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第11話 領主様に呼び出されました(3)

私たちは一つの部屋に通されました。部屋の中央にある円卓テーブルの椅子に、私とまおーちゃんは座ります。領主様は私の向かいに座ります。

さっきからまおーちゃんが、周りをしろしろ見ています。


「どうしたの、まおーちゃん?やたら周りを警戒してるようだけど」

「いや、何でもない」


(洗脳の魔法がさっきより強くなっている‥‥この野郎、そんなに妾とこいつを引き離したいのか?)


私は領主様の用意したお茶を飲みました。まおーちゃんはお茶の匂いをかいただけで、口をつけていません。むしろ、お茶を渡される前よりも、領主様へ向ける顔がさっきより怖くなっているように見えます。


「まおーちゃん、さすがに失礼だよ‥‥?そんなに領主様のことが怖いの?」

「はぁ‥‥」


私の言葉に、まおーちゃんは頭を抱えている様子です。なぜでしょうか。


(狙われてるのは貴様だぞ、と言いたいところだが‥‥せめて魔力の流れにさえ気付いてくれれば‥‥)


「‥‥なあ、貴様」

「どうしたの、まおーちゃん?」

「何か‥魔力を感じないか?」

「ううん、別に感じないけど」


私はそう言って、紅茶にもう一度口をつけます。それすらもまおーちゃんは心配そうに見つめています。


(その茶にも、魔法防御力を一時的に下げる強力な薬が入っているはずだ‥‥問題はこいつがどこまで耐えられるかだが‥げっ、また洗脳の魔法が強化された‥‥)


「さて、話の続きだが‥‥」


領主様が、ここそとばかりに切り出します。


「私と魔王を2人にし」

「すみません、まおーちゃん体調悪いようですが、早めに帰ることはできますか?」


まおーちゃんがあまりにも落ち着かない様子なので、まおーちゃんのためにと思って、私は強めに言いました。


「う、うむ‥‥」


領主様は少し驚いた様子でしたが、すぐ笑顔に戻って手を組みました。


「私と魔王を2人にしてくれたら、今日の用事も早く終わる」


その言葉を待ってか待たないか、私の手に、びりっとしびれるような感覚が走りました。

そういえば、まだ5月、涼しさの残る季節のはずなのに、領主様はなぜかすでに汗びっしょりです。


(この野郎、洗脳の魔法を強くしすぎて自分も耐えられなくなってやがる‥‥)


まおーちゃんはそう思って、私の横顔を心配そうに見ます。一方の私はというと、そんな挙動不審のまおーちゃんを見て、もっと不安になっていました。


「やっぱりまおーちゃんが体調不良です。目を離すことはできません。日を改めていただくことは可能ですか?」

「う、むう‥‥」


領主様は少し考え込んでいる様子でしたが、やがてため息をついて言いました。


「‥‥分かったよ。今日は私の負けだ。このまま帰ってよろしい」

おもんばかってくださり、ありがとうございます」


あれ、私は領主様と何か勝負してたっけ?とは思いましたが、私はそのまままおーちゃんを連れて部屋を出ました。


◆ ◆ ◆


「まおーちゃん、失礼だったよ」


馬車の中で、私はまおーちゃんにそう言いました。

私はまおーちゃんのことが好きだけど、今日の振る舞いはまおーちゃんの立場を不利にしかねないものでした。そういう時には、さすがに叱ります。


「あの領主様は優しい方だったからいいけど、他の人だったら罰があってもおかしくないんだよ?」

「主権の及ばぬ者に刑罰など存在しない。それより貴様、攻撃されているのに気付かなかったのか?」

「もう!まおーちゃん、さっきからそればっかり。領主様が理由もなく私を攻撃される訳ないよ?」

「むう‥‥これは実演したほうがよさそうだな。今晩あたりに改めて説明させてもらおう」


まおーちゃんはそう言って、また窓の外を見ます。

と、馬車が止まりました。


「どうしたんだろう?」


そう思っていると、馬車のドアが開き、ニナが顔を出します。


「あっ、ニナちゃん!」

「窓から見えたよ、アリサ、帰りなら乗せてもらっていい?」

「うん、いいよ、乗って乗って」


ニナは私の横に座ります。馬車はまた動き出しました。


「授業休んでそんな立派な服を着て、どこか行ってたの?」

「うん、急に領主様に呼び出されてね」

「あら、あのお方、優しくて面白い方だよね」

「私も話すのは初めてだけど、そー思ったよ。ねえねえ聞いてよ、まおーちゃんがね‥‥」


そう言って私がまおーちゃんをちらっと見ると、まおーちゃんは、こちらの話は聞こえてないとも言わんばかりに、窓の外を眺めています。


「あ、あの、魔王の話はちょっと‥‥この馬車も狭いし‥‥」


ニナは密室で私とまおーちゃんと一緒にいることはできるみたいですが、まおーちゃんの話をするのはまだ怖いようです。


「大丈夫だよ。まおーちゃん、そんなにひどいことはしないよ!」

「そ、そうかな‥‥」


ニナはまだまおーちゃんを怖がっている様子です。私はしばらく考えて、こう言いました。


「ねえ、みんなまおーちゃん怖がってるよね。どうすれば怖くならないのかな?」

「え、えーっと‥‥」


まおーちゃんがちらっとニナを見たので、それでニナはぴくっと体をこわばらせます。


「あっ、今怖いって思ったでしょ?どういうところが怖いと思ったの?」

「え、えーと‥‥」


ニナは少し回答に迷っていました。


「‥別に何を言っても、後から襲うようなことはせんから安心しろ」


まおーちゃんが、ニナの考えていることを見透かしたようなことを言いました。ニナはしばらく、うーんうーんと唸った後、やっと口を開きました。


「が、外見‥とかかな?」

「外見?ああ、服とか?」

「そ、そんなところかな‥」

「ねえ、まおーちゃん、他に服は持ってないの?」

「使い魔として召喚された妾に、そんなものを用意する余裕などなかろう」


まおーちゃんは少しむすっとしています。


「うーん‥‥じゃあ、ついでだしまおーちゃんの服を買ってこうよ!」

「妾のか?」

「うん!まおーちゃんとお買い物デートするの!えへへ‥」

「そ、そうなんだ‥」


ニナが若干引き気味で言います。

初めてのデート!とは思ったのですが、実は私も自分で服を選んだ経験はあまりなく、かわいいかわいいまおーちゃんに似合う服といえば、‥‥私1人ではちゃんと選べるか自信がないです。今まで自分1人で服を選んだことはないのです。


「‥服を買うんだったら、あの人も誘ったほうがいいかな」


私がぼつりとこぼすと、ニナがおそるおそる聞いてきます。


「あの人って?」

「ナトリちゃんだよ」

「えっ‥‥うーん‥‥ナトリは確かにファッション好きだけど‥‥」


ニナは、まおーちゃんに聞こえないように、私の耳元にそっとささやきます。


「そのお買い物って、魔王も一緒だよね?」

「うん、そうだけど?」

「‥‥‥‥私もついてっていいかな?」

「いいよ、じゃあ4人でお買い物だね!」


ニナは顔をひきつらせながらもうなずきます。


「妾は同意していない。‥‥と言いたいところだが、妾もこの町には興味ある。案内してもらおうか」

「うし、おっけー!!早速ナトリを誘って明日買い物行こう!!」


はりきって腕を伸ばす私を、ニナが慌てて止めます。


「ま、ま、待って!ナトリにも、えっと、準備とかいろいろあるんじゃないかな?」

「えー、今日はともかく明日ならいいんじゃないの?特に荷物もないし」

「そっちの準備じゃなくて、えっと、心の準備、かな‥‥?」

「えーっ?心の準備ってなにー?」


私とニナのやり取りを聞いたまおーちゃんは、ふふふと笑って言いました。


「いつでもよいぞ。妾は嫌われるのには慣れておるからな」

もうこっちでは第46話まで進んでるのでアレですが、文章が回りくどいとか、分かりにくい表現が多いとかあれば遠慮なく教えてくだされば嬉しいです。

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