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第148話 ルナに絡まれました

その会議が終わって、私はルナと一緒に幕舎へ戻ります。


「ルナさん、せっかくですし一緒に食事しませんか?」


私がおそるおそる尋ねると、ルナはうなずきます。


「OKよ」


その態度はどこかよそよそしいものでした。


「あ、あの、ルナさん、好きな食べ物はありますか?」

「オレンジよ」

「あ、あの、私も柑橘類は好きなんです」

「そう」


ルナは私の質問にちゃんと返事してくれますが、なんだか会話が続かない感じです。私と気は合わないのでしょうか。それでも私は頑張って、ルナに話しかけてみます。


「今日はいい天気でしたね、明日もきっと晴れますよ!」

「明日は曇りだと思うわよ、夕焼けが赤かったから」

「あ、そうですか‥‥」


頑張ってみましたがなかなか続きません。そうこうしているうちに、幕舎まで着きます。

たくさん話しかけたのに会話が続かなかった私は不安な顔をしてしまいますが、ぱんぱんと自分の頬をはたきます。そうしている間に、ルナは兵士に何か命令しています。

命令が終わったあと、私を呼びます。


「アリサ」

「あ、はい」

「一緒に食べようと言ったのはアリサでしょ?」

「はい」

「準備もアリサがしなさい。準備といっても兵士に命令するだけだけどね。今日は私がしておいたから」

「あ、はい、すみません」


なんだか気まずい感じです。というか私、誰かの上に立ったことはないから、兵士に命令するという発想がなかったです。一つ学びです。

兵士に通された幕舎には、2人分の料理がテーブルに並べられていました。私は、ルナが先に椅子に座るのを待って、自分の椅子に座ります。


「ん?」


なぜかルナの席には、酒がたくさん置かれています。


「ルナさん、酒はよく飲まれるのですか?」

「飲むわ」

「あ、はい」


また生返事でした。私はいよいよ不安になりますが、ルナが食べ始めるのを待ちます。しかしルナは真っ先に、酒を飲み始めます。瓶1つをラッパ飲みです。


「え、ええっ!?一気飲みは体に悪いですよ!」


女らしからぬその豪快な飲みっぷりに、私は思わず身を乗り出して突っ込みます。ルナは、どんと大きな音を立てて、空の瓶をテーブルに叩きつけます。そして、顔を上げます。

そのルナの顔は、幸せいっぱいの満面の笑顔でした。もう酔ってしまったのか、頬が真っ赤になっています。


「え、えーと、ルナさん?」

「はーい!ルナですぅー!」


ルナは陽気に席を立って、私の方へ回ります。そして、私の肩に手を回します。


「え、ええ、ルナさん?」

「アリサも飲んでぇ〜?美味しいよぉ〜?」

「は、はい、少しだけいただきます‥‥」


この世界には未成年飲酒禁止という法律もないのですが、私は前世のことがちょっと気になるので、コップに少しだけ酒を入れてちびちび飲みます。炭酸のはじけるような感じがして、辛い味がしました。


「それでねー!さっき好きな食べ物はオレンジって言ったでしょ?私はあの果汁が特に好きでね―!多い日は1日20個食べるのね!それで皮膚が黄色になって親に驚かれたことがあってねー!どう?すごいでしょ?」

「は、はい」


なんだかルナ、急に饒舌になりました。ルナは魔法で椅子と食器を動かして、私の隣に座ります。


「ねえ、アリサもオレンジは好き?」

「は、はい、柑橘類は好きです」

「でしょー?すっぱいとことか好き?」

「味はいいですよね、でもレモンは苦手です」

「わっかるー!それなー!」


さっきまで会話が続かなかったのが嘘みたいに、酒が入ると話も続いていきます。若干ギャルっぽいのが気になります。私は引き気味になりながらも、ルナの会話の相手をします。

ルナは終始陽気に私に語りかけます。酒を飲む時はいつもラッパ飲みです。


「そんなにたくさん飲まれると体に悪いです‥‥」

「えっへー、私ね、これのせいで彼氏ができないんだよお!女はそんなに酒を飲むもんじゃないって言われるのよ!ひっどくなーい?バリ病みきゅんぢゃなくて?」

「えっ、はい‥‥」


逆に私が答えに困っちゃうくらいに、どんどん話しかけてきます。

ああ、この人、酒を飲んでない時も飲んだ時も私の苦手なタイプです。

ルナはそんな私の感情などおかまいなしに私の体を頻繁に揺すったり、抱きついてきたりします。私は「はい、はい」と答えながら食事を続けます。


◆ ◆ ◆


翌朝。私は起きると、着替えてトンガリ帽子をかぶって幕舎を出ます。朝日が、東にそびえ立つ長城のまた向こうにある高い山から姿をあらわします。私が水場に洗面に行くと、そこではすでにルナが顔を洗っていました。


「あ、お、おはようございます、ルナさん」

「おはよう。あと、ルナ将軍と呼んだほうがいいわ」

「はい、ルナ将軍」


ルナはすっかり酒を飲む前の調子に戻っていました。

タオルで顔を拭くと、ルナは自分の幕舎に戻るべく、歩き出します。


「‥‥あっ」


ルナが立ち止まるので、私は尋ねてみます。


「どうしましたか?」

「昨日の命令聞いてた?9時までに食事を済ませて、私の幕舎へ来なさい。魔術師100人が集合しているはずだから、その中に入って命令をこなしなさい」

「はい、分かりました」


私の返事を聞くと、ルナはそこを立ち去ります。

性格は合わない気がするけど、命令はしっかりしてくれる、ちゃんとした将軍だと思いました。私にとってルナは先輩なので、いろいろ教えてもらって戦争にも慣れなければいけません。

頑張りましょう、私。


◆ ◆ ◆


30万の兵を率いるベリアたちウィスタリア王国の軍勢は、予定通りこの地へ辿り着きます。

陣から出て迎え撃つは、前陣と中陣の20万の軍勢です。それぞれが持ち場につき、広い荒野で、鶴翼の陣形で待ち構えています。

ベリアは家臣たちとこの日の作戦を話し合い、兵たちに指揮します。しかしこの作戦はラジカに筒抜けで、作戦が変わるたびに随時マシュー将軍のところへ行って報告しました。

マシュー将軍は自分の将兵を手足のように使い、巧みに操り、兵士を動かします。戦闘が始まって間もない頃、ウィスタリア王国の軍勢は敗走を始める小隊が出てきました。


「むむ、まるでこちらの作戦が筒抜けだ」


戦況を見て、ベリアたちはそう言います。ウィスタリア王国の軍勢はしわしわと後退し、ベリアたちのいる本陣に近づいてきます。


「我々も出よう」

「分かりました!」


ベリアは腹心の部下、ブエルノチャン・ホタリアに右翼と左翼の指揮を任せ、自分は中翼の先頭へ向かって馬を走らせます。そして、持っている七色の宝石をまとった刀で、虚を切ります。


「あ、ああっ!?」


前にいるハールメント王国の魔族の兵士たちが、次々と高くジャンプしたかのように跳び上がります。さっと見て10〜20メートルくらいの高さがあり、普通に落ちたら死んでしまいそうです。そのまま風にとばされて、後方へ落ちてきます。

私たちは重力魔法でゆるやかに落ちるようにします。あまりゆっくりすぎても、遠くから矢で狙われるため、人によって落下速度を速くしたり、遅くしたり、不規則な動きをさせたり、色々工夫します。


一方、ベリアの腹心・ブエルノチャン率いる右翼の軍勢には、剣と、剣ほどの長さをした茶色に塗られた木の杖をそれぞれ片手に持ったナトリが、馬を走らせながら敵陣に突っ込みます。

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