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俊三が考え込んで動かずに居ると、声が呼んだ。

「俊三?なんだ、何か考えがあるのか。」

声に顔を上げると、昌雄が正成と忠司を後ろに、話し掛けて来ていた。

いつの間にか他の人達はカフェから出て行ってしまっている。

俊三は、頷いた。

「…憲子さんが明子さんと美智子さんを敵に回した。怪しいと思っていたが、ここがもし黒なら、そうではないってことかって。」

正成が、ため息をついた。

「だな。結構キレキレの意見だった。その場しのぎには見えなかったよな。まあ、逆もあるってことだが。」

つまり、憲子が黒で美智子と明子が白である事もあり得るということだ。

しかし、忠司が渋い顔をしている。

昌雄が、忠司をつついた。

「なんだよ、何かあるなら言え。」

忠司は、言った。

「…違和感がな。」何の違和感かと三人が忠司を見ると、忠司は続けた。「あからさまだなと。ここで狼なら、美智子さんはそこまで割り込む必要がなかったんじゃないかって。これまでだって、自分が怪しいと意見を出されても、意見を求められるまではじっと黙って聞いていた。無駄なことは言わなくて、他の煽りに乗ってこないしっかりした人だ。煽りに乗れば、怪しさが増すのを知っているからだろうとオレは思っていた。だから、貞吉が真だろうなと思っては居ても、美智子さん真も切れずにいたんだ。だが、今日は違った。」

「余裕がなくなったからとかじゃなくて?」

俊三が言うと、忠司は眉を寄せた。

「俊三を確白にして真目が上がって、狩人を噛めたのにか?」忠司は、自分に問うようにそう言った。「…何だろうな、何かおかしいと感じるんだ。お前達には言っておく。だから、もしオレが噛まれたら、それを頭に置いてラストウルフ位置を考えてくれ。違和感がある…またそれが何か考えておくがな。」

俊三は、急に不安になった。

忠司が狩人だとは、ここに居るもの達以外は共有ですら知らない。

そして、忠司が真だとは確信はない。

何しろまだ、一度も護衛成功していないからだ。

それでも今は、忠司を信じていた。

居なくなることが、不安でたまらないのだ。

「…美智子さん真を切るか。」正成が、真剣な顔で言った。「そうしたら、美智子さん黒なら間違いなく占い師を噛んで来る。仮に美智子さんが真なら噛まない。それで分かるだろう。狼の思い通りにはさせない。占い師を温存なんか、所詮無理なんだと思わせるしかない。今日は白を吊ってもなんとかなる。明子さん吊りを推そう。」

昌雄が、黙って頷く。

忠司も考えていたが、悩んだままで答えない。。

俊三は、もし美智子が真だった時はどこまでも面倒だなと思いながらも、その賭けに乗るかどう迷っていた。


昼の議論は、もう慣れたように始まった。

明子は固い表情だったが、だからといって悲壮な様子もない。

自分が怪しまれても占い師から白が出ている以上、吊らないだろうと思っているのか、それとも他に何かあるのか、俊三には分からなかった。

恵子が、疲れたように言った。

「ええっと、お昼ご飯とかね。雑談で憲ちゃんと話したんだけど、初日ほど美智子さんが黒いとは思ってないわ。むしろ俊三さんを確白にしたから真目が上がったと思ってる。でも、明子ちゃんがあまりにも…発言が伸びなさすぎてるのよ。だから、他と比べてもどうしても今夜は明子さんを吊っておきたいと思ってしまうの。」

憲子は力強く頷いた。

「そうなの。私は絶対明子ちゃんが黒いと思うわ。他と比べて全く考えてないみたいに見える。だから、必然的に美智子さんが偽物に見えるわ。美智子さん自身には落ち度はないけど、だから今夜は明子さんを吊って色を見たいの。うちのダンナが真霊能者かどうかはわからないけど、試してみる価値はあると思う。」

昭三は、肩を竦めた。

「オレは真霊能者だから、色が見れるけどな。納得行かないなら吊ってもいいけど、今は違うんだろ?」

恵子は、頷く。

「ローラーストップした時点であなたはとりあえず残すしかないの。まだ決定的な偽要素も真要素もないけど、多分偽でも狂人だから。」と、俊三を見た。「俊三さんはどう思う?」

俊三は、じっと聞いていたが、頷いた。

「村がそう決めたならそれでいいと思うが、他の意見も聞いてみよう。ただ…なんだろうな、違和感がある。」

俊三は、忠司が言っていたことが理解できた。

そうなのだ、この流れに何か違和感があるのだ。

それが何か分からないが、どうしてだろう。

「違和感?」恵子が言う。「何?」

俊三は、首を振った。

「いや、分からないが何かな。憲子さんはでも、えらく明子さん吊りを推すな。もしかして、どうしても生き残らなきゃならないからか?…いや、なんか、見逃してるような。」

憲子は、腰に手を当てて頬を膨らませた。

「もう!しっかりして、俊三さんは確白なんでしょ?何も発言していない明子ちゃんより、私の方が黒いと言うの?」

俊三は、じっと憲子を見た。

そういうわけではないのだ。

だが、執拗に明子ばかりを攻撃する憲子のことも、何やら怪しく見えて仕方がない。

どう見たらいいのか分からないが、本当にいきなり明子を攻撃し始めたように見えるのだ。

「…いや、急だったから。」俊三は、困惑しながら言葉を絞り出した。「昨日までそんな感じじゃなかったのに、村の意見と同じ事をまた今日も言い出して、そしてそれを大きくしようとしている。だから、間違った方向に誘導されてるように感じて多分違和感なんだ。だって、今朝の発言だって最初だったが明子さんのことは何も言わなかっただろ?それに、意気揚々と話し始めた割には、源太ほど白いと感じなかった。あんまり中身がなかったしな。結局昌雄の意見が出てから、怪しいと激しく言い出した。そうだ、それが違和感なんだ。憲子さんが怪しいと思うのは、そこだよ。」

皆が顔を見合わせる。

俊三は考えながら話して、そうだ、と思った。

初っぱなから話し始めた割には大したことのない意見で、なのに昌雄の意見が出てから明子を攻撃し始めたからだったのだ。

だが、答えが出たと喜んだ俊三とは裏腹に、忠司の表情は晴れなかった。

恐らく忠司の場合、違う違和感なのだろう。

「そんなの言いがかりだわ!昌雄さんの意見で気付いたのよ。だから、その通りだなって、今は昌雄さんだって白く見ているわ。私は村のために考えて意見を出してるのよ。なのに責められるのはおかしくない?」

憲子が言うと、恵子が庇うように言った。

「俊三さんには悪いけど、憲ちゃんは白いと思うわ。一生懸命考えてるのは、雑談していてよく分かってるの。だから、今はやっぱり発言が無い人を怪しむ方がいいと思う。」と、武を見た。「それで、武さんは?ここに来てとても発言が減ってると思うけど。」

武は、渋い顔をしながら答えた。

「オレは…正直分からなくなった。源太はもう今のところ怪しんではいないが、憲子さんと美智子さんと明子さん、この三人の内訳次第で変わるなって思っていたところだ。美智子さんと明子さんは同陣営、憲子さんはそれと対立してる。美智子さんが真なら明子さんは白だし憲子さんは黒だろう。でも逆もある。ここを間違ったら明日から苦しいことにならないか?何なら敏男と貞吉の二人で明子さんを統一占いして、色を見るか?その方が間違えなくていいんじゃないか。」

「縄が足りなくなる。」忠司が、割り込んだ。「そうなると必ず狼は別の色を出すだろうし、結局分からない。だが…オレが危惧しているのは、美智子さんが真だった時だ。まだ誰が真なのかわかっていない今、グレーじゃなく白先を吊るのはおかしいんだ。もしその三人のうち誰かを吊ると言うのなら、まだ誰にも占われていない完全グレーの憲子さんだろう。美智子さん真を切るなら、占い師に手を掛ける。それが順当だろう。いくら怪しくても、今日は白先を吊るのはおかしい。」

正成がむっつりとした顔をしたが、俊三には納得できた。

忠司の言う通り、その三人が怪しいなら完全グレーの憲子から吊るべきなのだ。

美智子が真だった時、まずいことになるからだった。

俊三は、その線で押そうと皆を説得できる内容を考え始めた。

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