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初日

俊三は、部屋に戻ってテレビ台に歩み寄った。

そこの引き出しを開くと、確かにカードと白い錠剤がパッケージに入って十個並んでいて、しおりに書いてある通りなのだとわかった。

ゴクリと唾を飲み込んでカードを裏返すと、そこには村人、と書かれてあった。

…なんだ、村人か。

俊三は、ガッカリした。

何か村の役に立つ役職ならと期待したが、そうではない。

とはいえ、村人の票が重要なのも、もう俊三は知っていた。

カードを伏せてまた引き出しに戻すと、俊三は持ってきたしおりにまた目を通した。

最初に番号が並んでいて、名前が書いてあり、名簿になっている。

恐らく役職行使の時にこれを見るようにあるのだと思われた。

…誰が人狼なんだろう。

俊三は、考えた。

まだ何も議論していないし、分かるはずもない。

初日は今日なので、恐らく今夜占い師に白先が告げられて、そこからゲームがスタートするのだろう。

人狼の襲撃はないはずだった。

トレーニングで何度もやったので、そこの所はしっかり頭に入っていた。

じっとしおりを睨んでいると、コンコンと戸が叩かれる音がした。

「…はい?」

俊三が答えると、入って来たのは隣りの部屋の茂男だった。

「俊三、なんか今日が一日目らしいぞ。」

俊三は、びっくりして茂男を見た。

「え、夜時間がないのにか?」

茂男は、頷いた。

「そうなんだよ。忠司がよくよく読んで見たら、しおりの背表紙に日付とスケジュールみたいなのがあって、今日の日付で一日目、で、占い師のお告げ先もカードを見た瞬間に腕輪に出るとかで。だから、占い師のやつはもう、結果を持ってるってことだ。急いで会議しなきゃって、みんな呼びに回ってるらしいよ。もう昼だもんな。夜には投票しなきゃならないから、慌ててるんだ。」

言われて、慌てて手に持っていたしおりをひっくり返すと、確かにそこには今日の日付と、やることが書かれてあった。

6時に投票、と書いてある。

…背表紙まで見てなかった…!

俊三は、焦って茂男を見た。

「ヤバいじゃないか。まあ時間は普通のゲームよりあるけど、しっかり考えなきゃな。」

占い師のお告げがあるみたいだ、と言っていることから、茂男が占い師ではないことは分かる。

俊三も違うので、早いとこ占い師の結果を聞いておきたい。

「じゃあ、行くか。」茂男は、ため息をついた。「俊三は占い師じゃないんだな。もしかしたらって思ったんだけど。明らかに知らない反応だもんな。」

茂男もそう感じたのだ。

俊三は頷いた。

「お前もな。」言ってから、ふと続けた。「…これは普通のゲームより難しいかもしれないぞ。何しろ、人外にも考える時間が多いってことじゃないか。こうしてちょっとした反応でいろいろ分かる。気をつけないとな。」

茂男は、頷いた。

「だな。まあ、共有者がいるから、そいつらに任せよう。」

大人数村は、トレーニングで何度もやって慣れている。

俊三は、茂男と一緒にカフェへと急いだのだった。


カフェでは、それぞれ椅子を移動させて、円を描くように座り始めていた。

忠司が二人に気付いて、こちらを見た。

「ああ、来てくれたんだな。」

俊三は、自分も椅子を引っ張って行きながら、頷いた。

「気付いてくれて良かった。今日が一日目だって?背表紙まで見てなかったよ。」

忠司は、頷く。

「そうなんだよ。オレもうっかりしていた。とにかく、座ってくれ。」と、俊三と茂男が座るのを見て、忠司は続けた。「村から見たらオレも役職がわからないだろうから、共有者に一人出てもらって進行してもらえないか。」

すると、喜美子が手を上げた。

「はい。私が共有者。良かった、相方と話し合ったところだったの。もう一人には潜伏してもらうわ。ほんとにいきなりよね。」

忠司は、頷いた。

「そうだな。じゃあ頼む。」

喜美子は、脳トレの時でもきびきびと場を仕切る頭の回転の速い女性だ。

共有者の相方は誰なのかわからないが、喜美子が共有者なら、そちらを出して来るのは正解だったと思われた。

「じゃあ、しおりによると占い師は結果の通知をもう受けているはずだから、占い師に出てもらいましょうか。手を上げてください。」

すると、スッと三人の手が上がった。

貞吉、美智子、敏男だった。

…真占い師は一人。

俊三が思っていると、貞吉が驚いた顔をして、妻の美智子を見た。

「え、お前人外か?」

美智子が、顔をしかめた。

「あなたこそよ。この村には真占い師は一人のはずだから。私が占い師よ。」

貞吉は首を振った。

「オレが占い師だ!1、だから俊三が白。」

美智子は、負けじと言った。

「私は11、明子さん白。」

敏男が、困ったように言った。

「オレは1、俊三が白だよ。」

グレーが広い。

俊三は、顔をしかめた。

占い師のうちの二人が自分に白を出しているので、俊三目線では明子白の美智子の結果しか色がついていないのだ。

「なんだよ、じゃあ俊三は限りなく白だな。」武が言った。「何なら確定白を作ってもいいけど、そうなると噛まれる可能性があるしなあ。今日は順当にグレー精査ってことになるのか。」

忠司が言う。

「だがグレーが広すぎるな。喜美子さんはどう思う?」

喜美子は、顔をしかめた。

「初日から占い師の精査は狐も居るからリスクが高いわよね。でも、グレーが広すぎるから、三分の二の確率で人外に当たる、占い師から精査するのも悪くはないと思うわ。それで勝った記憶もあるし。」

昌雄が言う。

「だが…それは真占い師を吊らなければの話だ。見たところ狼陣営が占い師に出ているのは間違いないから、票が誘導されて真占い師に不利なんじゃないか。真、狂、狐ならこの限りじゃないが、狼が出ていたら二分の一で真占い師だから確率は上がるしな。」

喜美子は、うーんと顔をしかめた。

「…噛まれるかもしれないけど…でも、狩人も居るものね。霊能者も出す?グレーの幅が狭まるでしょう。」

忠司が、頷いた。

「オレはその方がいいと思う。霊能者に任せるけどな。」

喜美子は、頷いて皆を見回した。

「基本的に任せるけど、私は出て欲しいわ。霊能者は手を上げてくれないかな。」

すると、スッと二人が手を上げた。

「オレが霊能者。」

昭三だった。

「私が霊能者よ。」

もう一人は、由子だった。

普通に考えると、真と狂人だった。

「…二人。」喜美子が言った。「普通に考えたら片方は狂人よね。だって霊能ローラーされる可能性があるから、狼と狐は基本出ないもの。ということは、占い師の内訳は真、狐、狼って考えるとしっくり来るわ。」

分かりやすい村だ。

俊三は思った。

喜美子が言うように、これまでのゲームでも霊能者はどっちも吊られることが多いので、狐が出るのは考えづらい。

ただ、狂人が占い師に出てしまい、仕方なく霊能者に出て来る狼も考えられないことはなかった。

それでも普通に考えたら、これまでのことを考えてもこうなると霊能者に狂人が居る確率の方が高いと思われた。

「人外が三人露出してる。」俊三は言った。「この村の人外は、狼三人、狂人一人、狐一人の計五人だ。そのうちの三人が露出してるわけだから、普通に考えてグレーよりも、役職から吊った方が効率がいい。この場合、霊能者から吊るのが一番いいだろう。その間に占い師にはグレー幅を狭めてもらい、黒が出たら積極的に吊る。19人で9縄5人外だから、村は有利だ。」

由子が、あきらめたように言った。

「そうなるわよね。霊能者を引いた時から覚悟はしてたわ。でも私は真霊能者だから、一日だけでも生き延びたいと思うわ。」

それには、昭三が割り込んだ。

「オレのセリフだよ。オレが真霊能者だからな。」

喜美子が、大袈裟に手を振った。

「ああ、分かってる。お互い対抗してるんだもの。」と、息をついた。「…でも、私は吊り縄に余裕があるうちに、初日はグレーを吊って両方の霊能者に色を出させたほうがいいんじゃないかって思うの。そうしたらグレーも狭まるし、後々いいんじゃないかって。この形になると、多分占い師に狐が居るのは確定でしょう。まさか狐潜伏で狼狼で出てるなんて無いと思う…考える時間は少なかったわ。狼同士で話し合う時間もなかったでしょうから。思うんだけど、占い師の相互占いをさせて、狐をさっさと処理してついでに真占い師も確定させてしまえば、残りの占い師は処理できるんじゃないかな。その後霊能者ローラー掛けたら人外三人は処理できる。真占い師の確定に力を入れたいと思うんだけど、どう?」

忠司が言った。

「だが、どうせ霊能者はローラーするなら先に進めた方がいいと思うぞ。占い師には今夜から相互占いさせて、呪殺を目指してもらう。そうしたら、早くて明後日には全部処理できるだろう。狩人は守り先をしっかり考えないとな。確か連続ガード無しだと書いてあった。」

難しい決断だ。

喜美子は、うーんと顔をしかめた。

「そうね…みんなはどう?やっぱり今夜は霊能者から行く?」

源太が言った。

「それがセオリーだしな。確実に人外が一人落ちるわけだし、占い師さえ確定したら霊能結果はあまり関係ない。後は狩人に任せて今夜は呪殺を目指して、何としても一日でも多く結果を残してもらえるように考えよう。」

喜美子は、ため息をついた。

「みんなもそれでいい?」と、皆がウンウンと頷くのを見て、由子を見た。「何の情報もないけど、由子ちゃんから話を聞こうかな。今夜追放されても、何か村に残して欲しいから。」

由子は、頷いて苦笑しながら言った。

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