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第84話 ゴーカートに乗りました

「妾が結婚して子供を産めば貴様は第一継承者ではなくなるのだが‥‥」


まおーちゃんが呆れた顔をして突っ込みます。メイやラジカもついてきて、掲示板に集まります。


「えーっ、まおーちゃん、女同士で子供はできないでしょー?」

「だから貴様との結婚は想定しておらん」

「ウチがずっと姉さんを独り占め、なの!」


そう言ってまおーちゃんの腕を抱いたハギスは、次に私を指差します。


「お前は人間なの。人間の寿命は80年くらいと聞いたなの。人間と魔族が結婚しても、人間は先に死んでしまうなの。魔族を悲しませたくなかったら結婚は諦めやがれなの」

「うーっ、寿命を魔族並みに伸ばす方法があるってまおーちゃんから聞いたんだもん!だよね、まおーちゃん?」

「あるにはあるが、貴様には教えてやらん」


まおーちゃんは腕を組んで首を振ります。いじわるー。


「最初、どれで遊ぶ?」


ラジカがマップを眺めます。


「じゃあ、最初は空中ブランコかな」

「あたし、怖いのは苦手だから見てるだけよ」


メイはラジカの腕からは離れましたが、まだ手首を掴んでいます。


「でもお姉様、観覧車以外はスリルのありそうなものばかりですよ」

「ううっ、来なければよかったわ‥‥」


メイはすねます。どうしましょう。そうだ、ずっと前にも家族でウィスタリア王国の遊園地に行ったことがありました。その時にメイが楽しんでいた遊具、何がありましたか。何でしたっけ、うーんうーん。


「お姉様、このゴーカートはどうでしょうか?」

「えっ、ここにもあるの?ゴーカート」

「はい」


と、私はマップを指差します。

最初のアトラクションはゴーカートに決まりました。


「なるほど、ここの遊園地はタイムを測れるのね」


魔族語が少し分かるメイは、少し時間をかけながらも、アトラクション入り口のところにある説明文を読みます。


「タイムで勝負するなの!テスペルクには絶対負けないなの!」


ハギスがぴょんぴょんはしゃいています。ここにナトリがいたら、勝てるまでずっとこのアトラクションにしかみついていそうです。ナトリとも一緒にまた遊園地に来ましょう。

最初に、メイが1人乗りのカーに乗って、コースを進みます。私たちはスタート地点にある控えスペースのベンチに座って、メイの様子を見ます。カーにはあらかじめ魔法が仕込まれていますが、乗る人の魔力によってその魔法が作動します。ガソリンの代わりに魔力を使って運転するようです。


「おー!」


慣れた手つきで、メイはカーをうまく操作します。曲がりくねった道をうまく進んで、大きなカーブや坂道も、道端にぶつからないように上手く進みます。


「2分14秒ね」


カーから降りたメイは、画面に映し出される数字を読み上げます。


「すごいです、お姉様」

「ありがとう。アリサはあまり魔力を出しすぎないよう気をつけてね」

「分かりました」


次は私の番です。


「失敗しろなの!事故れなの!あう、姉さん痛いなの」


横からハギスが茶々を入れて、まおーちゃんに頬を引っ張られています。

うーん、でも勝負を挑まれた以上、一応はまじめに走りましょう。私はカーを運転して、コースを一周します。ウィスタリア王国のゴーカートにはなかった坂道があって、うまく登れるか不安でしたが普通に登れました。あとは、お姉様の言っていた通り、魔力を出しすぎないよう気をつけましょう。


「2分25秒ですね、お姉様にはかないません」


やっぱりお姉様のほうが運転技術が上です。お姉様は乗馬も上品にできますし、乗るのが上手いかもしれません。

ラジカは3分1秒でした。パンフレットによると、このコースの平均は3分らしいです。平均的ですね。


「まおーちゃん、がんばってー!」

「姉さん、頑張れなの!」


運転を始めるまおーちゃんの横から、私とハギスがそれぞれのエールを贈ります。


「うむ、それでは行ってくる」


そう言ってまおーちゃんも走ります。お姉様ほどではないですが上手いです。道端にあまりぶつからず、手際もよく上品という感じです。ああ、私の前世の世界でまおーちゃんの運転する自動車に乗ってみたいですね。まおーちゃんは勝負など意識せず無難に走っていたらしく、2分39秒でした。

最後はハギスの番です。


「次はウチなの!テスペルクには絶対負けないなの!」


そう意気込んてスタートしましたが。


「うはっ!?」


早速最初のカープで道端に激突して止まります。


「大丈夫か、ハギス」


まおーちゃんが道の横を走りますが、ハギスは「大丈夫なの。あんな奴には負けないなの!」と言って猛スピードで発進して、また次のカープにぶつけていました。

数え切れないほどの衝突音が、あちこちからやかましく聞こえてきます。


『すみません、お客様!止まってください』


さすがに見かねたのか、スタッフがハギスのところまで走っていきます。


『嫌なの。テスペルクに勝つまでやめないなの!』

『あのー、それ以上ぶつけるとカーが壊れて、弁償いただくことになりますので、お客様の安全を優先するためにも当方としては‥‥』


コースの真ん中で駄々をこねるハギスにスタッフが必死で説明するところに、まおーちゃんも向かっていきます。


『妾の姪が迷惑をかけた』

『あなたはお客様の保護者で‥‥んっ!?』


フートをかぶっているまおーちゃんのことに気付いたらしく、スタッフが驚き慌てている様子です。


『あちこちぶつけて塗装が剥がれておるだろう、車体もへこんでおる。見栄えが良くないだろう。小切手をやる』

『そ、そんな、日頃大変お世話になっている魔王様にお金をお支払い頂くなど恐れ多すぎて‥‥むしろ私が払いたいくらいで‥‥』

『遠慮はするな。妾も客だ、弁償はする。あと、妾が来ていることを今日一日口外するな、騒ぎは嫌いだ』


そう言って小切手をスタッフに渡してから。


『ハギス、車から降りろ』

『嫌なの!最後まで走るなの!』


駄々をこねるハギスの体を無理やり車体から引き剥がして、「乗せろなの!テスペルクの奴には負けられないなの!」とわめくハギスを抱き上げて私たちのいる場所へ戻ります。

ハギス、途中棄権です。私たちはゴーカートの施設から出ます。


「全員が楽しめるアトラクションって観覧車しかなさそうだね、最後に乗ろう」

「うむ、そうだな」


私とまおーちゃんは2人でベンチに座ってパンフレットを指差して見て、次のアトラクションを相談します。


「この空中ブランコ、私興味あるんだけど」

「妾はお化け屋敷も好きだ」

「この遊園地って、スリルのあるものが多いよね」

「当たり前だ。魔族はもともと争いを好むからな」


そうやって2人で頭を近づけて話していると。


「お前は一回勝ったからって調子に乗って姉さんを独り占めするななの!そこを代わりやがれなの!」


ハギスが横から無理やり割って入ります。うわっ!?びっくりしました。

と同時に何か視線を感じたので私は顔を上げます。ラジカとメイがベンチの前に立って、私とまおーちゃんの様子をじっと眺めていました。


「あ、あれ、どうしましたかお姉様、そんなに私たちを見て‥」

「い、いや、似合ってるって思っただけ」

「えっ‥何がですか?」

「2人が」

「似合っておらん!」


まおーちゃんがはっと気付いて私から距離を取ります。そこにできたスペースにハギスが割り込んで座ります。


「姉さんの隣を気軽く取れると思うななの。ぺーた!姉さん、次は盆栽いじりがしたいなの」

「盆栽は城に戻ってからやれ」


まおーちゃんは、ため息をついて立ち上がります。あれ?なんだか少し残念そうな様子です。

次は空中ブランコになりました。

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