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五日目朝の会議

カフェには、もうお馴染みの面々が椅子に座ってホワイトボードを睨んでいた。

貞吉が何やら疲れた様子だったが、浩二が言うには源太が明子との仲をまだ疑っていて、何やら問い詰めに部屋へ押しかけて来たのだという。

明子は追放されてここには居ないのに、源太も明子を失ってナーバスになっているのかもしれない。

恵子が、ホワイトボードに一応結果を書いている。

貞吉が敏男白、美智子が忠司黒、敏男は空欄だった。

むっつりと機嫌が悪そうに最後に源太が入って来て、そうして全員が揃ったのを見て、恵子が、言った。

「グレーは貞吉さんの物しか結果を信じないから、憲ちゃん、忠司さん、武さん、源太さん、昌雄さん、政由さんの6人よ。縄は今夜使って明日は4縄、狐も居ないし、充分よね。昌雄さんで護衛成功で出ているのは間違いない?」

恵子は正成を見たが、正成は答えない。

恵子は、慌ててあちこち視線を動かした。

「ええっと…狩人の人は、違ったら言って欲しいんだけど。」

誰も、何も言わない。

俊三が、イライラして言った。

「なんでそんなに狩人をあぶり出そうとするんだよ?朝昌雄が発言した時誰も何も言わなかったんだから、それで間違ってないってことだろ。狼の回し者か?」

恵子は、首を振った。

「いえ、昌雄さんを省いていいのか知りたかっただけよ!私は確定白の共有なのよ?どうしてそんなに突っかかるのよ!」

正成が、言った。

「思考ロックが過ぎるからだ。狩人にも信頼されない共有など、狂人みたいなもんだ。君はこれからも守られないと思うぞ?噛まれないだろうからな。」

恵子は、青い顔をした。

狩人が、守ってくれないということだからだ。

まだ噛まれないとは決まっていないが、それでも共有の存在は狼にとって脅威なはずだった。

そう信じている恵子は、正成に見捨てられたと感じたのだろう。

正成は狩人ではないが、それでも少しは危機感を持って欲しいと俊三も何も言わなかった。

政由が言った。

「…まあ、じゃあグレー精査だな。この中でも美智子さんと対立位置に居るという理由で憲子さんが省かれるのなら、忠司も同じ理由で省かれるだろう。初日から美智子さんを疑う意見を出していた上、今日黒を出されているからな。昌雄は護衛成功で白確、となるとオレ、武、源太のうち誰かを今夜占ってもらって、それ以外を吊り切れば終わりということなので勝ち確定盤面だ。それで終わらなければ残り2縄、黒囲いを追って生き残っていたなら忠司、憲子さんを順に吊れば終わりだ。負ける未来はないな。」

自分が吊られることに関して、政由は特にこだわりがないらしい。

武は、頷いた。

「だな。もうゲームは詰みだろ。今夜美智子さんを吊って一狼落ちて、残り11人。恐らく昌雄が噛まれて10人…護衛成功が出たら縄が増えるから他は噛まないだろう。明日オレか政由、源太の誰かで白か黒が出て1人吊って9人、夜襲撃されて8人、また1人吊って7人、そこで終わらなければ夜襲撃されて6人。黒囲いを追って忠司と憲子さんどっちか吊って5人、最終日は4人だが、間違えることはないだろう。どんなに白くても、残った美智子さんの黒が狼だ。確定白の中で、狼は逃げる術はない。勝ち確定だ。」

俊三は、言われてみたらそうだな、と思った。

もうグレーが居なくなるので、昌雄で護衛成功が出た時点で狼は勝ちを逃したことになる。

こうなると、貞吉がどこを占っても問題ないということになるのだ。

何しろ、昌雄は護衛成功で確定白、正成、浩二は貞吉の白なので狩人でなくても確定白だ。

貞吉のグレーだけを吊りきれば、村は勝てるのだ。

狼には勝ち筋はないように見える。

が…本当にそうだろうか。

ここへ来て、俊三は不安になった。

もし、昌雄が噛まれなかったら…?

狐噛みをして護衛成功を演出したのだとしたら?

俊三は、首を振った。

いや、それならさっさと忠司を噛めば良かったのだ。

初日に茂男を噛む必要もなく、占い師噛みもできたはず。

何しろ護衛先は先に知っていたのだ。

あまりにも上手く行きすぎているように見えて、落ち着かないだけだと俊三は思った。

「じゃあ、今夜は政由を占おう。この中で一番白いと思うし。やっぱり白圧迫が一番だからな。白だったら明日は源太か武を吊ればいい。で、次の日また残りを吊ったら、オレが居なくても自動的に終わるだろ。もしも終わらなかったら、忠司か憲子さんだが…まあ、縄が足りるんならいいか。その時の状況で吊ってくれたらいいよ。オレは終わらなかったら忠司だろうって思うけどな。」

もう、話す事がない。

仮に二狼残りで政由が黒だったとしても、俊三から見ると忠司が狩人なので縄は足りているのだ。

政由は、頷いた。

「それでいい。」と、俊三を見た。「じゃあ、もう議論する事がないんじゃないか?ここからは作業でしかない。もう狼に勝ちはないから、できたら出て来てくれた方が良いんだけどな。そうも行かないだろ。」

俊三は、正成を見た。

「そうだな。もう今夜の吊り先は決まってるし、夕方まで解散するか?」

正成は、頷いた。

「そうしよう。まだ狼は勝てると思ってるのか投降しないしな。まだ続くのか…うんざりする。」

皆が、バラバラと立ち上がる。

恵子は、慌てて言った。

「待って、狩人の守り先は?ほら、占い師だとは思うけど、撹乱するためにも…、」

「それをみんなの前で話すのか?」忠司が、立ち上がりながら言った。「狼が居るのに?おかしな話だ。また夕方6時前にここへ来る。君はもう少ししっかりした方がいいぞ。」

言い過ぎだと思ったが、俊三はもう、何も言わなかった。

そして、さっさと出て行く皆に続いて、呆然と座る恵子を置いてカフェを後にしたのだった。


階段を登りながら、俊三は言った。

「なあ、昌雄。」昌雄が振り返る。俊三は続けた。「狩人には必ず占い師を守るように言ってくれないか。こうなって来ると、占い師噛みしか狼に勝ち筋がないように思うんだが。」

他にも皆が登って来るので、俊三はそんな風に言った。

昌雄は、頷いた。

「そこは大丈夫だ。しっかり言っとくよ。オレも今日の議論で狼はまだ勝ちをあきらめてないなって思って。占い師をチャレンジ噛みして来る可能性もあるよな。護衛成功が出ても、それしか勝ち筋がないんだから。」

忠司は、頷いた。

「オレも今の議論を聞いていてそう思う。狩人は必ず占い師を守らないとな。貞吉には、もう一日しか生きられないが我慢してもらうしかない。」

後ろから上がって来ていた貞吉が苦笑した。

「別にもう仕方ないさ。二日目に噛まれるかと思ってハラハラしてたけどなかったし、三日目もだ。六日目まで生きたら充分さ。やっとみんなに信用してもらえたんだ、それで満足だよ。」

みんなでぞろぞろと上がって行きながら、俊三はそれでも不安だった。

もしも憲子が狼だった時、この状況に甘んじているだろうか。

昭三の遺した言葉が、俊三の頭の中で何度も聴こえては消えて行くのだ。

皆に信用されなくなった恵子の動向も気に掛かる。

俊三は、言い様のない不安に押し潰されそうな気持ちになっていたのだった。


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