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第190話 温泉でスキンシップしました(1)

そうやって私とハギスとナトリで騒いでいる間、岩の側面にもたれて湯に肩まで浸かってじっとしているメイのところに、ヴァルギスがやってきます。

ヴァルギスはしばらく黙ってメイの隣に座っていましたが、様子を見てメイのひじに触ります。


「‥何よ」


メイが腕を引っ込めようとしないのを見て、ヴァルギスはにっこり言います。


「どうだ、魔族には慣れたか?」

「‥大体平気よ。武器を持ってる魔族はまだ怖いけどね」

「妾は武器を持つそこらの兵士よりも遥かに強いぞ?」

「‥それもそうね」


ここまで話して、メイはやっと腕を引っ込めます。

それを見たヴァルギスは岩にもたれて、天井を見上げます。


「貴様は、実は洗脳されていたのだ」

「えっ、洗脳?」

「うむ。魔族を怖がる魔法がかかっていた。最初に会った時、妾がそれを解いてやった」


私がハールメント王国内のある川で釣りをしている時にヴァルギスが迎えに来てくれました。その時にメイがヴァルギスを見て気絶している間に、ヴァルギスが洗脳を解いていたのです(第3章参照)。


「‥そうだったのね。確かに以前よりは、魔族怖いっていう気持ちはなくなったわ」


そうやって髪をいじるメイを横目で見て、ヴァルギスはさらに尋ねます。


「シズカを知ってるか?」

「ウィスタリア王国の王様の妃様のこと?」

「うむ。話したことはあるか?」

「パーティーでばりばり話したわ。貴族として、自分の売り込みは欠かしてはいけないものよ」

「そうか。‥話したら長くなるが、貴様を洗脳したのは、そのシズカという女だ」

「そう。今となってはあの国のこと信じられないからどうでもいいけど」


そう言って、メイはそっぽを向きます。

ヴァルギスは何か1つ新しいいたずらを思いついたように、メイの耳にそっとささやきます。


「メイ」

「何よ」

「妾とアリサが結婚したら、貴様はどう思う?」


それでメイはびくっと肩を震わせて、ばっとヴァルギスを見ます。フートに隠れて目は見えづらかったのですが、口角が上がっています。冗談にも感じられましたが、最近の2人の様子を見ているとあながち冗談とは言い切れません。


「アリサにも結婚の話はしてある。アリサの家族である貴様が賛同するか、知っておきたいのでな」

「うう‥確かにアリサが魔王と結婚したらテスペルク家の後継ぎが減るけど‥そこはいいんじゃないかしら。あくまで家長は姉であるあたし。アリサが何をしようがアリサの自由よ」

「それが聞けて嬉しい」


ヴァルギスはまた天井を見上げます。

しばらくの間があって、メイが疑問をヴァルギスにぶつけます。


「魔王はどうなの?いち貴族よりも、王族の後継ぎがなくなるほうがよっぽとの問題よ。それに同性婚って気持ち悪がる人も多いんじゃないかしら。こっちは人間の話だけど」

「うむ。魔族でもそういう風潮はある。だが妾とアリサが育んでいるのは真実の愛だ。そこに男女の別はない。むしろ、妾たちが同性愛の模範になるべきではないだろうか。それに後継ぎはハギスがおるし、最悪、分家もある」

「うう‥あたし、そっちの話は苦手みたいだわ」


メイは、はあっとため息をつきます。


「‥結婚の話はまだ確定でないのでな、あまり友を糠喜びさせたくない。今はまだ他には黙ってくれるか」

「分かったわ」


そうやってメイは雑に返事をした後、「暑くなったわ」と言って湯から立ち上がり、背の低い岩に座ります。


◆ ◆ ◆


私は湯船の真ん中あたりに集まってハギスやナトリと一緒にわいわい話していましたが、ふと後ろから視線を感じたので振り返ってみると、湯船の端にいるヴァルギスがずっと私を見つめています。


「私、ちょっと抜けるね」


2人に言ってから、私はそっと湯をかき分けて、ヴァルギスのほうへ移動します。


「どーしたの、まおーちゃん?」


ヴァルギスは私から視線をそらします。頬を赤く照らしていましたが、私はなんとなく、それが温泉で体が温まっただけのものではないのだと思いました。ヴァルギスは唇を噛んで、胸に腕を当てて隠しています。

私はふうっと息をつくと、「じっとしててね」と言って、ヴァルギスの伸ばした脚の上に自分の股間を乗せて、ヴァルギスの背中に手を回して、軽く抱いてあげます。


「‥‥っ、貴様」

「これはスキンシップだよ。女の子同士のスキンシップだよ」


ヴァルギスはフートローブで体を隠していますが、対する私はビキニなので露出度がとても高いです。その肌を、しっかりヴァルギスのフートローブにくっつけてあげます。


「むう‥」


ヴァルギスが少しむすっとしたので私は抱くのをやめて、手を離してあげます。


「‥まおーちゃん、私と体の関係まで行きたいって思ってるでしょ?」

「な‥なぜそれを‥」


ヴァルギスは頬を赤らめて、上目遣いで私を睨みます。ばつが悪そうにも見えます。私はそんなヴァルギスの頬をなでてあげます。ぷにっとしてて弾力があります。


「魔族は血の気が多いとか、結婚の話とかされたらそう思っちゃうよ。ていうか、私の方からキスしたら即開始って約束でしょ?」

「う、うむ、そうだが‥」

「今はまだ私、心の準備ができてないからキスできないけど、いつかきっとキスしてあげるから」


そう言って私はにっこり笑って見せますが、ヴァルギスはまだ納得していないかのように、膝を引っ込めて曲げて体育座りみたいな姿勢になって、私に尋ねます。


「いつかとは、いつのことだ‥‥?」


その質問をされて私はちょっと考えます。

自分の心の準備がいつ終わるか分からないけど、ヴァルギスのためにも期限は絶対あったほうがいいよね。


「‥‥ウィスタリア王国を滅ぼしてから1ヶ月以内に、2人きりになれる機会ってあるかな?」

「むう‥状況によっては難しいかもしれんが、貴様のためなら何が何でも作る」

「じゃあ、その時にしてあげる。ウィスタリア王国を滅ぼしてから1ヶ月以内に、私からまおーちゃんにキスしてあげる。それまで私、頑張って心の準備するから」


私はヴァルギスの両手を握ります。‥が、ヴァルギスはそれをすぐに離して、その手を私の背中に回してぎゅっと抱きます。


「‥これが貴様の皮膚の触り心地か」

「ち、ちょっと、まだキスしてないんだけど?」

「女性同士のスキンシップだ」


ヴァルギスは私が言ったことをそのまま返して、柔らかい手で私の背中を撫でてきます。

くすぐったいです。でもヴァルギスはフートローブで肌を隠しているので触れないです。ずるいです。


「ちょっとあんたたち、何イチャイチャしてるのよ。ここは公共の場よ」


湯から離れて岩に座っているメイが注意してきます。


「お姉様、これはただのスキンシップですから」


私は答えますが、メイは眉をひそめます。


「ただのスキンシップでそんなに長くは抱かないわよ」

「あ、言われてみれば‥」


私の返事とともに、ヴァルギスはそっと私の体から離れます。


「‥‥貴様の心の準備が終わるのを楽しみにしているぞ」

「それまでにまおーちゃんが私を好きでいてくれるよう、私も頑張るよ」

「うむ」


そうやって2人で、お互いに微笑みます。

そこで、変な間ができてしまいます。なんか話が続かないです。でも下手にスキンシップするとまたメイに止められますし‥‥。素直にナトリやハギスのところへ戻って話の続きをしましょうか、と思ったのですが、その時私の頭にふと1つの単語が出てきました。


「そうだ、アルプス1万尺って知ってる?」

「何だそれは、聞いたことないぞ」

「あっ」


そういえばアルプスって前世の地名でしたね。この世界にはないかもしれません。

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