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狼目線3

その夜は源太と初めて電話で直接話をした。

そして、美智子さんの計画を信じて、狩人が生きていたら必ず守るだろう、貞吉を襲撃することにしたんだ。

だから、六日目の朝は貞吉が目覚めていないかどうかがとにかく早く知りたかった。

貞吉は二階、オレと源太は三階だから、その確認がすぐにできない。

だが、朝一番に大きな悲鳴を憲子さんが上げてくれたから、ああ、多分恵子さんはやったんだろうな、って期待して駆け下りて行くことができた。

美智子さんが憲子さんに指示したのは、恵子さんに忠司を疑わせて、問い詰めたら狩人COして逃れようとするんじゃないかって吹き込み、絶対に躊躇なく忠司を追放させることだった。

憲子さんを妄信している上、共有でありながら村人たちの中で孤立していた恵子さんは、面白いほど完璧に仕事をしてくれたんだ。

忠司の追放を成し得たのは、恵子さんと憲子さんの力だ。

美智子さんが知恵を授けたのは確かだが、それをきちんと理解して恵子さんを誘導した憲子さんの手腕も大したものだった。

美智子さんから渡されたマスターキーを、憲子さんは恵子さんに渡した。

それで、9時の数分前に忠司を廊下へ呼び出して、外へ出て来たらすぐにマスターキーで鍵をかけて入れなくするように言った。

それで、忠司は部屋に戻れなくなり、追放になるはずだった。

浩二が見掛けたと言って話してくれたが、恵子さんは言われた通りにやったようだ。

お蔭で、貞吉が噛めて結果が落ちなかった。

狼だが村人達に助けられて、後に繋がっていたんだよ。

とりあえず、村勝ち確盤面からはなんとか抜け出せた瞬間だった。

だが、問題はここからだった。

こうなって来ると憲子さんが疑われるのは間違いなく、憲子さんが恐れていた、老いた姿に戻る追放が現実味を帯びて来る。

なので、源太には憲子さんにしっかり言い聞かせろと言った。

憲子さんのお蔭で勝てたら、必ず狼陣営は全員MVP投票を憲子さんに投じる。

だから、しっかりと狼勝ちに貢献して欲しいと。

もし、村人が勝っても誰からのMVP投票も入らないから、結局報酬はないぞと、軽く脅せと。

源太は、言われた通りにしたようだ。

憲子さんは、吊られそうになったら狼COして源太が狼だと逆囲いすると言ったらしい。

源太もそれに同意したみたいだが、オレはそこまでやったら逆に怪しいんじゃないかとほどほどにした方が、と忠告はしたんだ。

まだ縄が足りてるから、両方バランスで吊られる事になってしまうんじゃないかって心配したんだ。

だが、源太は早く終わらせたいとちょっとやり過ぎぐらいがいいんだと聞かなかった。

なので、六日目のあの茶番が生まれたわけだ。

村は大混乱に陥ったが、オレの頭の中はもう、次の日の事ばかりだった。

ここで、何としても憲子さんを吊って、明日は必ず政由を吊らせなければならないのだ。

それが、一番早い道だった。

だが、思った通り源太と憲子さんの茶番はやり過ぎだった。

両方吊って最終日、というのが安全な道に村人からは見える。

なので、完全潜伏のオレとしては、どちらも庇うわけには行かなかった。

六日目は、憲子さんの派手な立ち回りのお蔭で憲子さんを吊れた。

この時は、ありがたいと本心からMVP投票してやろうと思ったものだった。

そして、その夜は少しでも黒の可能性がある昌雄は残して、そんなに発言が伸びてない浩二は置いといて俊三か正成の二択で、迷いやすい俊三は残して正成を襲撃することに決めた。

狩人は、もう居ない。

必ず噛みは通るはずで、心底ホッとしていた。


七日目、もう最終盤面だ。

正成は居なくなり、残ったのは確定白の俊三と浩二、そして状況白の昌雄と、グレーの政由と狼の源太とオレたった。

ここで村人を吊れれば今夜の襲撃で狼の逆転勝利だ。

だが、そんなに村は甘くなかった。

何しろ、昨日は吊りを逃れたが源太は引き続き怪しまれる位置だ。

いくら憲子が狼COして源太を狼だと告発しても、それを逆囲いだと見て吊りたくなる盤面だった。

しかも、一番怪しんで欲しい政由はキレ者だ。

憲子さんが狼でなかった可能性を話し始めた時には、よく分かるなと感心してしまった。

明日、政由と二人で残されたらオレに生き残る未来が見えなかった。

たからと言って、下手な事は言えなかった。

ここまで潜伏していたのに、余計な一言で疑われてやり玉に上がり、源太より崎に吊られたら元も子もない。

そんなわけで黙って回りに合わせて見ているしかできなかった。

この能動的な動きを、逆に村目に取ってもらいたかった。

源太は、自分が怪しまれているならなんとかオレを残せないかとオレとのラインを消そうとちょいちょいオレを攻撃して釣りたい素振りを見せた。

オレもこうなったら源太を切るしかないので、それに応じて皆の前で対立して見せた。

確白達は迷っていたが、結局源太が失言してそれを政由に拾われ、吊るしかなくなった。

オレはもう覚悟して源太に投票し、その日は源太が吊られて遂にオレは一人きりになった。

投票の後、浩二と昌雄が終わらなかった事でオレと政由のどちらが怪しいかで揉めていた。

昌雄は政由、浩二はオレを怪しんでいた。

実は、昌雄を噛んで政由が狼だと見せようかとも思ったんだ。

でもな、昌雄はまだ確白じゃない。

それに、もう正直疲れていたので、次の日の議論で浩二を説得する気力もなくて、オレは浩二を襲撃することを選んだ。

政由なら、それぐらいやるだろうと皆が思ってくれることに賭けて。

でもな、もうどっちでも良かったんだ。

早く終わらせたい。

それだけだった。


八日目、浩二が追放されて残ったのは俊三、昌雄、政由、オレの四人。

分かっていたが、また一日長かった。

もう仲間も居ないし、オレ達は怪しまれている。

一応抵抗はしたが、無気力なオレにはあまり力がなかった。

すると、俊三はそんな狼は居ないと迷ってくれたよな?

だから、その線で押すしかないなと思っていた。

政由は、弁が切れるので議論で勝てそうにはなかったし、オレはオレのやり方で生き残る道を探すしかない。

それでも、確定白だけで話し合ってくれたのには助かったよ。

もう、何も話したくない気分だったんだ。

狼が当たっただけで何も悪い事はしていないのに、責められる毎日はキツいんだよ。

政由目線じゃオレの狼は確定だっただろうが、それでもオレ達二人は、お前達が部屋に籠って話し合ってる間、カフェでとりとめのない話をしていた。

霧はやっぱり今夜には晴れるんだろうかとか、みんなはどこからこれを見てるんだろうかとか、そんな事だ。

若いままだと孫が来た時困るなあと、政由は笑って言ってた。

オレも、確かにこのままじゃ免許の更新もままならないなあと応じたり、そんな感じだ。

もちろん、投票時間が近付くとさすがに緊張した。

だから、お前達が降りて来た時には固い表情になってたかもな。

オレに決まったと聞いた時、ああ終わるな、と内心思っていた。

一応、見ているだろう仲間達の手前、抵抗はして見せたが実は終るなら何でも良かった。

これで勝ったと言っても、寝覚めが悪いだろ?

本当なら六日目の朝に村が勝ち確定するはずだったんだし、それをおかしな方法で崩したのはオレ達だ。

実質人外が6人居たようなものだし、共有ですら知らずにオレ達に手を貸してしまった。

こうなるのが良いんだと、投票結果を見た時は肩の荷が降りた気持ちだった。

今頃は、どっかであいつらも振り返って話してるのかな?

どちらにしろ、これで狼勝ちだったら後味が悪かっただろうし、別にオレは若い体に執着はないから、良かったと思うよ。

それより早いとこ家に帰って花に水をやらないとなあ。

お前んとこのトマトも、ヤバいんじゃないのか?

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