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昼の会議まで

四人は、歩いて談話室へと向かった。

本来なら隣りにあるはずの娯楽室は、相変わらずない。

どうなって無くなってしまったのかは分からないが、とにかく壁しかないのだから確かめようもなかった。

そんなただの壁を気にしながら歩いて行くと、忠司はそっと談話室の戸を開いて、そうして中へと他の三人をいざなった。

「さあ。誰かに見られたらまずい。」

俊三はどういうことだろうと顔をしかめたが、言われた通りに談話室の中へと入った。

そこは、とにかく隣りで何かやっている時に迷惑にならないようにと、壁が学校の音楽室の壁のように木の穴が開いている板で出来ていて、窓も扉もそれ用の物で出来ていた。

そこの窓際の席へと歩いて行った忠司は、椅子へと座って言った。

「まあ座れ。」

俊三は、言われるままに座る。

昌雄と正成も、戸惑いながらも空いた席へと座った。

忠司が、言った。

「急にすまん。部屋へ帰って良く考えてみたんだが、やっぱりおかしい。冷静に考えると、お前達は一番怪しくないのかもしれない。」

それを聞いた昌雄は、正成と顔を見合わせてから、答えた。

「…それを俊三と話してて。オレ達はお互いに、村人なんじゃないかって。」

忠司は、頷いた。

「そうなんだ。考えたら、狼は占い師の中の仲間を切る行動をしているのに、庇うのはおかしい。そもそも、もう真占い師が誰だか透けているはずだし、そうなったからには一刻も早く真占い師を処理したいだろう。グレーの狼を生き残らせるためにな。露出している狼は、遅かれ早かれ消える運命だ。だったら、庇ったりせず見殺しにした方が、利があるのではないかと思ったんだ。生き残るためには、占われるわけにはいかない。だから、少なくとも明日まではおとなしくしているはずだなってふと気付いて。」

俊三が、何度も頷いた。

「そうなんだよ。オレもなんか違和感があるなって、もう一度考えてみたらそれに気付いたんだ。それを茂男に話してたら、後ろで聞いてた昌雄と正成が同じ考えになって話に来たんだって。」

忠司は、眉を寄せた。

「…茂男は、なんで出て行ったんだ?」

それには、正成が肩をすくめて答えた。

「オレ達がどうあっても怪しいんだってさ。擦り寄りだとか言って。他の人達に話に行くって出て行った。あいつは、どうも思い込んだら絶対そうだってタイプみたいだな。」

忠司は、考え込むような顔をした。

「おかしいな…あいつはあんまり主観が無くていっつもオレとか俊三、それか嫁さんの喜美子さんの受け売りばっかだっただろうが。なんだって急にそんなに頑なになったんだ?」

俊三は、ため息をついた。

「わからん。でも、あいつ喜美子さんが居ないからしっかり考えないとって言ってたし、自分で何とかしないとって力が入ってるのかもしれない。ところで、なんだってこんな所に呼んだんだ?そんな用件だったら、別にカフェでも良かったんじゃないか。オレ達がコソコソしてるって、みんなが怪しんだらどうする。」

それは昌雄も正成も思うようだ。

忠司は、控えめにしていた声を、更に落として言った。

「…で、オレも賭けに出ようと思った。」何のことだろう、と皆がキョトンとしていると、忠司は続けた。「オレは、狩人だ。」

え…?

俊三は、一瞬何を言われたのか分からなかった。

だが、段々にその意味が浸透して来て、慌てて言った。

「ちょ、ちょっと待て!良いのか、この中に狼が居たらイチコロだぞ!」

昌雄と正成も、うろたえたような顔をした。

「そうだぞ、オレは自分が白だって知ってるが、お前達がラインだとか言う正成の色は知らない。それに、俊三だって忠司に合わせてるだけの黒って可能性だってあるし…。」

正成も、何度も頷いた。

「そうだよ。駄目だって、何だって言っちまったんだよ!」

忠司は、フッと笑った。

「お前達の中に狼が居たとしても、全員が狼じゃあない。」それはそうだが、と俊三が眉を寄せていると、忠司は続けた。「もしオレが真占い師の次に死んだら、この中に狼が居る。これからの噛み筋を考えると、オレを噛むのはおかしい。なぜなら、今村の中で疑われている中にオレは入っているし、オレより先に噛むところがあるだろう。つまり、占い師と共有者だ。それから、確白になりかかっている俊三。」

昌雄は、まだ困惑した顔で頷いた。

「まあ、疑われている位置は残して行くよな。まだグレーの中の狩人を探して噛むには早いから。」

忠司は、頷き返した。

「そうだ。だから、オレが早めに噛まれるのはおかしいんだ。昨日は共有者が噛まれるとは思っていなかったので、オレは俊三を守っている。だから今夜は占い師を守れる。その事実を言ったのもお前達だけ。だから、俊三が明日噛まれたとしたらこの中に居ると思ってくれ。ちなみにオレは今夜、貞吉を守る。」

正成は、もはや覚悟したように真面目な顔で頷いた。

「分かった。絶対漏らさないよ。でも、いいのか?さっきあれだけ疑ってたのに、オレ達に言ってしまって。」

忠司は、苦笑した。

「まだ完全にお前達が違うと思ったわけじゃない。でも、どうせそのうち狩人は出なきゃならなくなる。だったらここで話しておけば、オレが噛まれた時、お前達のうちの誰かが絶対にこれを証言してくれるだろう。それだけでも狼を探す材料になる。とはいえ、お前達だって信じていいのか?もしかしたら、オレの他に狩人だって言う奴も居るかもしれないんだぞ。オレが狼で、お前達を取り込もうとしてるとしたらどうだ?」

それを聞いた昌雄が、じっと考えたが、ハッハと笑った。

「…ない。グレーの中に狼が残っていてそれが忠司なら、ここで役職に出て露出するのは首を絞めてるようなもんだ。グレーの狼は目立っちゃいけない。例えオレ達にだけだとしても、リスクがあり過ぎるだろう。忠司ほど発言が伸びるなら、潜伏した方が有利になる。だから違うとオレは思う。」

正成も、それに同意した。

「オレも。そもそもが、さっき話したばっかじゃないか。あんなに目立つ狼は居ない。オレ達は恐らく、村人同士で争わされていたんだ。もしこの中に居たら、忠司の噛みがいつ入るかで判断が付く。だが…だとしたら、おとなしくしている狼ってどこだ?」

俊三が、これまでそんなに目立つこともしてない皆の顔を思い浮かべて、顔をしかめた。

「…多過ぎる。」俊三は、大きなため息をついた。「オレ達以外のほとんど全員だろう。政由はよく発言していたしそれっぽくないが…武も考えてるなあって意見だったし…源太はどうだ?」

「出た、ザ・嫁の言いなり。」昌雄が、皮肉っぽく言った。「とはいえ、あいつは嫁に合わせて話すことで、自分の意見を言わずに済んでるよな。影に隠れてるって言ったらそうかもしれないけど…元々嫁命だから、分からんなあ。」

普段からあんな感じで明子の意見ばかりを採用している源太なので、それが狼で利用しているのかどうかは分からない。

「逆もあるかもだけどな。」忠司は、言った。「明子さんが狼で、上手い事源太を乗せて言いなりにしている可能性もある。とにかく、夫婦で結託してそうな所はあまり信用しない方がいい。グレーの夫婦は、どっちか片方占ってしまう方がいいか。」

昌雄が、頷く。

「もしくは吊るか。」と、少し驚いた顔の俊三に苦笑した。「ゲームにならないからな。かかあ天下っぽい所はどっちか吊って、別の夫婦は占う感じで進めたらどうだ。バラして行った方が後がスムーズだ。こんなバイアスかけずに議論できるし面倒がない。」

確かにそうなのだが、少し気の毒といえば気の毒だ。

忠司は、立ち上がった。

「とりあえず、誰かに気付かれる前にここを出よう。」と、扉へと足を進めた。「談合してるとか言われたら面倒だしな。上手くやれよ、お前ら。何かあったらオレの部屋へ直接来てくれ。今のところは、皆大丈夫だろうとは思ってる。」

俊三も、立ち上がりながら頷いた。

「大丈夫だ。占い師が誰が真かはまだ意見が食い違ってるんだろうけど、他の所は理解したし。まあ美智子さんが真占い師だったら、明日守れないし確実に噛まれるだろうからその対立も無くなるだろう。」

四人は頷いて、そっと扉を開いて外を窺ってから、バラバラに出て行った。

俊三は、茂男が気になって二階へと足を向けたのだった。

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