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四日目の朝

誰が襲撃されるのかと気が気でなかった俊三だったが、いつもの昼寝をしなかったせいか、急に眠気が襲って来てきっちり9時には意識を失うように寝てしまっていた。

朝になって、ハッとして慌てて時計を見ると、いつものように6時前。

急いでもう10分ほどで鳴り出す予定の目覚まし時計のボタンを押して止め、さっさとトイレへと向かう。

占い師は無事だろうか…。

俊三は、気になって仕方が無かった。

自分が今朝を無事に迎えられるのは昨夜の時点から分かっていた。

なぜなら、忠司が守ってくれると分かっていたからだ。

だがそのせいで、真占い師が噛まれてしまうと寝覚めが悪い。

自分は確白とはいえ何の能力も持たない村人で、自分を守ったために襲撃が通ったとなると気になった。

とはいえ、誰も昨夜俊三が守られていたとは思ってはいないだろう。

知っているのは、正成、昌雄、そして忠司だけだった。

じっと扉の前で腕輪が話すのを待っていると、きっちりと6時に、腕輪が告げた。

『6時です。自由時間になりました。』

待っていた俊三は、急いで扉を開いた。

すると、目の前の扉が前日と同じようにバンッと開いて、貞吉がひょっこりと顔を覗かせた。

…ああ、貞吉は無事。

ホッと胸を撫で下した俊三だったが、隣りの部屋の美智子も出て来て、回りを見回して困惑した顔をした。

「…占い師を噛まなかったの?」

同感だったが、まだ三階の敏男が居る。

廊下の向こうを見ると、二階の生き残っている人達が出て来ていた。

急いで確認してみると、正成、貞吉、美智子、忠司、憲子が出て来てこちらを見ている。

10の部屋の昭三が吊られたので、二階組は今、この五人しか居ないのだ。

…もしかしたら、三階の誰かが襲撃されたのか?

ということは、敏男が真占い師。

俊三が思っていると、三階から恵子が駆け下りて来た。

その後ろには、ぞろぞろと生き残っている人達が歩いて降りて来るのが見える。

「誰が噛まれたの?!」恵子が言って、一人一人の顔を見た。「…あれ。どういうこと?みんな、居るの…?」

俊三は、え、と階段を見上げた。

降りて来る中には、敏男も確かに居た。

そして、何より明子、源太、武、昌雄、恵子、浩二、政由と、昨日の夜別れた者達が全員揃っているのだ。

「噛み無しか…?いや、それは選択できないはずだったぞ。だとしたら、狐噛み?」

忠司が言う。

恵子は、首を振った。

「狼がそんな事はしないわ!だって、今夜は絶対相互占いじゃない。呪殺が起きたら縄が減るのに、この実質噛み無しで減らなくなるわ。ということは、狩人が生きてるのよ!」と、皆を見回した。「誰?!どこで護衛を成功したのか教えて!そうしたら、真占い師が確定して吊りやすくなるわ!」

誰も、何も言わない。

狩人は、こうなっても出て来ないつもりなのだろう。

俊三は、言った。

「…出て来ないって事は、もしかしたら占い師以外を守ってたんじゃないのか?そこでたまたま護衛成功が出たんだ。占い師を噛むかどうか分からないから、賭けに出たんだろう。守られたのは、恵子さんじゃないのか?」

俊三がわざとそんな風に言うと、恵子はそれをもっともだと思ったのか、肩の力を抜いてため息をついた。

「…そうね。俊三さんの言う通りだわ。ということは、明日は私が居なくなるかもしれないってことね。茂男さんは狩人じゃなかったんだわ。狼にもまだ誰が狩人なのかバレてない。良かった…これを狙って、潜伏してくれていたのね。」

正成は、頷いた。

「とりあえず、占い師が生き残ったから結果を聞くぞ。貞吉から頼む。」

貞吉は頷いて、言った。

「浩二を占って白。」

敏男が、前に出て来て、言った。

「オレは源太を占って白。」

想定された色だった。

あまり発言を聞けていなかった浩二が白だったので、俊三は少しホッとしたが、まだ貞吉が真とは限らなかった。

そこへ、美智子が真剣な顔で言った。

「…私は、憲子さんを占って黒。憲子さんは人狼よ。」

皆が、息を飲んで美智子を見て、そして憲子を見た。

黒…?!

俊三は、頭が混乱した。

ということは、美智子と憲子は完全に別陣営だ。

憲子が、美智子を睨んで言った。

「黒を打つために私を占い指定先にしたのね。対立してるし邪魔だったの?」

美智子は、憲子を睨み返した。

「何を言ってるの?私達を陥れて吊ってしまおうと思っていたんでしょう。危なかったわ、昨日皆が流されて明子ちゃんを吊っていたら、村は今日大変な事になっていたところよ。」

恵子も、不信感ありありの目で美智子を見ていた。

俊三が、言った。

「とにかく、結果を聞いたしまた会議だ。時間はどうする、恵子さん?」

恵子は、まだ美智子を睨むように見ながら答えた。

「…今日は八時にしよう。昨日お風呂に入れてないから、入りたいの。時間が掛かるわ。」

「じゃあそれで。」俊三は、皆を追い立てるようにして、言った。「ほら!議論は後だ。とにかく早く準備して飯食って会議で話そう。」

全員が、俊三の勢いに押されてわらわらとあちこちに散って行く。

三階組が上へと上がって行き、二階の皆が部屋へと入るのを見届けてから俊三が一番端の部屋へと向かうと、閉まったはずの扉が開いて、忠司が出て来た。

「話がある。多分あいつらも来るだろ。」

言った側から正成が扉を開いて出て来て、三階から昌雄が駆け下りて来たのが見えた。

俊三は、もう慣れたので自分の部屋の扉を大きく開いて、頷いた。

「早く。」

三人は、急ぎ足で1の部屋へと飛び込んだ。

俊三は最後にそこへ入り、誰も見ていないのを確認してから扉を閉じた。


忠司が、小声で言った。

「俊三で護衛成功した。狼はやはり恵子さんを噛まなかったぞ。」

昌雄が頷く。

「だな。占い師を噛まなかったのかと驚いたよ。やっぱり占い師の狼を、今夜も生かしておきたいって気持ちの現れた。」

正成が、クックと笑った。

「胸がすくってこういうことだよな。俊三の顔を見た狼がどれだけびっくりしたのか、考えただけでも爽快だった。これで、狩人が生き残っている事を狼は知っただろう。忠司の真もオレ達目線で分かった。で、憲子さんの黒結果をどう思う?」

俊三が、顔をしかめた。

「出来過ぎだなって。美智子さんが狼なら、今日も生き残りたいはずだし、わざわざ黒結果を出して目立つかな。もう昭三が居ないから、憲子さんを吊っても色が見えないし。疑惑を向けて今夜せめて吊っておきたいとかかな。」

昌雄が、顔をしかめた。

「どうだろう。美智子さんが真なら憲子さんは黒だろうし、そこのところは明日にならないと分からない。今日生き残っているのは14人で偶数進行になった。今夜呪殺が出ても縄が減る事は無い。ここは相互占いが鉄板だな。」

忠司が、じっと眉を寄せたまま考えていたが、言った。

「…何だろうな、ほんとに違和感があるんだ。オレ目線、美智子さんも怪しいが憲子さんも怪しい。だが、憲子さんを怪しんだら美智子さんは白だし、美智子さんを怪しんだら憲子さんは白だ。どっちかが絶対に狼なのだろうが…だが、もし憲子さんが狼なら、こうなるのが分かっていたのに美智子さんを噛まなかった理由は?昨日の様子だと、美智子さんは憲子さんを占うのが分かっていただろう。黒を出されてもどうせ信じないということか?いや、明日になれば真の位置が呪殺で透けて必ず分かるはずだ。美智子さんが真だと分かったら、憲子さんは必ず吊られる。だから、占われるのは絶対に避けたかったはずだ。まして狩人が居ないと思っていたのなら、迷わず美智子さんを噛んだだろう。だが、狼はそうしなかった。つまり、美智子さんが黒という事なのか。」

俊三は、言われてみたらそうだ、と思った。

憲子が怪しいのは確かだが、決定的な何かがあるわけではない。

ただ、何やら怪しいという感覚だけだ。

だとしたら、昭三が言い残した事が原因であると思われるし、ということは、美智子が黒なのだろう。

黒が出されると分かっている狼が、噛まないはずがないと思われるからだ。

昌雄が、言った。

「そうだな、オレもそう思う。じゃあ、今夜の守り先は敏男か貞吉の二択だから当たる確率が上がるじゃないか。それで行こう。真占い師を守って、明日に行く。」

昌雄が、言った。

「…オレが狩人COしよう。」皆が驚いた顔をすると、昌雄は言った。「オレが噛まれても問題ない。忠司が生き残ることが重要なんだ。もうあと一護衛成功を出して、狼を焦らせるんだ。さすがに今夜は真占い師を噛んで来るだろうが、保険だよ。」

俊三は、困惑して言った。

「待てよ、多分オレが連続噛みされて居なくなるんじゃないか。だって、狼からしたら真占い師を噛もうが噛まれまいが、どうせ自分の正体は透ける。呪殺でな。その日の結果は呪殺だから白しか出ない。だったら護衛が入って居そうな真占い師は今日はやめておいて、確実に噛める明日に賭けるんじゃ。そしてオレで護衛成功が出たのを狼は知ってるから、今夜はオレだけは絶対に噛める位置なんだ。それを、昌雄がCOしたら、占い師に明後日の結果を出させないために、今夜昌雄を襲撃して明日の夜占い師を噛むことになるんじゃ。」

正成が、頷いた。

「そうだ、危ないぞ。そんなことをしたら、確実に噛まれてしまう。どうせ真占い師は死んでもその夜は先に呪殺ができるんだから、次の日の結果まで期待しないでおこう。」

昌雄は、首を振った。

「だから、これから狼は確実に狩人を狙って噛んで来る。忠司が上手い事すっとぼけていたから、多分気付かれていないだろうが、それでも思考が伸びる忠司をいつ狙って来るか分からない。オレが出ることで、盾になれるんだ。昨日は俊三を守っていたというぞ。これまでの守り先もオレは知ってるから、しっかり答える。だから心配するな。どうせオレはグレーだし、噛まれた方が村のためだ。占い先も反らせるしな。」

俊三は、初日に昌雄を疑ったことを後悔した。

昌雄は、昌雄なりに村のためを思って発言していた結果がああだったのだ。

それを、忠司を守るために自分が盾になると言っているのだ。

忠司が、頷いた。

「頼む。オレも今夜の守り先はしっかり考える。昭三もだが、昌雄の犠牲も絶対に無駄にはしないからな。」

昌雄は頷いて、そうして朝の密談は、そこで終わった。

俊三以外の三人は、外に誰も居ないのを確認して、一人、また一人と部屋を出て行ったのだった。

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