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狼目線

俊三、昌雄、政由、武があり合わせの物を温めて来て食事をしながら話そうとしていると、そこへ目を擦りながら浩二が入って来た。

今朝、襲撃されて老いた姿になっていたのを見たばかりだったが、浩二は全く変わっていなかった。

つまりは、ここ八日間見て来た若い姿のままだったのだ。

俊三が、思わず立ち上がって行った。

「浩二!目が覚めたのか、お前、襲撃されて!」

浩二は、まだぼんやりしながらも頷く。

「もう、腹が減ってさあ。目が覚めた。ゲームは?」

「終わったよ。」政由が、答えた。「村人勝ち。これから狼の話を聞こうとしてたところだ。」

浩二は、ぼうっとしていたのに、急にハッキリした顔になると、慌てて椅子を引っ張ってこちらへ寄って来た。

「オレも聞く!なんだ、それで誰が狼だったんだ?」

武が、渋い顔をしながら手を挙げた。

「オレ。」と、目の前の玉子焼きを押しやった。「食えよ。お前朝から何も食ってないだろう。オレが襲撃したせいだもんな。」

浩二が、うんうんと頷きながら手づかみでその玉子焼きを口へと運んだ。

俊三が、慌てて言った。

「こら、割り箸があるから!」と昼に炊いたご飯を炊飯器から茶わんへとついだ。「ほら、飯も。今日は最後だし、冷蔵庫に残ってた惣菜を多めに温めて来たんだよ。明日の朝、MVP投票をするんだってさ。追放されたみんなもここへ来るらしいぞ。」

浩二は、頷きながらご飯を掻き込んで、もごもごと言った。

「まじか。武かあ。そうだろうなあと思うけど、政由も白過ぎて逆に怪しいとか思えて来るし、難しかったよなあ。よく間違えなかったな、俊三、昌雄。」

昌雄は、苦笑した。

「もう、最後は賭けだったよ。俊三もオレも、一日中悩んだ結果が、結局負けても悔しくない方を残すことだったんだよ。村の役に立ってた政由が狼だったら、もう仕方がないって悟りの境地だよな。」

俊三は、ククと笑った。

「だよなあ。これで政由だったら、これから人間信じられなくなりそうだった。だが、よく武も生き残ったよ。」

武は、味噌汁を飲んでから、息をついて言った。

「じゃ、話すか。」と、缶ビールのプルタブをぷしゅっと開いた。「さっきも言ったように美智子さん、源太、オレの三人が狼だったんだよ。狂人はどっちだったのか未だに分からない。由子さんか、昭三だろうけど、昭三は結果が真結果ばっかりだったから、やっぱり真霊能者だったのかもなって思ってる。狐は敏男。それは二日目の結果を見て分かった。」

武は、遠い目をしながら、時々ビールの缶へと口をつけて、そうして話し始めた。


オレ達は、一日目のみんなでここへ閉じ込められた後、カードを見て人狼だって知った。

その近くにカードがあって、7、12と書いてあったから、他に仲間はその二人なんだって知った。

で、しばらくして部屋の電話が鳴って、美智子さんから内線電話がかかって来てたんだ。

とにかく自分が占い師に出るから、適当に回りに合わせて完全に潜伏しろって。

白いなと思った誰かに合わせたらいいと指示された。

美智子さんはなんか、気が立ってるみたいだったけど、先に源太と電話で話してたらしくて、白先のことで揉めたらしい。

だから、オレは仕方なく従うことにした。あの人怒ると迫力あるんだ。

てっきり次の日から始まるんだと思ってたら、忠司が今日が一日目だと言いに来た。

いきなりだったから焦ったけど、先に話し合いできてて良かったとその時は思った。

みんなで集まると緊張したけど、自分は潜伏が決められてるから、村人だと思い込むことにして、発言しようと回りを観察した。

美智子さんが、言ってた通りに占い師に出た。白先が明子さんだったから、囲わなかった、というか囲えなかったんだなと思った。

源太が譲らなかったんだろうと思ったからだ。

源太は、知ってるかもだけどヤバいんだ。初日から美智子さんも分かってたみたいで、仲間なのに物凄く警戒してたよ。

嫁の明子さんと同陣営だったら良かったんだけど、明子さんは狼じゃない。

源太なら、明子さんに聞かれたらすんなり狼を暴露しそうだったから、美智子さんは常にピリピリしていたんだ。

オレ達は、村人や狐だけじゃなく、仲間の中まで気をつけなきゃならなかったわけだ。

占い師が三人出るのは想定内だったけど、それを見てるのに霊能者が二人出たのは焦った。

何しろ占い師の内訳が透ける。

由子さんが言ってたようにな。

まずいことになったが、出たものを引っ込めるわけにも行かなくて、最初は昭三が狂人だと思ってたから、昭三を恨んだものだったよ。

オレはだから由子さんを吊ろうと思ったんだけど、源太と美智子さんは後から聞いたら狼を追い詰める狂人なんか要らないからと、昭三に入れていた。

でも、吊れたのは由子さんで、オレは真が吊れてラッキーだと思ってた。

後々、昭三が真っぽくなって来たから、オレも昭三に入れておけば良かったなって思ったけどな。まあ、まだどっちが狂人なのか狼目線でも分かってないんだ。

夜、美智子さんとまた電話で話した。

村が相互占いを始めたこと、自分の真が切られ気味なことを不満に思ってるようだったけど、こうなったら自分には発言力がないし、もう切ってくれていい、と投げやりな感じだった。

だから、結果は敏男の黒にする、と。

明後日にはどうせ真確してしまうし、それで行こう、となった。

それで、政由が白いから徹底的に合わせて行けと言われた。

そうしたら、セットで白くなるから占われない限り生き残るし、政由に白が出たらオレも白く見られるようになるからと。

言われた通りにすることにした。

ちなみに源太は全くダメ。

何を言っても明子さんありきで、あっちはあっちで明子さんに完全に合わせる様子だった。

なので、美智子さんは自分が生きてるうちに明子さんを懐柔して源太を操作するようにするから、と言っていた。

噛み先は、ダメ元で共有者の喜美子さん。

次の日、その噛みが通ったのを知った。


二日目、驚いたことに全員が占った他の占い師に黒を出した。

その瞬間、敏男が狐で、貞吉が真なのだと知った。

敏男は貞吉に黒を出していたので、それが偽結果だと知ってるオレ達目線では貞吉しか真はいない。

明日貞吉が敏男を呪殺して終わりだ。

美智子さんのことはあきらめていたから、その日は貞吉噛み一択だと思っていた。

だが、思ったより村が良い方向に動き出した。

美智子さんをあきらめることで、村からもイージーゲームに見えたのか、欲が出たようで相互占いをせずにグレー吊りグレー占いの流れになったんだ。

グレーを狭めるために、占い師の結果を一日でも長く見たいという動きだった。

何しろ狼から真占い師が透けたことは誰の目にも明らかだったし、噛まれる前に後一結果、という気持ちだったんだろうな。

その日、茂男が狩人だと思った。

みんな思っているようだった。

それでも、まだ縄は増えないし偶数進行になるだけだから、守られてても貞吉を連噛みしようとオレは提案したが、狩人を処理した方がいい、どうせ次の日それで貞吉が噛めるから、と説得されて飲んだ。

美智子さんも、欲が出たんだと思う。

まだ生き残れると思ったんだろう。

貞吉で護衛成功が出たら、狩人からそれを明かされて貞吉の黒である美智子さんは吊られるだろう。

それを一日でも延ばしたい、と、これも欲が出たんだろうな。

結果、茂男の襲撃は通った。

他に真狩人が居たら守る位置でもあるし、茂男で狩人が噛めたと狼はほくそ笑んだ。

これで次の日貞吉を噛めば、と思っていた。

美智子さんは一日でも真を取って発言権を得たいと、俊三を確白にする事を選んだ。

前の日、源太があまりにも明子さん優先なので面倒になって、オレは源太に投票していた。

美智子さんはあんなのでも頭数だからと富恵さんに入れていたが、明子さんは源太に投票していたんだ。

追放になりかねない強い票だ。

後で聞いたら、美智子さんが源太の目を盗んで、風呂とかで散々源太の事を怪しむ意見を聞かせていたのと、他の女性達からあんな異常なダンナが居たらまともにゲームもできないね、可哀想と同情されていたのも心理に大きく影響したらしい。

明子さんは、すっかり源太が嫌になっていたんだ。

そんなわけで源太は捨てられたような感じになってたわけだが、それで心境の変化があったらしい。

美智子さんが毎回オレと源太に夜、電話して来てたんだが、その時にこう言ったんだってさ、『うちのダンナも私が居るのに明子さんばかり見てるのよ。もしかしたら、あの二人は怪しいんじゃないかって思い始めてるの。』って。

源太は、貞吉を噛む事を押したみたいだが、その日は狩人に守られるから村人有利になってしまうし、狩人を噛む、と説得したらしい。

そして、源太に明子さんとは一旦対立姿勢を見せて、焦らせた方がいいと助言したんだと。

源太は次の日まんまと言われた通りに発言して、何とか白くなった。

グレーをこれ以上減らすのもヤバいと思っていたら、昭三が自分吊りを言い出した。

オレ達からしたら、願ってもないことだった。

狂人だとしても真結果しか出していなくて役に立っていない昭三は、オレ達からしたら縄を消費してくれる方が、助かるからだ。

そうして、その日はなんとか昭三でお茶を濁せたので、オレはホッとした。

そうやって三日目を終えて、衝撃の事実を聞かされた。

美智子さんは、憲子さんに正体を明かしたんだと言う。

何がどうなったらそうなるのかとよくよく聞いて見ると、三日目、その日の朝に、朝の会議が始まる前に部屋に訪ねて来たんだそうだ。

そして、あなたが狼?と聞かれたと。

憲子さんは、取引しようと持ち掛けて来た。

どうやら噛まれたくないし、最後まで若い姿で居たいのだとか。

だから、狼勝ちに手を貸すので、ゲーム後のMVP投票では狼はみんな自分に入れて欲しい、襲撃しないで欲しい、と条件を出して来たと。

仮に吊られてもその投票があれば報酬で若さをもらえる、だから必ずそれを約束して欲しいとのことだった。

そんな投票があることを、オレも美智子さんもその時まで知らなかった。

だが、見てみると確かにしおりには小さくゲーム後の投票のことが書かれてあった。

美智子さんは、それを飲んだのだそうだ。

オレのことは敢えて言わずに、仲間は源太と白い位置にもう一人居る、と教えたのだと。

憲子さんは、美智子さんが次の相互占いで必ず正体がバレるので、対立を演出することを提案して来た。

なので、憲子さんは朝から美智子さんとバトルしてたわけだ。

そんなことはその時まで知らなかった。何しろ昼間はオレ達は一切話さないから。

さすがダンナだよ、昭三は気取っていたんだな。

オレはとにかく貞吉噛みを強く押した。もう、どこでも噛み放題なんだから、噛めばいいと。

だが、美智子さんは違った。

せっかく憲子と繋がったから、それを利用しなきゃならないと。

源太では上手く使えないだろうに、オレに正体を明かすつもりなのか?って聞くんだよ。

オレは、あんな狂った奴に自分が狼だと知られたくなかった。

だから、もう一日確白の俊三を削る事で凌ごうという意見に渋々同意した。

源太はどうやって説得したんだって?

あいつは一日でも早く噛みたいみたいだったが、そうしたら美智子さんが偽だと分かった時に、明子さんが疑われて真っ先に吊り先に指定されるだろうに、同じ場所で観戦することになるかもよ?と言われてそれを避けたくて同意したみたいだった。

その日は俊三を襲撃することになったよ。

まあ、その結果は分かるよな。

こうして最終日まで俊三が残ってるんだから。

そんなわけで狼は、イレギュラーな状況でおかしな狂人を抱えて四日目になったんだ。

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