めて銅の剣を振り下ろすと、スライムは一撃で煙に変わった。


「ヒデキ、毒がなかったら簡単だろ」

「そっ、そうですね」

「カーリナもご苦労さん。あとはヒデキが倒すから、

マルッティと一緒にスライムの動きをよく観察するように。

このまま2階層まで進むぞ」


本人への意思確認はされることなく、全て自分が倒すことが決まったようだ。

どうか毒攻撃が二度とありませんように。

迷宮奥へ進もうとするローレンツをマルッティが呼び止める。

名乗りを上げようというのか、見直したぞマルッティ。


「おっ、おじさん、このまま進んでも大丈夫ですか?

この奥にはAランクやSランクの魔物がいるんじゃ――」

「安心しろマルッティ、もちろん確認済みだ。

昨日AランクとSランクが倒されたらしい。心配すんな。


名乗りじゃないのか、見損なったぞマルッティ。

ローレンツの言葉で弱虫マルッティは一安心といった表情だが、

自分は理解できなかったのでローレンツに確認する。


「あのー、今日はAランクとSランクの魔物が出てこないってことですか」

「ああそうだ、各階層にはAとSランクは1匹ずつしかいなくてよー、

一度倒しちまうと次出てくんのは、Aランクは10日後、

そんでもってSランクは30日後だ。今日は出てこねーな」


道すがら出現したパープルスライムは全て自分が倒し、

2階層へ続く階段にたどり着いた。

ローレンツの言う通り、AとSランクの魔物に遭遇することはなかった。

下層へ続くこの場所に呼称は無く、出口と呼ばれることはないらしい。

入口とは違い魔法陣が無いことから、特に名称が必要ないのだろう。

階段は緩やかに右に曲がって20段程度下ると、

2階層の入口でローレンツが立ち止まる。


「よし!今日は終わりにするか」

「えっ、もう終わりですか」

「五の鐘が鳴ってるだろ。おっ、そうか聞こえないんだったな。

今、鐘が鳴っててよ、もう夕方だ。飯食いに行くぞ!」

「ローレンツさん、ドロップアイテムはどうしますか。

カーリナ、アイテムは全部で幾つある?」

「あーいい、いい。ヒデキが倒した分は、というか全部か。

そっちで好きにしてくれ。じゃー引き返すぞ」


ローレンツは今降りて来た階段を上り始めた。

ここに魔法陣があるのに、歩いて帰るのか?


「ちょっ、魔法陣は使わないんですか?」

「俺は鍛冶師だし、マルッティもヒデキも冒険者になりたてで使えねぇよ」

「えっ!?」


ローレンツと一緒になって階段を登ろうとしているカーリナに説明を求める。


「魔法陣で移動するためには、トランスポートというスキルが必要なのですが、

冒険者の固有スキルなので、ボクにはその移動スキルは使えません」

「そうなの?じゃーマルッティ君はどうなの?」

「Lv.5にならないとトランスポートが使えないのですが、僕はまだLv.2です」


冒険者とは迷宮に入る者の総称だと思っていたが、ジョブ名称でもあるようだ。

ギルドでの冒険者登録をした後、ステータス調整を宿屋で行ったが、

その際、ステータス画面には冒険者の文字は無かった。

登録だけでは冒険者ジョブを取得できないということだろう。

確認するためステータス画面を開くと、冒険者の文字を見つけた。

ジョブをセットしていないから、もちろんLv.1のままだ。

知らぬ間に何かしらの取得条件を満たしたのだろうか。

単純に考えると、迷宮に入るのが取得条件だと思うが、今となっては不明だ。


帰路の途中、遭遇した魔物は全てローレンツが打ち飛ばし、

地上へ続く階段を登りきると、空が紅く染まっていた。

五の鐘を迷宮探索の切り上げ合図にしているのか、

大勢の人が迷宮から出て来て、人の流れができ始めている。

1階層では数組のパーティーを目にしたが、こんなにも人が迷宮にいたのか。


人の流れの一つは教会に続き、もう一つは冒険者ギルドへ流れ、

既に冒険者ギルドの入口が混み始めているのがわかる。

自分もドロップアイテムを売って金を作らねば、

頼みのカーリナも持ち合わせがないので、夕飯にありつけない。


自分達の懐事情を配慮してくれたのか、ローレンツが奢ると言い出した。

聞けば早く酒が飲みたく、自分達がアイテムを売りに行くのも待てないらしい。

カーリナが断ろうとしたが口を押え黙らせ、ローレンツの厚意に甘えよう。

旨い酒を出すというローレンツのお勧めの店に4人で向かう。


店に着くと、酔っぱらった客で賑わっていた。

空いている席に座ると同時に、店員が4人分の酒をテーブルに置くと、

ローレンツから食べ物の注文を取っている。

お通し感覚で1杯目の酒が勝手に出るようだ。


旨いという酒の味は、この程度かというのが正直な感想だ。

ローレンツが酒を旨そうに一気に飲み干すと、店員が2杯目を運んできた。

この店の酒はわんこそばシステムのようだ。

結局、食事が運ばれるまでにローレンツは酒を5杯飲み干した。


店員が4人分の食事とローレンツの6杯目の酒をテーブルに置く。

食事は大きなパン、大盛のサラダ、魚のスープ、それに魚の燻製だ。

大きなパンにかぶりつきながらローレンツが今日の総評を述べる。


「カーリナのジョブはまだ村人だったな。村人としては良く戦えてたぞ。

魔物の動きをちゃんと目で追えてたし、しっかり鍛錬を積んでんだな。

ただ……いかんせん体力が足んねぇ、徐々に攻撃が当たらなくなったろ。

その顔だと自覚があるようだな。どうだ?得物を変えてみねぇか?

剣じゃなく、間合いが長い槍の方がいいと思うんだが」

「確かに槍の方がいいかもしれませんが……支給は銅の剣だけです。

それにボクはまだ見習いの身分なので、武器を買うお金なんてありませんよ」

「おう、そんじゃ明日、鍛冶師ギルドから1本持って来てやるよ」

「えっ!それなら是非槍を試してみたいですけど」

「そうか、そりゃよかった。多分槍の1本や2本ぐらい余ってんだろ。

なけりゃギルマスに言って1本作らせらー」

「いやいや、新しい槍だなんて、それこそ支払えませんよ」

「金なんかいらねぇよ。タダだ、タダ。あいつには貸しがあるからな。

あっそうか!せっかくなら鋼鉄の槍でも作らせるか。ガハハハッ」


ローレンツが酒を飲み干すと7杯目がテーブルに置かれた。

カーリナは恐縮している様子だが、申し出を断らないことから、

槍を試してみたいのだろう。

それにしてもギルマスに槍を作らせると豪語するローレンツは、

戦闘もさることながら、鍛冶師としても有力者なのかもしれない。

お近づきになれてよかった、カーリナだけでなく自分にも武器が欲しいものだ。

7杯目の酒を飲みながら、ローレンツが口を開く。


「ヒデキ!お前の戦い方は素人だ。だがべらぼうに強い。ガハハハッ。

その理由はお前が隠しているスキルだと思うんだが、教えてくれ」

「えーまーそのー」

「団長からは混乱を招くからと、師匠のことは口止めされていますが、

ローレンツさんになら話しても大丈夫だと思いますよ」

「カーリナの言う通りだ、お前のことを他人に言うつもりはねぇ。

そこんとこを気にしてんなら、心配いらねぇよヒデキ」


事あるごとにこうやって聞かれるのは厄介だ。

それにローレンツは自分のユニークスキルについて察しがついている。

ここはひとつ、武器・防具ステータス設定についてだけは話しておくか。

そうすればローレンツの疑問は解消され、質問されることもなくなるだろう。

それに予想が当たったことに気を良くして、いい武器を貰えるかもしれない。


「私のスキルは装備した武器の攻撃力を上げることができます」

「おお、やっぱそうか!すげーなそんなスキル聞いたことねぇぞ」

「師匠!凄いです。そのスキルって他人の武器も強くできますか。

ねぇ師匠、ボクの武器も強くして欲しいなぁ。いいでしょー、おねがい」


やはり自分のスキルはその名の通り珍しいようで、ローレンツが驚いている。

カーリナは自分の腕を掴むと、胸を押し当てながら甘えた声を出している。

女を武器に、武器スキルをおねだりしている。


「えーっと、このスキルは私が装備した武器にのみ適用されるようで、

他人の装備には適用されません。ごめんねカーリナ」


他人の武器が強くなるかは試していないが、面倒なのでできないと断った。

ローレンツは武器が強くなること自体がすげーすげーとまだ騒いでいる。

酒が相当入っているようだ。

一方、カーリナは掴んでいた自分の腕を離すと酒を飲み始めた。

酒が相当気に入ったようだ。


更に酒が入ったローレンツが質問してきた。


「ヒデキ!俺の娘を娶らないか」

「んがぐぐ」

「おいおい大丈夫か」

「ごほっ、ごほっ、だっ大丈夫です。ローレンツさんが急に変なこと言うから」

「そうですよ、おじさん!いきなり娶らないかだなんて。

アイノ姉ちゃんと一度も会ってもないのに。ヒデキさんも困りますよ」

「このヒデキが親戚になるんだ、マルッティにとっても悪い話しじゃないぞ。

じゃーこうしようヒデキ、一度娘に会ってそれから考えてみてくれ」

「まぁ、会うくらいでしたら構いませんが」

「よし、決まりだ。娘のアイノはヴァルケアで鍛冶師やってるからよ。

今度会いに来てくれ。親父の俺が言うのも変だが美人だぞ。ガハハハッ」


食事を終えると、小さな果実が盛られた皿がテーブル中央に置かれた。

デザートにしては酸味が強いが癖になる味だ、ベリーの一種だろうか。

顔を真っ赤にしたローレンツが質問してきた。


「ヒデキは食えるのかそれ」

「師匠、よく食べられますね。ボクはそれ苦手です」

「ええ、ちょっと酸っぱいけど、これおいしいですよ」

「だろ?俺らドワーフは好んで食うんだが、人族はそれ苦手らしくてな。

味もそうなんだが、人族が食べ過ぎると元気になっちまうらしいんだ」

「元気?健康に良いってことですよね、なら何も問題ありませんよ」

「そうだよな、元気になり過ぎちまうくらい問題ねぇよな。ガハハハッ」

「なり過ぎ?」


カーリナを見ると、酒を飲む振りをして木のコップで顔を隠している。

マルッティを見ると、支払いをすると言い席を立った。

ローレンツを見ると、酔っぱらっている。


明日は朝から4人で迷宮に入ることを決めて解散した。

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