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四日目の夕方

もう、話を聞くにも聞き尽くした感じで、本当なら夕方、そのまま投票に入ってもいいぐらいだった。

だが、恵子が6時の投票前に絶対にもう一度話し合う必要があると主張して譲らず、結局5時に集まって話すことになった。

そこでの恵子は、もはや怯えてガタガタと震える憲子の代わりに、必死で弁解していた。

それでも、恵子が必死になればなるほど、その場面でただ震えて居るだけの憲子の印象は悪くなっていた。

とはいえ、美智子が真なのかどうかの精査がまだできていない。

そもそも既に囲われて居たならグレーに狼は居らず、無駄な争いをしているような気がしてならなかった。

俊三が、根負けして言った。

「…困ったな。確かに美智子さんが真だとは分かっていないし、その美智子さんから黒を出された憲子さんよりも、白を出された明子さんの方が黒かったのは確かだ。昨日あれだけ責められたのに、今日も全く議論に参加していなかったしな。どうせ明日には真占い師が確定するんだ、どうせどこでも良いなら明子さんを吊らないか。」

憲子が、涙顔になった顔をガバッと上げた。

恵子がホッとしたように肩の力を抜いた。

「そうよ、そうなの。明子ちゃんは昨日から怪しくて、それなのに今日だってだんまりなのよ?だから私も憲ちゃんも昨日吊ろうって主張してたの!」

すると美智子が、顔色を変えて叫んだ。

「ダメよ!明子ちゃんは私の白なのよ、私が真占い師よ!今日は憲子ちゃんを吊るはずでしょう?!」

明子は真っ青な顔で震え出した。

昌雄が、言った。

「確かに君目線じゃそうだろうけど、ほんとに今日は誰でもいいんだよ。政由も武も黒い所が見つからないし、憲子さんじゃないならどこだと言われたら、明子さんぐらいしか思い付かない。」

「だから憲子ちゃんを吊って!」美智子は、珍しく取り乱して叫んだ。「黒なのよ!いくら縄に余裕があるからって、今夜護衛成功が出るとは限らないでしょう!どうしても、憲子ちゃんを吊って欲しいの!」

これまでクールビューティーだった面影はそこにはない。

貞吉が、言った。

「…やっぱり憲子さんは白なんだな。みんなが疑い出したから黒を打って今日吊らせようとしたんだろ。お前は狼なんだ、誰が言うこと聞くと思うんだよ?初日に明子さんを囲ってたんじゃないのか!」

美智子は、キッと貞吉を睨んだ。

「あなたは黙ってて!何が狼よ、あなたは狐の癖に!明日死ぬからどうでもいいんじゃないの?」

皆が、顔を見合わせた。

憲子は怪しい。

だが、明子も確かに怪しいのだ。

たくさん話して情報が落ちまくる憲子より、明子の潜伏臭バリバリの様子の方が限りなく潜伏狼っぽいのは確かだ。

昌雄が、ハアとため息をついた。

「じゃあ…確定村人二人がそう言うなら、今夜は明子さんにするか。」皆が困ったように昌雄を見るのに、昌雄は続けた。「今夜は必ず占い師を守るから。とりあえず明子さんを吊ろう。で、憲子さんはまた占ってもらおう。納得できない人は、昼間に決めたようにグレーか憲子さんに入れてくれ。それで決めよう。」

狩人までそう言うのに、もう誰も口を挟まなかった。

俊三は、美智子が黒だったとしても、憲子は恐らく黒囲いではないのではないか、と思った。

明子の方を必死に庇う様子が、とても演技には見えない。

しかも、憲子を吊ってくれと執拗に言っている。

明子が白で憲子が黒なら、こんなことはない気がするのだ。

ただ、まだ真占い師の可能性もあった。

それでもここは、共有の恵子の心象のためにも、明子を吊っておく方が、この先の議論に問題が出ないと思ったのだ。

『投票10分前です。』

皆の腕輪が一斉に告知する。

皆の顔が、一気に緊張した。


1俊三→11明子

4正成→11明子

6貞吉→11明子

7美智子→9憲子

8忠司→11明子

9憲子→11明子

11明子→9憲子

12源太→9憲子

14武→11明子

15昌雄→11明子

16敏男→11明子

17恵子→11明子

18浩二→11明子

19政由→11明子

『№11は追放されます』

美智子が必死に訴える中、ただブルブルと震える明子は何も言えないまま、10分が過ぎ投票時間になった。

黙っていたのは、何も明子だけではない。

源太も、敏男の片白とはいえ黙っていた。

それでも、これだけ切羽詰まっても、何も発言できない明子が、真贋が分からない占い師の美智子に、あまりにも庇われることも疑念となって、明子は吊られて行った。

仮に恵子が占い師や素村であったら、憲子の方が吊られたかもしれない。

だが、恵子は村で唯一の最初から村人だと分かっている、共有者だった。

美智子の抵抗虚しく、結局明子が一瞬にして眠りに入り、その日の追放は終わった。

「…運ぶよ。」

源太が、暗い顔で言う。

そういえば、あれだけ自分の嫁を庇っていた源太が、最後の瞬間にはもう、何も発言していなかった。

それでも投票は憲子に入れたようだったが、明子が吊られることは、源太にはもう分かっていたのだろう。

こうなると、何を言っても無駄なのだと、諦めていたように見えた。

「…まだ明子さんは白だったと思うか?」

俊三が、源太に声を掛けると、源太は首を振った。

「分からない。もう霊能者だって居ないし。でも、昨日は確かに明子はオレに入れてた。オレ目線じゃ、オレは白だから実は昨日から怪しいなとは思ってた。でも、昨日は昭三が吊られてくれたから、明子は生き残れた。今日は憲子さんがすごく怪しまれていたから、もしかしたら生き残れるかなと思って見てたけど…明子は、相変わらず村の流れを見てるだけで、何も言わないし、自分が吊られないならいいと思ってるように見えた。オレが会議の外で話し掛けても全く答えようとしないしな。吊られるとは思ってたよ。だから、せめてオレは憲子さんに入れた。でも、多分村は間違ってないんじゃないかな。」

側に居た源太には、思う所があるのかもしれない。

美智子が、がっくりと項垂れているのが視界の隅に映った。

そんな美智子をフンと小さく鼻を鳴らして見た恵子は、言った。

「じゃあ、今夜は相互占いと続きをお願いね。貞吉さんは敏男さん、敏男さんは美智子さん、美智子さんは貞吉さん。これで結果が出るわ。明日は真占い師が確定するから、残った占い師を吊りましょ。やっと見通せるようになって来た感じね。」

上機嫌だが、俊三はそれが何か気に食わなかった。

「…ま、オレが襲撃されたら後は頼む。とはいえ、占い師は絶対残るだろう。昌雄、三択を間違えるなよ。」

昌雄は、親指を立てて見せた。

「任せとけ。必ず間違えないよ。」

美智子の白を吊ったので、美智子の真は切った形になった。

だから今夜美智子は美智子は守られないだろうし、実質占い師の中なら二択だ。

だが、忠司が実際どこを守ろうと思っているのか、まだ分からなかった。

源太は、黙って勝ち誇ったような顔をした恵子に背を向けて、明子を抱き上げてカフェを出て行った。

恵子と憲子が嬉しそうに笑い合いながら話していたが、それも何やら面白くない。

…やっぱり、憲子を吊っておいたら良かったか。

俊三は思ったが、もう後の祭りだ。

『村人だとしても狼だとしても、仲間がどうのより自分だけが生き残りたいと願っているんだ。それが違和感なんだろうな。何しろ、生き残るためにはこっちを殺しに来るような意識なんだから。あいつがどっちなのか分からないが、なので信用するな。あいつなら、生き残ったら狼と取り引きして、自分を襲撃させない見返りに村人に投票することだってやってのけるぞ。』

昭三が遺した言葉が気に掛かる。

憲子は、果たして白なのだろうか、それとも黒なのだろうか。

それも、明日の占い師の確定で明らかになるはずだ。

忠司が昌雄に話しかけて、正成も共に出て行こうとするのを追い掛けて、俊三もカフェを出て行ったのだった。

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