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真犯人は

源太は、静かに言った。

「…オレが?」と、フンと鼻で笑った。「そんなウソまで言って、オレに狼容疑を擦り付けたいのかよ。明子があれだけ美智子さんに庇われてて、その明子はオレに投票してるしオレを避けてたんだぞ?普通に考えても明子が狼の仲間だったと思うし、だからオレにあんな態度だったんだと思う。君は破綻が見えていた占い師が黒を出した先だ。美智子さんが黒囲いしたんだと思う。美智子さんは、オレには発言で触れもしなかった。どんなにあからさまでも、君がなりふり構ってられない狼に見えて仕方がないんだよ!」

俊三は、きびきびと話す源太に戸惑いながらも、言っている事は間違っていないと思った。

何しろ、昭三が遺した言葉がずっと俊三の頭から離れないのだ。

村だろうが狼だろうが、仲間を切り捨ててでも生き残りたい。

それが、憲子だと。

憲子は、髪を振り乱して言った。

「私じゃない!私だったら恵ちゃんを残して戦うわよ!あなたは三日目辺りの一回の発言で白いとか言われただけでしょ?!あれから有益な事は何も言ってないのに、潜んでいる狼だとしたらそうだわ!絶対そう!もしかしたら、明子ちゃんは狼じゃなかったんじゃないの?この中に、まだ狼が二人居て、私を吊ろうとしているのよ!」

まだ二狼居るというのか。

だが、無い事ではなかった。

ここに二狼居たら、狼が上手く確白達に意見を合わせて村人を吊ろうと考えて居るとしたら…?

武が、眉を寄せて言った。

「…二狼居るなら、悠長にはしていられないぞ。今8人で3縄しかない。今夜1人吊って襲撃されて6人2縄、今夜、明日と外したら負けだ。どうしても外せない。最終日まで行けなくなる。」

もしかして、今やり合っている源太と憲子の内どちらかが狼だったとしても、確白と共に潜んでいる狼が一人残っているのだとしたら、吊りきる事ができない今、かなり迷う事になる。

武、政由の内の一人が狼だということだからだ。

だが、源太と憲子が狼でわざとやり合っているとも考えられた。

俊三は、頭を抱えた。

「…分からない。最悪今日間違えても明日は来る。だが、それが間違ったのかどうなのか、知る術がない。狂人が居ないのは霊能、占い師が皆居なくなってる事で分かってるが、狼だ。あと一匹なのか、二匹なのか分からない。全く、どうしたら良いんだよ…。」

正成も同じ気持ちなのか、黙って息をついた。

浩二が、言った。

「…憲子さんを吊ろう。」俊三が驚いて浩二を見ると、浩二は続けた。「昭三の遺言もある。村だとしても最終日、吊りたくなる位置だ。残したまま最終日には行けない。それで時間を稼いで、二狼残りだとしても明日三分の二、間違えなければ良いんだ。今日は憲子さん、そう決めて明日からの事を考えよう。残りの三人を徹底的に精査するんだ。それに今日から時間を使おう。」

俊三は、確かにそうだと頷きたかったが、躊躇った。

憲子は美智子の黒で、それほど意見が伸びる方でもないのに積極的に意見を出すので、見えている事があるのではと、疑われ始めた位置だった。

それから、夫の昭三吊りにも抵抗がなく、それはあれだけ真目の上がる意見を落としても同じだった。

一重に、自分が吊られたくないという意思からああなっていて、味方であろうと信用できないと怪しみ続けて来た。

恵子が盲信するのもおかしいと、回りから追い込まれたような形だが、狼に陥れられていたとしたら…?

憲子は、立ち上がって言った。

「そんなのおかしい!どうしてみんな私を怪しむのよ、私が嵌められてるんだってどうして気付かないの?!狼は私を吊りたいの、だからこんなに特におかしな発言をしているわけでもないのに全員から怪しまれるんだわ!私が狼だったら、恵ちゃんを失うような事をすると思う?!こうなるのが分かってるのに、あの子が唯一私を信じてくれたのに、忠司さんを道連れにしろなんか言うの?!そんなことを言えば、いくら恵ちゃんでも私を疑うわよ!私じゃない、誰かが恵ちゃんをそそのかしたの!私を嵌めるために!私を吊ってもゲームは終わらないわ!美智子さんが庇ったのは明子ちゃんよ?!私を吊ろうってあれだけ推してたのに!みんなおかしい!」

憲子は、そう一方的に叫ぶと、こちらを振り返らずにカフェを飛び出して行った。

どんなに不利でも、議論の場を去るのは自殺行為だ。

なのに、我慢ならなかったのだろう。

政由が、ため息をついた。

「…まあ、憲子さんの言う事も分かる。」政由は、皆を見回して続けた。「オレと武はグレーだから、発言したって真実味はないかもしれないが、よく考えよう。確かに憲子さんは、明子さんとの対抗位置だ。狼だと分かっている美智子さんから黒を打たれて吊り押されていたし、黒い理由は強引な発言ぐらい。本来これが他の誰かだったら、誰も疑わなかっただろうし確白に近かっただろう。」

俊三は、言った。

「だが、憲子さんが忠司が狩人だと知っていた、というか狩人COするかもと恵子さんに言っていたのは貞吉から聞いてるだろう。あの日、昌雄が狩人COを撤回して、わざと正成が真狩人だと匂わせた後、オレと一緒に昌雄の部屋に入ったのはみんな見てた。狼がマスターキーを持って来て敏男の部屋で聞いていたとしか考えられないし、そうなったら知っていた憲子さんが一番怪しい位置だろ。その後マスターキーを恵子さんに渡すのも、一番やりやすかったはずだ。源太がそれをやって、恵子さんが聞くと思うか?あの時あんなことを実行に移させるのを促せたのは、憲子さんしかあり得ないんだ。狼の壮大な伏線なんじゃないかって、オレは思う。源太は、美智子さんや明子さんに擦り付けられてる印象が強かったし、ここでも憲子さんが陥れようとしているように見えてるんだ。だから憲子さんを吊って、終わらなければ政由か武かと考えてるところだ。」

とはいえ、この二人は昨夜貞吉達と話している時も、まだ正成が真狩人だと思っているようだった。

なので、俊三としては憲子で終わるのではないかと淡い期待を寄せていたのだ。

正成が、じっと下を向いてそれを聞いていたが、言った。

「…なんかスッキリしない。」俊三が正成を見ると、正成は顔を上げた。「憲子さんが言っていたように、あれだけ吊られたがらない憲子さんが恵子さんを陥れるのは考えられない。確白で自分を擁護する恵子さんは、憲子さんにとっては一番残したい所だろう。一緒に追放されるようなことを、勧めるはずはないんだ。とはいえ…貞吉が生き残っていたら政由に色がついて、残りを吊りきりになる。恐らく政由は白なんだろう。黒だったらここまでしなくても自分を吊らせて貞吉を今夜噛めば、もう一狼が生き残る道になる。もちろんこれは、二狼残りの場合の考察だが。狼は、憲子さんに縄を使わせたいんじゃないのか?」

俊三は、唸った。

昨日、貞吉は政由を占うと言っていた。

盤面は白圧迫が正着で、黒なら二狼残りの時、村に不利になる。

その場面で何としても貞吉を噛みたかったのは、政由が白だったと考えたら合点は行く。

だが、確信はなかった。

昌雄が、言った。

「忠司が居たらな。正成が言うように、憲子さんに縄を使わせたい狼の動きだとしたら分かる。あまりにもあからさま過ぎるし。でもな、あの子は残せない。浩二が言うようにな。ここまで吊らずに来たが、素直に怪しいと思う位置なんだから吊るべきだろう。オレが思うに、憲子さん、源太と吊って残り政由と武で最終日考えるしかない。」

源太が、グッと顔をしかめると、言った。

「なんでオレまで怪しまれるんだ。オレは明子にも美智子さんにも怪しまれて、憲子さんにまで擦り付けられてるんだぞ?普通に考えてここまで無難にやり過ごして来た政由と武の方が怪しいだろうが!オレから見たら、憲子さんで終わらなければその二人を吊りきれば終わるんだ!こいつらより先に吊られるなんて、悔しさしかない!」

潜伏狼だとしたら、確かに武が怪しい。

政由はそれなりに意見を落とすが、武は縄計算はコツコツしてくれるが、他と比べて確かに発言内容は薄かった。

浩二が、息をついた。

「それは明日の事だな。とにかく今日は憲子さんを吊ろう。明日からの事を、また昼にでも考えないか?朝飯もまだだし腹が減った。一旦解散しよう。」

言われて、時計を見るとあれから二時間経っている。

俊三は、頷いてその日の朝の会議はお開きになったのだった。

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