仲間?
部屋へと帰った俊三は、いつもの癖でごろりと横になると、そのまま習慣で昼寝に入った。
実は眠るつもりなど無かったのだが、寝転んでこれまでの皆の発言を振り返っておこうと思ったら、ガッツリ眠ってしまったのだ。
「おい。」
そんな俊三に、誰かの声が呼びかけた。
ハッと目を覚ました俊三は、ヤバイ寝てしまったと飛び起きた。
「うわ!今何時だ?!」
そう思って声を主を見ると、それは忠司だった。
忠司は、腕組をして言った。
「まだ4時だ。問題ない。先に話しておこうと思ってな。」と、よく見ると入り口辺りに突っ立っている、昌雄と正成を振り返った。「二人も連れて来た。今のところ、この四人はとりあえず白って判断だから、ちょっと意見を聞いておこうと思って。」
俊三は、頷いて胡坐をかいて座った。
「まあ、座れよ。」昌雄と正成に言うと、二人は寄って来て忠司の横に座る。俊三は頭を掻いた。「すまん、考えておこうと思ったのに、横になったら寝ちまって。何か考えて来たのか?」
昌雄が、頷く。
「ああ、下で武と政由と話して来てな。源太は駄目だ、あいつはあれだけ言ったのに明子さんにべったりで一緒に行動してるから。明子さんの方は、嫌気がさしてるみたいで突き放すようなことを言ってたが。」
源太はまだ嫁から離れられないのか。
俊三が呆れていると、忠司が言った。
「まあ、源太の事は真剣に吊りか占いで使いたいと思ってる。あいつが居ると、明子さんがもし狼だった場合、最後の最後で吊れない可能性もあるし、逆も然り。源太が狼だったら、恐らく仲間の狼にごねて明子さんを噛まないだろう。あれじゃあまともなゲームにはならない。早々に退場してもらう必要があるとオレは思っている。」
それには、昌雄と正成も頷く。
俊三は、驚いたように言った。
「ということは、今夜は源太に投票するのか?」
正成が、顔をしかめた。
「いや、まだ分からない。ただ、源太の明子さんに対する執着みたいなのが酷いからな。普段は仲が良くてもあそこまでじゃなかったのに、どうしたんだろう。」
昌雄が、苦笑した。
「若返ったからじゃないか?源太は、気持ち悪いぐらい明子さんの姿を見てニヤついてたし。明子さんの方はそうでもないみたいだったが、源太のあれはストーカーじゃないかってほどだ。そういえば、貞吉がめちゃくちゃ美男子だっただろう。年取ってからしか会ってないから知らなかったが、美智子さんと美男美女のカップルだったのが今回分かった。で、あの二人が綺麗な顔でやり合ってるから、貞吉が明子さんに言い寄らないか心配だとか言ってると恵子さんが教えてくれた。女性達はそういうのにうんざりしているそうだ。」
言われてみたら、貞吉は確かに美男だ。
あんなのが言い寄って来たら、ベタ惚れの夫としては確かに不安になるだろう。
だが、見ているところ貞吉は今それどころではない。
精神的に頼れるはずの嫁が完全に敵対陣営で、しかも三人も居る占い師のうちの一人なので、誰も腹を割って話してくれないからだ。
恐らく、不安な気持ちを抱えているのではないだろうか。
「貞吉はそれどころじゃないだろ。」俊三は顔をしかめて言った。「まさかだから美智子さんが真で貞吉が偽だとか言ってるんじゃないだろうな。」
忠司は、額に手をやってため息をついた。
「かもな。とにかくあいつは生きていても役に立たないから、どちらにしろいずれ吊ることにはなりそうだ。あの様子では、恐らく村人なんじゃないかと思うがな。狼ならもっと緊張感があるだろうし、余計なことは考えていられないはずだからだ。」
昌雄が、言った。
「今日は黒を狙いたいだろう。だったら源太は保留か?」
それには正成が言った。
「でも、他に誰か居るか?茂男は確かにいきなり焦り出したように感じるから、票が集まりそうだがあいつの性格からして、村人でもあんな感じなんじゃないかと思うんだが。」
俊三は、頷いた。
「そうなんだ。茂男はなんでもかんでも喜美子さんだったから、今は不安なんだと思う。それであんな感じなんだと思うけどな。何しろあいつが狼なら、喜美子さんは噛まない。狼は、昨日護衛が入ってる可能性が高いのにわざわざ共有者の喜美子さんを襲撃してるだろう。茂男なら、絶対理由を付けて反対したはずなんだ。喜美子さんは確かにしっかりした人だが、どうしても噛まなきゃならない理由はなかったはずだからな。それこそオレとか噛んでれば良かったのに。」
忠司が、考え込む顔をした。
「…オレも、多分喜美子さんはあきらめて確白に近い俊三を狙うと踏んだんだが昨日は外してしまった。今夜、もし美智子さんの指定先に俊三が入ったら、俊三を噛んで白結果、または噛まずに黒結果のどちらかを選択するだろう。占い師は…もしかしたら、噛まないかもしれない。」
昌雄が、驚いた顔をした。
「え、占い師はどうしても噛むんじゃないのか。」
忠司は、深刻な顔をした。
「憲子さんが村に意見を落としてしまった。噛んで護衛成功が出たらそこが真占い師だと明日透ける。オレも分かっていたことだったが、噛みを無駄にするためにも、狼には必ず真占い師を噛んで欲しかった。護衛成功で縄は増えないが、一日早く真占い師が生きたまま透けるからだ。だから言わなかったのに、憲子さんの発言で皆がそれを知ってしまったんだ。狼は、少しでも真占い師確定を遅らせたいはず。今夜狩人が必ず占い師を守るなら、今夜は別の所でお茶を濁して確実に明日噛む方が良いだろう。だから、守り位置には正直今、迷ってるんだ。」
正成が、言った。
「狼と読み合いだな。今夜言った通り他を噛んだら、真占い師はもう一日生き延びる可能性がある。だが、それでも真占い師を噛んで来たらそれで終わりだ。グレーが狭まらないまま終わる…どちらにしろ明日、真占い師は透けることにはなるが。」
昌雄が、言った。
「じゃあ、オレがもっともらしく護衛成功で明日真占い師が生存したまま透ける事を強調して、それが狼にどんな影響が出るのか語ろうか?正成と忠司も更に同調してくれたら、狼をびびらせられるんじゃないか。噛めなくなると思うがな。貞吉を守るのは、一日遅らせて。」
俊三が、慌てて言った。
「だが、まだ貞吉が真だとは限らないだろう。敏男だったら?万が一美智子さんだったりしたら、結局外すことになるし、今夜守っても良いんじゃないか。明日の結果である程度どこが真なのかまた透けるかもしれない。」
忠司は、ハアと大きくため息をついた。
「確かに、状況から貞吉ではないかと思ってはいるが、違う可能性は捨てきれない。狼もそれを見越して噛んで来る可能性もあるし、やはり占い師から護衛は外せないか。」
正成が、言った。
「いや、昌雄が言うようにやってみよう。」三人が正成を見ると、正成は続けた。「まだ真占い師がどこなのか分かっていないと困ったような顔をして発言する。狼が噛んでくれたら分かりやすいと占い師噛みを望んでいる風に言うよ。その上で昌雄が言うように、占い師が噛まれようと護衛成功が出ようと、明日占い師が確定するのは結局狼には不利なんだと思わせられるようにやってみよう。そして狼が必ず占い師を噛むことを前提の話をする。そうしたら、裏をかこうと別の所を噛むかもしれない。もちろん俊三がヤバい筆頭になるから、気の毒だが頑張ってくれないか。」
頑張るって何を頑張るんだよ。
俊三は思ったが、それが一番良いのかもしれない。
昌雄は、頷いた。
「だったらオレも加勢する。忠司もそう言えば、村の流れがそうなるはずだ。空気を見て、守る場所を決めたらどうだ。今のところ誰が狼なのか皆目わからないが、みんなの反応で分かって来ることもあるだろう。で、今日の吊りだが…誰にする?合わせるぞ。」
皆の視線が、忠司に向く。忠司は、眉根を寄せていたが、言った。
「…とりあえず、源太か富恵さん。残しても色が分かりづらくて、夫婦バイアスが掛かりそうな場所だ。他と遜色ないが、後々村人であっても村利の無い場所を処理して行こう。」
昌雄は、立ち上がった。
「決まったな。とにかくはそれで進めよう。オレは恐らく源太に入れる。その理由ならあいつが一番面倒だ。だが、この方法で明日忠司が噛まれたら、正成と俊三のことも疑うぞ。お前達もそうだろう?どう考えても、忠司噛みはおかしい状況だからな。何しろ源太が白だった時、村を誘導したと黒塗りしやすい位置だ。狼も簡単には噛めないだろう。昭三が真なのか狂人なのかわからないが、明日の結果が楽しみだ。」
昌雄は、さっさと部屋を出て行く。
正成も、立ち上がって言った。
「じゃあオレも。あんまりオレ達が一緒に居たらまた怪しまれるからな。じゃあまた下で。」
俊三は二人を見送って、忠司を見た。
「…大丈夫だろうか。真占い師はほんとに誰なんだろうな。美智子さんだったら守ってるはずはないって、もうとっくに占い師の狼は切ってるんだから噛んで来るんじゃないか?」
忠司は、立ち上がりながら頷いた。
「そうだな。後は空気を読むしかない。村がどんな空気になるのか、オレにも予想できない。村のためになるように発言しても、怪しまれるぐらいだからな。」
俊三は、頷きながら複雑だった。
とはいえ、占い師にはなんとしてももう一日生きてもらいたい。
狼が、ぶれてくれる事を祈るしかなかった。