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昼の会議

結局、茂男は他の政由、武、浩二と話していて、俊三が割り込もうとしても聞かなかった。

これが昌雄や正成なら分かるが、茂男から見て白だと主張している俊三なのに、いくら意見が食い違っているからとあまりに頑なな態度だった。

憲子や富恵は、共有者の恵子と片白の明子と共に集まって話していて、男性の俊三には敷居が高くて話の輪に入るのは憚られた。

とはいえ源太は明子にくっついているので、同じ場所で黙って座っていて女性陣に鬱陶しがられていた。

今、完全グレーは茂男、正成、忠司、憲子、源太、富恵、武、昌雄、浩二、政由の10人だ。

占い師に貞吉、美智子、敏男の3人が出ていて、霊能者は昨日由子を吊って残り昭三1人、共有者が喜美子と恵子だったが喜美子が襲撃されて恵子1人。

そして貞吉と敏男の白の俊三、美智子の白の明子。

合計17人生存で後8縄という現状だった。

今夜の襲撃は、恐らく占い師の中の真占い師だろう。

狩人が間違える可能性があるし、今なら護衛成功が出ても縄が増えないので狼は必ず占い師を噛んで来るはずだった。

普通なら占い師に狼が出ていると、真占い師はまだ噛まれないはずだったが、この盤面になると必ず占い師は特定されてしまうので、どうしても占い師の狼は諦めざるを得ない。

狼からしても、面倒な盤面なのは確かだった。

だが、真占い師を処理できるのは大きい。

狼一匹を差し出して、グレーの狼を保護する方向にシフトするのが、狼にとっては一番いい動きだと思われた。

そうなって来ると、グレーの狼は真占い師を処理するまでは目立つわけにはいかない。

捕捉されてしまうと、この作戦は全く意味がないからだ。

だからこそ、目立つ行動をしている昌雄、正成、忠司は普通に考えて村目線白くなるはずだった。

もっと初心者の村なら後先考えずに仲間を庇って自爆して行く事も考えられたが、自分達はこの三週間というもの、暇にあかせてずっとこのゲームに興じていた。

見ていた先生達もアドバイスをくれて、その辺の若者にも負けないスキルを身に付けていると自負している。

そんなお粗末なことを、やるとは思えなかった。

俊三が皆を説得しなければと鼻息荒くカフェへと入ると、恵子と忠司が何やら話をしていて、こちらを振り返った。

「お、来たか。」

忠司が言う。

俊三は、頷いた。

「吊り先指定のこと、みんなに再考させようと思って、どう説明しようかって考えてた。」

恵子は言った。

「忠司さんから聞いたわ。違和感の正体が分かった気がするの。そうなのよ、狼は少なくとも今日明日は目立てないわよね。だって、占い師に占われたら終わりだから。さっき憲ちゃんとも言ってたんだけど、冷静に考えたら絶対吊り先指定に入って来るのに、騒いだりしないわよね。」

俊三は、驚いて忠司を見た。

忠司は、苦笑した。

「恵子さんに理解してもらうのが一番早いと思ってな。昌雄達と話した結果を今説明してたんだ。」

確かに共有を先に取り込めたら大きい。

俊三は、会議でみんなに向けて話すつもりだったので、忠司の手際の良さに感心した。

そもそも確定白でもないのに、疑惑の只中の者が訴えても皆を説得するのは難しいのだ。

その点、恵子は村で唯一の確定白なので、発言力があった。

そうなると、残りは茂男、憲子、源太、富恵、武、浩二、政由の7人になるが、政由は割り込んでまで忠司を庇ったり強い発言をしていたし、武も積極的に話していた。

恵子の話では憲子もこの状況に違和感があると言っていたようだし、残りは茂男、源太、富恵、浩二の4人。

それほど印象にない感じの4人だ。

「…だとすると、印象に残らない意見だった茂男、源太、富恵さん、浩二が怪しく見えて来るよな。」

恵子が、渋い顔をしながら頷く。

「そうなのよ。富恵ちゃんはあれで、結構雑談していたら考えてる感じなんだけど、他はわからないわ。だって、個人的に話してないし。茂男さんと俊三さんは仲がいいわよね?どうだった?」

俊三は、うーんと腕を組んで見せた。

「どうかな。何しろあいつ、今は思考ロックしててオレの意見なんか聞かないんだよ。オレが白い、昌雄と正成が黒いって。」

恵子が何か答えようとしている時、ぞろぞろとカフェの入り口から皆が入って来た。

その先頭に、茂男と政由、武が居て、茂男は何かをまだ熱く語っていたが、残りの二人はうんざりしているようだった。

浩二が後ろから来ている源太に、茂男の方を見ながら何やら小さな声で耳打ちするような仕草をしている。

恐らく、何をあんなに語っているのかと、源太が不思議に思って聞いたのだろうと思われた。

皆が椅子へと座るのを見て、俊三も急いで自分の椅子へと座る。

忠司も、恵子もそれに倣って席へとついた。

皆が席についたのを見て、恵子が言った。

「じゃあ、グレー詰めの続き。さっき言い合いになってたのは、俊三さんと忠司さん、それから正成さんと昌雄さんだったわね。対立しているように見えてたけど、何か話し合った?」

恵子が促すと、忠司が言った。

「あれから、四人で話し合った。オレも冷静になって考えると、何かがおかしいと感じていて。まず、占い師の中の狼を、他の狼は切るという動きだと朝言ったな。つまり、真占い師を排除することを目的にシフトしたんだと思う。それは朝の全員黒結果で分かる。理由はもう説明しているから省くが、そうなって来るとグレーの狼の次の目的は、いかにして真占い師が居なくなるまで占われないか、という事になる。」

恵子は、もうそれを忠司が説明するのはお互いに了承済みなのか、頷いて相槌を打った。

「そうね。もう占い師の中の狼は捨てているから、どうせ遅かれ早かれ真が透けてしまう状況で、占われてしまったら死活問題だもんね。」

忠司は、頷く。

「そう。となると、グレーの狼のすべきことは、占い師の中の狼を庇うことじゃない。できるだけ村人の意見に合わせて紛れ込み、怪しまれないようにすること。少なくとも明日までは、どうしても自分に黒結果が出されるのを回避しなければならないんだ。となると、意見が対抗しているとはいえ、目立って吊り位置にまでなりそうな昌雄と正成は、必然的に狼ではないと考えた。同じようにしっかりと議論に参加する姿勢を見せて、自分に話が振られていないのに会話に入って来た政由や、武はオレから見て白く見える。他にグレーはどこだ?」

恵子は、ホワイトボードに目をやった。

「そうね、完全グレーは10人。茂男さん、正成さん、忠司さん、憲子ちゃん、源太さん、富恵ちゃん、武さん、昌雄さん、浩二さん、政由さん。ということは、忠司さん目線で省かれるのって誰になるの?」

忠司は、答えた。

「オレ目線では今の理由で正成、武、昌雄、政由は白く見えている。現時点ではな。つまり、無難な意見であんまり印象が無い、茂男、憲子さん、源太、富恵さん、浩二にはしっかり話を聞きたいと思うな。」

恵子は、もう知っていた流れなので、躊躇いもなく言った。

「私も、さっき憲ちゃんと話してて違和感があったんだけど、忠司さんの意見はとてもモヤモヤを払拭するいい意見だと思うわ。確かにこの盤面で目立つ行動をとる狼は、自爆しているようなものだものね。何しろ、占い師の狼はもう、絶対に吊られるし残りは二人なのよ。きっと、狼は占い師を噛んで来ると思うの。噛まなくても、明日にはいくら何でも相互占いを続行して呪殺を出したいと考えているけど…それはまた明日のことで、とりあえずグレーの人達の話が聞きたい。これまでしっかり議論していた忠司さん、正成さん、武さん、昌雄さん、政由さんはここは置いて、他の人の意見が聞きたいの。まずは茂男さん、何か強く言いたいことがあるみたいね?」

茂男は、黙って睨むように忠司を見て話しを聞いていたが、頷いた。

「オレは、忠司の意見には同意できない。」皆が驚いた顔をしたが、茂男は負けずに続けた。「なぜなら、俊三や忠司が白いから、方向を変えて狼が擦り寄って来たんだと思うからだ。だから、正成と昌雄が吊り先指定から外れるのはおかしいと思う!」

散々その意見を聞かされていたのだろう、政由と武、浩二が疲れたような顔をする。

それでも、茂男はじっと昌雄と正成を睨んで座っていた。

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