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一日目昼2

喜美子は、息をついた。

「あー、みんなすごく考えてる。なんかいつもより凄い難しいわ。私もいろいろポンポン思い浮かぶから、楽に進行できるってたかをくくってたけど、みんなもそうなのね。」と、俊三を見た。「それで俊三さん、何か分かった?」

俊三は、内心ため息をつきたかったが、頷いた。

「そうだな、ここは印象でしかないんだが、オレは貞吉が真占い師に見えたな。」

貞吉が、パッと明るい顔をする。喜美子が訊ねた。

「それって、白を出されてるからとかじゃなくて?」

俊三は、答えた。

「違うよ。それなら敏男と迷うだろう。何よりまず、一番最初の発言なのに落ち着いてたし、内容も納得できるものだった。オレに白を出したのは貞吉が先だったし、被せて来たと言われたらそう見える。敏男は確かに敏男目線での話が真っぽかったけど、狐でも狼位置が見えないから村っぽくなるだろう。だからオレは今の時点では、強気の美智子さんが狼、貞吉が真、敏男が狐かな。まだ、今聞いた印象だけだから分からないけどね。」

喜美子は、頷いて次に茂男を見た。

「じゃあ、あなたはどう思う?」

茂男は、喜美子を見た。

「お前と同じことしか聞いてないんだぞ?」夫婦のよしみで盛大に顔をしかめて、茂男は言った。「オレは俊三が言うように、貞吉の落ち着きが真ぽいなって感じたよ。ただ、美智子さんも何としても生き残りたい真で、力が入っててあんな感じなのかも知れないとも思う。敏男も納得できること言ってたし、誰が誰かって今は言いきれないな。」

喜美子が、ムッとした顔をした。

「お父さんの優柔不断な所が出てるわよ。ダメよそんなんじゃ。あなた村人なんでしょ?もうちょっとしっかり考えてよ。」

茂男が、え、と驚いた顔をして喜美子を見る。

「え、なんでオレが村人だって分かるんだ?」

喜美子は、腰に手を当てて言った。

「伊達に五十年以上一緒に居ないわ。目を見たら分かるわ。バレバレよ。」

茂男は、バツが悪そうな顔をした。

喜美子は、ふんと鼻から息を吐いて、正成を見た。

「じゃあ次、正成さん。」

正成は由子の夫だ。

老人の時には気付かなかったが、優しげでおっとりとした雰囲気の男だった。

ちなみに由子は、若返って気が強そうなハキハキした女性に見えていた。

その正成は、言った。

「…まあ、占い師の内訳はオレにも分からなくてな。」喜美子が顔をしかめると、正成は続けた。「由子はこんな風だが、真っ直ぐで一生懸命なんだ。疑われやすいのは仕方ない。オレはこいつの性格を知ってるから、多分真霊能者なんだろうなって思ってる。だから、美智子さんが強気だから狼だってのは、ちょっと違うと思うんだ。由子がこんなだから、もしかしたら美智子さんもそうなのかなって思うから。なんで、そういう印象を取っ払って言ってる内容だけで見たら、みんなその人目線で間違ったことは言ってない。だからオレには分からないって答えたんだよ。印象だけじゃ決められないぞ?確かに初日だからそれしか判断材料がないかもしれないが、決定的な何かがあるわけじゃない。決め付けるのは早い。」

由子が、下を向く。

恐らく正成の言うように、空回りしてしまう自分のことを自覚しているのだろう。

喜美子が、ため息をついた。

「確かにそうなんだけど。でも、今夜誰かを必ず吊らなきゃならないのよ。正成さんは由子さんを信じてるってことね?」

正成は、頷いた。

「別に夫婦だからとかじゃなくて、こいつが一言多いのはいつものことだし、言ってる事は間違ってないと思ってるからな。どうしてもと言われたら、オレは昭三に投票所するよ。」

夫の言葉には重みがある。

俊三は、迷っていた。

もしかして正成と由子が同陣営だったらとかも考えるのだが、正成の発言には他意はなさそうだ。

すると、忠司が言った。

「まともな事を言う人外も居る。」皆が驚いていると、忠司は続けた。「オレは初日は印象しかないと思っている。投票先でそこからの村の流れで判断がついて来る。霊能者はローラーすると決めているから、オレは今の正成の意見は加味しない。占い師の精査を引き続きするべきだと思っている。」

喜美子が、慌てて言った。

「そうね、次は忠司さん。占い師の内訳はどう思った?」

忠司は、答えた。

「強気だどうのという話は考えずに居ても、美智子さんの内訳の可能性を広げる発言は内訳を確定されたくない人外に見えている。敏男の様子見するような発言は敵を作りたくない人外に見える。なので今の時点では、貞吉が真に見えている。最初の発言であるにも関わらず、きちんと自分目線での話を村の意見に合わせて考えて発言している。混乱させるようなおかしな内訳の提示もしていない。なので私目線では、俊三も白く見えている。」

分かりやすい。

というか、忠司はこんな男だったのだ。

最近では認知症の症状が出て全く分からなかったが、確かに初めて会った時も、忠司はハッキリ話す頭の切れる印象だったような気がする。

妻の加奈子を亡くしてから、一気に老けたので記憶が遠いのだ。

喜美子が、いくらか圧倒されておどおどと言った。

「ええっと、ということは内容だけを見ても美智子さんが人外っぽいと。」

忠司は、頷いた。

「そうだな。今の時点での意見だが。これから占い結果も出て来るし、今日は占い師を吊るターンではないからざっと考えただけだ。」

俊三は、忠司が同陣営ならいいのに、と思った。

こんなに頭が切れそうな奴が、人外だったら手強いだろう。

喜美子は、忠司に気圧されていたが、頷いて逃げるように次の憲子を見た。

「ええっと、憲ちゃんは?どう思う?」

憲子は、困ったように言った。

「私は分からないなあと思っていたの。でも忠司さんの意見を聞いたら、なんだかその通りな気がしてきたわ。美智子さんは若くなったからかもしれないけど、敵だったら怖いなあと思ったの。そこに俊三さんや忠司さんの意見を聞くと、やっぱり敵なのかもとか思って来て。ただ私は敏男さんが真占い師の気がするのよ。だって分からないって気持ち、共感できたから。まだちょっとしか聞けてないのに、あれこれ分かる方がなんだか怖いわ。それぐらいかな。」

喜美子は、次の明子を見た。

「じゃあ明子さん。美智子さんから白が出てるけど、ここまで美智子さんが狼かもって意見が多かったよね。どう思う?」

明子は、皆の視線を受けて緊張気味に答えた。

「私は…自分が村人で、白って言ってくれたから当たってるから真って簡単に思っちゃってた。でも、みんな目線じゃ違うのね。でも、今まで発言した人の中に人外が居たら変わって来るとは思うけど。真だと思ったから、理由を付けて真目を下げに行ってるのかも。俊三さんなんか、もし黒だったら二人から白を出された時点で真占い師が透けるでしょ?だから美智子さんを下げてるのかなあって思った。ただ、まだ分からないけど。」

喜美子は、頷いた。

「白を出してもらうと印象が変わるもんね。」と、次の源太を見た。「源太さんは?」

源太は、大きなため息をついた。

ちなみに源太は明子の夫だ。

「オレは印象に頼るとこがあるから、忠司みたいに論理的には考えられないけど、うちの嫁の意見聞いたらそうだなあって思った。明子は何でもよく聞いてる奴だから、こいつの言うこと聞いてたら間違いない気がするんだよな。」

明子が苦笑した。

「もう、お父さんったら。もし私が敵陣営だったらどうするの?ダメよしっかり考えないと。」

源太は、頭を掻いた。

「まあ、オレは嫁さんを信じてるってことだ。だから美智子さんは印象がいいよ。白って言ってるしな。」

夫婦バイアスがかかっている。

俊三は、困ったなと思った。

茂男は妻が共有者で確定村人だから言う通りにしてくれるのは構わないが、明子はまだ分からない。

源太自身もどうなのか分からない。

しっかり考えてくれないと、最終日まで残ったとしたらまずいことになりそうだ。

苦笑した喜美子が、言った。

「じゃあ次、富恵ちゃん。」

富恵は、頷いた。

「私は俊三さんと忠司さんの意見に賛成よ。思ってたの、なんか美智子さんややこしいこと言うなあって。それに、敏男さんは確かにみんなを敵に回さないようにしてるように感じた。だから、貞吉さんが真かなって今は思う。一回結果が出てるだけだし、意見だって一回聞いただけだから確定じゃないけどね。」

すると、隣りの富恵の夫の、武が頷いた。

「だよなあ。忠司の言うこと聞いてりゃ勝てる気がして来たんだよな。会社の上司を思い出した。敵じゃなかったら最強じゃないか。」

俊三は、思わず笑った。

同じ事を考えていたからだ。

喜美子が、俊三につられて笑って言った。

「じゃあ武さんも同じってことで。次は、ええっと」と、名簿を見た。「昌雄さん。」

昌雄は、言った。

「オレは美智子さんは真だからこそあれこれ考えてるんだと思ったけどな。」皆が真顔になって昌雄を見た。昌雄は続けた。「だって考えてみろよ、一人だけ明子さん白のお告げを持ってて、他の二人は美智子さん目線人外だ。女性は一人だし、負けてたまるかって力も入ると思うぞ。前の発言の貞吉が何の疑いもなく内訳真、狼、狐で見てるってことは、そうでないかもって思うのは自然だ。流れされたら村のためにならないからな。誰にも内訳なんか、ハッキリ分かってないんだから。」

俊三は、自分の感情に困った。

昌雄にそう言われると、そんな気がしてくるのだ。

思った通り、ここまで発言して来た者達も、忠司以外は俊三と同じように顔をしかめていた。

喜美子も例に漏れず同じように困惑した顔をした。何と返したらいいのか分からなかったようだったが、忠司が言った。

「オレが言っただろう。人外でもまともな事を言う奴も居る。だから、武はああ言うがオレにだって分かっていない。それでも、強い意見を出したのには訳がある。」

昌雄が、眉を寄せて言った。

「…なんだ?」

忠司は、答えた。

「ラインを見るためだ。」昌雄が、ますます眉を寄せる。忠司は続けた。「推測だが強く確信めいて言うことで、絶対に誰かを庇ったり煽ったりするヤツが出て来るからだ。それで、占い師からのラインが見える。今日ではなく明日からの結果で、占い師の中の誰かが必ずボロを出したり破綻したりするだろう。その時に、今日のラインが役に立つ。ちなみにオレは、結構な確率でまだ美智子さん真もあると思っているぞ?いろいろな可能性があるのは当然だ。まだ初日なんだからな。オレは単に、皆の動きを見たかったんだ。」

昌雄は、むっつりと黙った。

忠司の方が、一枚も二枚も上手だからだ。

次の順番の、恵子が言った。

「あの…グレーも減って来たし私の意見も言っていいかしら?」

喜美子が、険悪な空気になろうとしていたので、慌てて頷いた。

「うん、恵ちゃん。他の人の意見は気にしないで、何かある?」

恵子は、言った。

「ええっと、私はね、最初に発言した俊三さんが白いって思ったから、俊三さんの意見が合ってるのかなって思っているの。貞吉さんは分かりやすい意見だったし、どうしても信じたくなるよね。美智子さんの意見はあり得るんだろうけど、今それを考えたらややこしいから明日からでもいいんじゃないかってあまりいい印象じゃなかった。敏男さんは、私が占い師だったら同じように感じることを言っていたから、こっちも真があるのかなあって感じ。順番的には、貞吉さん、敏男さん、美智子さんって感じかな。まあ、ダンナだから敏男さんを信じたいって気持ちもあるけど。霊能者はまだ分からないけど、由子ちゃんの意見は確かになあって感心したから印象いいよ。一言多いって言うけど、対抗してるんだから仕方ないよね。」

恵子は、直前のごたごたを感じさせない様子で自分の考えを言った。

お蔭で、どうしたらいいのか分からなかったらしい喜美子も、ホッと頷いた。

「考えることが多くなると、ワケ分からなくなるから印象が悪くなるよね。」と、次を見た。「次は、浩二さん。」

浩二は、ハアとため息をついた。

「やっと回って来た。オレ、18番だもんな。そうだなあ、誰が話してもその都度そうだよなあって共感してしまって、結局今頭の中ごちゃごちゃ。ただ、最初に思ってたことを言うと、貞吉の事は週二回の将棋打ちでめちゃくちゃ知ってるから、こいつ嘘つけないヤツだから多分白だなあって思ったんだよね。だから、その貞吉を真だって言う人達には共感できるかな。後からあーじゃないこーじゃないって言うから、何かワケ分からなくなってるけどな。でも今日の吊りは霊能者からだし、まだ考える時間はあるからこれぐらいでいいかなって思ってるよ。」

今は、ただ意見が聞きたいだけだ。

そう、意見を聞いて、忠司のようにラインができるか見たり、ちゃんと考えているのか見たりしているだけで、今日は占い師の精査はあまり関係がない。

喜美子も、分かっているので頷いた。

「そうね、今は意見を聞きたいだけだから。じゃあ、やっと最後の政由さん。」

政由は、笑った。

「やっとだな。そうだなあ、オレは大方の予想通り、貞吉が落ち着いてるから真っぽいと思う。まあこれってメタとか言う推理だから、良くないよな。でも、美智子さんの意見がちょっと無理やりたくさん話そうとした感じに聞こえた。敏男は、みんなの顔色を見てるような気がする。だから貞吉かなって思っただけ。でも、誰かが言ってたけど一回話を聞いただけだからなあ。確定じゃあない。忠司のやり方は頭いいと思うしだから好きだよ。確かにラインが見えて来たよな。」

これで、全員の話が聞けた。

だが、あくまでも推測でラインが見えたといえば見えたが、村人でも感じ方次第で人外を庇ったように見えるかもしれない。

俊三は、まだ初日だしこれぐらいか、と、これ以上の情報が落ちるのを、今日は期待していなかった。

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