第1話 魔王を召喚しました
本作執筆にあたって、以下の作品を参考にしました。今後これらの作品を読まれる予定のある方、読んだことのある方はご注意ください。
・封神演義(小説/漫画:殷周伝説)
・史記
本作品は出来が良くないと私自身も思っているのですが、現在感想で酷評を多くいただき、私がそれを追認するような返信をしている状態でして、これ繰り返すとかなりメンタルにきます。
次回作の執筆に悪影響をきたしたくないので、大変申し訳ございませんが感想受付を停止させていただきます。
読者の皆様には大変ご不便おかけいたしますが、どうぞご了承ください。
次回作は本作の反省も生かして、話のテンポは悪いかもしれませんが全体的に少しましになってるかもしれません。
次回作は本作の続編で宇宙を霧台にした話ですが、本作の知識がなくても理解できると思います。(本作のネタバレは含まれます)
駄作か凡作かの違いですが、どうぞご覧くださいませ。
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私は、さっきあったことを一生忘れないでしょう。
その女の子は、土ぼこりの巻き上がった芝生の上で、しりもちをついて私を見上げて睨んでいました。
両耳には、羊のようなつのが生えていました。身長や顔の作りを見るに、私と同じくらいの年齢でしょうか。
「‥‥妾を呼び出したのは貴様か?」
「うん、そーだけど」
地面からふわふわ浮いている私が何気ない顔で返事をすると、その子はひざについた土をはらいながら、ゆっくり立ち上がりました。
「‥‥あっ、危ない、みんな逃げて!」
我に返った教師が、他の生徒たちに叫びます。生徒たちは、何が起こったのか理解できず、混乱している様子でした。
「アリサ!あなたも逃げなさい!」
「えっ?」
教師の命令を、私はきょとんとして聞いていました。
召喚した魔物ーーもとい女の子は、ふふふと不敵に笑いながら、私に尋ねました。
「この魔法陣は‥‥使い魔の召喚だな?つまり貴様は、妾を使い魔として召喚したのだな?」
「うん、そーだよ」
「そうか‥‥」
私が召喚した女の子の周りを、少しずつ黒い霧のようなものが包み始めました。
「アリサ!逃げなさい!いくらあなたでも、このままでは死にます!」
教師が叫びますが、私はじっと、その女の子を見つめていました。
「かわいい‥‥」
顔のパーツがきりっとしまっていて、美少女。身長も私と同じくらい。何か禍々しい衣装ですが、マントをつけているところが、か弱い女の子が必死で自分は強いとアピールしているようでかわいらしいです。2本のしっぽがぴょこぴょこ動いているのも、キュートでした。これは、ずっと一緒に付き添ってあげるしかありません。
私は一目見て、その子を気に入ってしまったのです。教師が何やら怒鳴っているようでしたが、私には聞こえませんでした。
周りの生徒たちは、悲鳴をあげてその場から逃げる人もいましたが、半数くらいは腰を抜かしてその場から動けないか、呆然と立ち尽くすかでした。
「あろうことか使い魔として召喚するとは‥‥この魔王ヴァルギスへの侮辱、万死に値する!」
その言葉とともに、ヴァルギスの周りの霧が無数の槍に変化して、私に襲い掛かってきます。
後で教師から聞いた話ですが、その魔法は高位の魔法使いが2人かかりでようやく受け止められるほどの威力だったそうです。
「危ないよ?」
私は、片手のひらで自分の周りに軽く結界を作りました。結界に当たった槍は、一瞬で光となって消えました。
「なっ‥‥」
ヴァルギスは少し驚いた様子でしたが、落ち着き払った様子で続けます。
「この妾の魔法を無詠唱で無効化するとはな‥‥だが、今のはただの前戯だ。これを防げる人間はいまい!死ね!」
再びヴァルギスの周りに黒い霧が現れました。それは増幅して、この空間を覆い隠します。
周りが夜のように暗くなりました。霧の壁のあちこちがピカッと光り始めました。それらは集まってくっついて、1つの大きな雷になって、私に向かってきます。
「まずい、逃げろ‥‥!!」
教師が震えた声で叫びました。
今までに感じたことのないような大きな風が巻き起こりました。何かが音速を超えたかのような大きな音が響いてきます。
これも後から教師に聞いた話なのですが、私でなければ確実に死んでいたそうです。
「な、っ‥!?」
ヴァルギスは言葉を失った様子でした。
私は、その雷と同等の電気を出して、それを相殺しました。雷は虚しく叫ぶ龍のように儚く散り、黒い霧も晴れていきました。
「‥‥これも効かぬのか、ならば!!」
ヴァルギスは少々焦った様子で、地面に手をかざして何やら呪文を唱え始めました。地面に大きな、真っ黒の妖しく光る魔法陣が出現します。
詠唱には少し時間がかかるようだったので、私はふわーっと魔法陣の真ん中のヴァルギスのところまで飛んでみました。
「ヴァルギスちゃん、初めまして。私の使い魔になってもらえますか?」
そっと、ヴァルギスに右手を差し出しました。
ヴァルギスはそれを一瞥して少し詠唱を続けたあと、口をつくんで私を見上げました。ヴァルギスの周りに発生していた魔法陣が消えていきます。
「き、貴様‥どうやって妾の魔法陣に入った!?」
「どうやってって、普通に入ったよ?」
「そんなはずはない、妾の魔法陣には、妾以外誰も入れない強力な結界を施しているというのに‥‥!」
「あれ、そういえばなんか結界があったから破っちゃったね、だめだったの?」
私が尋ねると、ヴァルギスはしばらく考え込みました。
(こ、こいつ、純粋な目をしやがって‥‥闘志が全く感じられない。この妾を目の前にして何を考えている?
それよりも‥妾の魔法を2回も弾き、局地破壊魔法の詠唱まで邪魔された‥‥こいつ、なかなかの使い手だ。
そもそも使い魔召喚は、召喚者と同位か格下の魔物しか召喚できない。妾が誰かより格下ということはないから、こいつは妾と同位ということか。だとすると、三日三晩の死闘は避けられないだろう。
妾も気を抜いていたところをいきなり召喚された。戦闘準備ができているとは言い難い。ここは、一旦こいつに従って隙を見て逃げるべきか‥‥)
「‥‥わかった。貴様の使い魔とやらになってやろう」
ヴァルギスは、私が差し出した手をぎゅっと掴みました。
「ただし‥貴様が妾の主に値しないと判断したら、妾はいつでも貴様のもとを離れて帰るぞ?」
(よし、これで逃げる言い訳は作っておいた。今夜にでも逃げよう)
そう言って、地面から10センチくらい宙に浮いている私の顔を見上げるヴァルギスは、また不敵な笑みを顔に浮かべていました。
その、華奢な体から出てくる表情は、なんとも愛おしいものでした。
私は正直、使い魔という地位は単なるアクセサリーのようなものだと思っていて、主従関係など特に考えていません。私にとっては、対等な仲間なのです。使い魔ができたその時、その瞬間から、新しい友達が増えたと思って、私はヴァルギスの体をぎゅっと抱きしめました。
ヴァルギスが逃げようとしていることなどは、これっぽっちも考えていません。
「お、おい、貴様、くっつけとは言っておらん!離れろ!」
「わあい、素直じゃないところもかわいいよお!」
初対面の人にするのは変だったかもしれませんが、私はヴァルギスの頬に、自分のそれをすりすりとこすらせました。
「離れろっ!」
ばちっと私の頬に電気が走ります。痛かったので頬を離すと、ヴァルギスは頬を手で覆い隠しました。
テレているところもキュート。萌えポイントきゅんきゅん上がりまくりでした。
周りの生徒達や教師は、呆然として、私とヴァルギスを遠巻きに眺めていました。
この時は誰もが予想していませんでした。
私と魔王ヴァルギスが手を組み、人間の王国を滅ぼし、この世界を救うことになるとは。