表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

七日目の決断

狼の可能性があるのは源太、政由、武の三人だ。

その内一狼ならいいが、もし二狼だったら今夜間違えるとゲームが終わる。

浩二、昌雄、俊三の三人は、俊三の部屋に集まって考え込んでいた。

この階にはもう俊三以外誰も生き残っていないので、他の部屋は空で都合が良かったのだ。

浩二が、言った。

「この際もう昌雄のことは疑ってない。二狼の可能性もある今は、今日吊り間違ったら終わりだ。観戦者とか書いてあるところを見ると、追放された奴らはどこかで見てるんだろう。カメラか何かがあるのかもしれないな。」

俊三は、言った。

「そもそも決めたら追放されて、ルール違反したらあっさり追放されてるんだから誰かが見てるのは確かなんだろう。それで、どう思う?オレは政由だけは白いと思って来たんだが、こうなって来ると生き残りたい潜伏狼かもと思い始めてしまって。二狼なら今夜吊り逃れたら良いわけで、仮に源太と政由だったら武を吊ったら終わりだろう。」

昌雄が、言った。

「だがなあ。だったら憲子さんに余計な事をさせないで、バランス吊りで今日武を吊らせたら良かっただろう。あの二人のうち一人だと、どうしても武の方が発言が弱いから吊られたはずだから。それに、別に二狼懸念とかさせずにさっさと源太を吊らせて明日武で終わるわけだしな。政由があんな風に意見を落とす必要はなかったと思うんだ。憲子さんのことだって、オレ達は狼だと信じてたし、違うかもとか思わずに無防備に吊り先を選んでた。恐らく武にでも。」

浩二が、頷く。

「そうなんだよな。放って置けば良かったのに、わざわざスッキリしないとか言って。源太と政由の二狼なら、それで良かった。というか、武と政由の二狼はあると思うか?武を吊らせないためにわざと混乱させて、とか。」

昌雄は、首を振った。

「いや…考えたんだが、やっぱりないんじゃないか。というのも、あまりにも同じような意見を出して来過ぎてるんだよな。大体が政由の意見に武が合わせる感じで。狼同士だったらお粗末過ぎる。政由が狼なら、そんな事はさせないだろう。むしろ白い政由に武が同調して同じようになろうとしていたと言われた方がしっくり来るけどな。」

俊三は、水入りのペットボトルを手に言った。

「とにかく今日なんだよ。誰を吊る?政由と武の二狼が無さそうなら、やっぱり源太にするか。あいつも初日から明子さんにベッタリで自分の意見を言わずに居て、吊られそうになった次の日にいきなり白い意見を出した。あれ、狼同士で話し合って来て出した意見だったとしたら?何しろあれから、目立った意見を出してないだろ。あの時の白さでここまで来た感じだった。憲子さんと言い合いになってた時の顔を見たか?あいつ…あんな感じだったか?」

それを聞いて、昌雄と浩二が顔を見合わせた。

俊三は、二人の雰囲気に含みを感じて眉を寄せた。

「なんだ?何かあるのか。」

昌雄が、言った。

「それが…浩二から聞いたんだが、明子さんが吊られてから源太がおかしいんだって。ま、その前からちょっとあいつはおかしかったんだけど。」

浩二は、頷いた。

「あいつは、元からほわんとした感じの奴だと思われてたが、実際は違うんだ。嫁なのに、明子さんのストーカーみたいな。明子さんが絡むと人が変わったみたいになるんだ。公民館に来るのもいつも一緒だっただろ?明子さんは嫁同士の集まりだって言ってるのに、ついて来てたらしい。いい歳して気持ち悪いって美智子さんが言ってるのを聞いた事があるぐらいだ。若くなってからも、貞吉がめっちゃイケメンだったから、心配して余計離れなくなっててな。大概鬱陶しがられてて、だから明子さんのあの面倒そうな対応も分かるんだ。つまり明子さんが狼だったから源太を吊りたかったというよりも、めんどくさいから源太を吊りたかったんじゃないかって今なら思うんだよな。」

俊三は、源太達の動きは知らなかった、と思った。

普段から仲が良かったのは茂男や正成、忠司などで、源太とも話はするが一緒に出掛けたりするほどではなかった。

なので、このゲームが始まってからもそれほど深く関わることもなかったし、雑談も自然と仲が良い者達と集まってするので源太達がどう行動して何を話していたのかまで、知らなかったのだ。

浩二は、どちらかというと群れない方なので、いつも単独で行動していて、だからと言って不愛想なわけでもないので、あちこち気が向いたら話すタイプの男だった。

このゲームが始まってからも、だから恐らくあちらの事情も見ていて知っていたのだろう。

だが俊三は、言った。

「でも、源太も明子さんが怪しまれるようなことを言ってたじゃないか。べったりならわざわざあんなこと言うか?信じてたんだろう。」

浩二は、それこそ面倒そうな顔をしながら答えた。

「あれは明子さんがいよいよめんどくさくなって、前の日に源太に投票してたからだ。あれで、どうやら源太はますます自分を邪魔者にして、貞吉に色目を使おうとしてるんじゃって思ったみたいなんだよな。だからじゃないか。オレとしては、あの時源太が村人だから、嫁が狼かもしれないって思ってたけど言えなくていて、でも他の男に現を抜かしてるかもしれないから暴露してしまえって気持ちになったのかなと思ってたんだが…違うのかもしれない。」

昌雄が、頷いた。

「もしかして、初日の明子さん白も、美智子さんにごねて出させたんじゃないかとか思って来てな。ほら、狼同士で。明子さんを吊らせないために、出してくれって言ったような気がするんだよ。もし憲子さんが黒だったら明子さんは白だし、二狼残りだったとしても明子さんは白だろ?敵陣営だったとしても、明子さんは残したいとか言ってたような気もしてて。だから、源太は結構ヤバイ奴だから吊っときたいなって今は思ってる。もちろん、あいつが村人だったら二狼残りで終わりだが、あいつが残って負けることを思ったら、吊っておきたい気持ちになるよ。」

そんなにヤバイ奴なのか。

俊三は、顔をしかめた。

まさか水面下でそんなことが起こっているとは思ってもいなかったのだ。

「…そうだな。まだ憲子さんが狼じゃなかったって確信もないわけだし、単純にラストウルフの源太を生き残らせようとあんなことを言った可能性もある。だったらその思惑通りに行くのはシャクだし、最終日に源太を吊りたくなるのは避けられない。そもそも終わる可能性もあるしな。源太にしよう。政由と武が狼なら、あっぱれだよ。負けても憲子さんと源太に負けるよりは悔いはない。」

昌雄と浩二は、頷いた。

今夜は、源太。

明日が来たら、それから考えるしかないのだ。


「なんでだよ!」源太が、カフェの椅子から立ち上がって言った。「オレは美智子さんが庇ってた明子も吊ったし、狼だとCOした憲子さんに狼だとか言われてるんだぞ?!普通ならこいつらより白いんじゃないのか!」

時刻は刻々と6時に近付いていた。

俊三がそんな源太に落ち着いて言った。

「オレ達だってわからないが、三人の中でと言われたらどうしても源太なんだ。これまで積み上げて来たものが一番少ない。憲子さんが狼だったかもまだ怪しいし、これまでを振り返るしかなかったんだ。そもそも、わざわざ憲子さんが名指しにしてる事からおかしいからな。政由は狼に見えないし、源太じゃないなら武だが、結局明日続いたら源太を吊ると思う。だから、ここは源太を吊ってみようと決めたんだ。」

浩二は頷いた。

「そうだぞ。政由と武の二狼はないと判断したんだ。初日から意見が合いすぎてるから、どっちかが狼で合わせてる事はあるかもしれないが、狼同士ならあり得ないと思った。だから、村のためにも村人でも今日は吊られてくれ。」

源太は、椅子へと崩れるように座った。

そして、しばらく呆然としてたが、キッと顔を上げると、言った。

「…オレを吊っても終わらないぞ。オレは狼じゃないからな。」

すると政由が、眉を上げた。

「どうして終わらないと知ってる?」皆がえ、と政由を見ると、政由は続けた。「二狼残りだとしたら源太が狼じゃないならオレと武が狼だろう。その可能性がないのをなんで知ってるんだ?」

言われてみたらそうだ。

今6人、二狼残りだったら狩人が居ない今、今夜の襲撃は必ず入るのでもう終わり。

村人なら、狼が残っている数が分かっていないので、もっと危機感を持ってその可能性を押して来るだろうし、終わらないとは言えない。

源太は、首を振った。

「だから、オレは憲子さんが狼だったと思ってるから!二狼なんか、政由が勝手に言ってるだけじゃないか!」

源太目線ではそうなのかもしれない。

あれだけ責められたら、憲子が狼だったと思い込んでもおかしくはない。

だが、村人なら不安なはずなのだ。

確白達が迷っているように。

『投票10前です。』

腕輪から声が流れた。

今夜は源太を吊る選択肢しかないようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ