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No.49 大魔法

 前半はサトゥール視点です。途中からマユ視点に戻ります。

 マユが由美子を助けるために、僕達の制止を振り切って転移していった。マユはレニーちゃんを助けた後に魔力を回復してはいたが、由美子めがけて転移して来ることを想定しているはずのミナトが、あの強力な反魔法で迎え撃とうとするのは明白だから、魔力残量の問題ではない。それを伝えようとしたのだが、マユは聞く耳を持たず行ってしまった。


 『マユっ! おとうさんも今行くからね・・・っ、ぐえっ?』

 「悟くん、何でマユのこととなると、そんなにアホになるかなぁ?」


 ユリが文字通り僕の首根っこを掴んで引き留めた。


 「いくらヤ●ザでも、自分の娘の親友をすぐに殺そうとはしないわよ。たとえスティードがそう命じたとしても、ミナトさんの力が悟くんの言った通りなら、マユちゃんを無力化するなんて簡単でしょうから、その必要もないはずだし。」

 『そうか・・・ そもそも人質を取られて仕方なく従っているなら、マユの力を使って人質ごと日本に送るなんてことも考えるだろうし、悪いようにはならないか。』

 「そうなると、スティードの次の手に備えなければならんな。マユがいつ戻るかわからん以上、其方の力が重要になる。そういう意味でも、行かせるわけにはいかんぞ、サトゥールよ。」


 確かにそうなんだけど・・・ だが、スティードの次の手って、いったい・・・


 「サトゥールよ、さっきあっち(ラドルエ)に飛ばされた時に、あのミナトとかいう女が使っていた、反魔法を付与した土魔法だが、私の記憶が確かなら、あの魔法こそ、ラドルエを海底から浮上させた大魔法だと思うのだが?」

 『ソフィア、そりゃ本当かい?』

 「リリー、お前ならわかるだろう? そもそもラドルエが沈んだのはアルベールの大魔法によるものだ。いくら大地を国境に沿って分断したとて、それだけでは海の底に沈んだりはせんだろうよ。」

 「・・・それって、お師匠様の魔法が、そのミナトという女に破られた、そのせいで、お師匠様は消えてしまった、そういうことなの?」


 リリーが、怒りに満ちた表情で、ソフィアを見た。


 『でも、ミナトは確かに日本人だし、2~3日前にはまだ日本にいたわけで、ラドルエの浮上に関われるわけがないよ。確かに浮上したのがその大魔法によるものでも、それをあのミナトが発動したとは考えられない。』

 「たまたま偶然、そういう力を得た、ということでしょうね。だからこそ、スティードに気に入られて、そばに置かれるようになったってところかな。」

 「サトゥール、これは私の推測に過ぎないのだが・・・ おそらくスティードはラドルエ、いや、さすがにそれはないか・・・」

 『ソフィア?』

 「王宮ぐらいなら、半日もあれば構築できるやも・・・」

 『ま、まさか、ラドルエの王宮ごと、転移しようとしている、と言うのかい?』

 「そう、何故奴らがわざわざ危険を犯してまでここにやってきたのか? それはネオリクの王宮の位置を特定するためだと考えられないか?」

 『あの先生・・・ゼノアスを目印に転移すればいいだけなんじゃ?』

 「それだと我々だけでなく、ゼノアスも無事では済まないからな。ゼノアスを回収するつもりもあったと思うぞ。あっさり引き下がったのは、ゼノアスが消えてしまったから、ということもあるのかもしれない。」


 そうか、ラドルエの王宮でネオリクの王宮を押し潰せば、国王以下、要人は軒並み無事では済まないだろうし、たとえ上手く逃げ出せたとしても中枢部を押さえられてしまうだろう。今は眠っているが、近くまで来ている1万の軍が国民に対する恫喝にもなるし、それこそ、北の海岸付近を与えて治外法権を認めるなんてレベルの話じゃない。ネオリクが壊滅状態に陥ってしまう。


 『ソフィア、その推測通りだったとして、どうすればこちらの被害を回避できる?』

 「どれだけの準備をしていたのかにもよるだろうが、反魔法を付与した土魔法で覆われたラドルエの王宮が転移してくるとなると、こちらも同じ程度の反魔法を展開しないと押し負けるぞ。だが、そんなことができるのは・・・ お前と娘の二人がかりでも厳しいかもしれん。」

 「ソフィア様、コーザでは?」

 「コーザは自分が認識できない魔法は打ち消せない。転移してくるものには通用せんだろうよ。」


 推測とは言え、とんでもない話になった。だが、王宮が潰されたとしても、要人たちが生きていれば何とかなる可能性もある。スティード達も大魔法を駆使した直後では応戦もままならないだろうから、被害の出ないうちに避難させてしまえばいいのだ。 


 『陛下、一旦ここを出ませんか? 王宮を放棄するみたいで心苦しいのですが、ソフィアの推測が正しかった場合、我々は陛下をお守りすることがおそらくできません。』

 「うむ・・・ これ程までに後手を引かされた上、王宮から逃げ出すなど屈辱以外の何物でもないが、今は仕方がないわな。だが、どこへ行く?」

 『扉の間では? 少々手狭ではありますが。』

 「承知した。それで、もしマユが戻ってきたらいかがする?」

 「マユ様には怒られてしまうかもしれませんが、ボクの血を飲んでいるから、ボクの力で連絡はできると思います。」

 『リリー、もしかして、マユの魔力回復だけが目的じゃなかった・・・ってことはないよね?』

 「や、やだなぁ、サトゥール様、そんなことしたらボク消されちゃいますよ。あくまで、非常時の対応ということで・・・」


 なんか目が泳いでるが、まあ、そういうことにしておこうか。

 だが、リリーが呼びかけても、返事はないみたいだ。何かあったのかもしれない。


 「いくら反魔法が付与されていても、ボクの力には干渉しないはずなんだけどなぁ・・・ とすると、気絶している?」

 『やっぱり僕が行かないと・・・』

 「大丈夫だと思いますよ。さすがに殺されたりしたらわかりますしね。」


 フォローになってない気がするけど・・・

 まあ、戻ってきて誰もいないとなれば、僕をめがけて転移すればいいだけだから、マユなら問題はないね。


 「まあ、誰もいなかったら、きっと私かレニーちゃんめがけて転移してくるわよ、きっと。」


 ・・・ユリさん? そんなことないよね?


     *     *


 由美子を連れて、ネオリクの王宮に転移したが、そこはもぬけの殻だった。王宮の外で襲撃に備えていた加藤・・・もとい、カトゥーさん達もいなくなっていた。


 「マユ? ここどこ?」

 「ネオリクの王宮だよ。ごめんね、由美子。美奈子さんは日本に逃げろって言ってたけど、わたしには両親や()を見捨てるなんてできないよ。由美子だけでも日本に戻すのも今は難しいから、しばらくは一緒にいて欲しい。大丈夫、由美子のことはわたしが絶対に守るから。」


 由美子がわたしを抱き締めてきた。


 「俺、かっこ悪いな。本当なら俺がマユを守るって言わなきゃいけないのにな。」

 「魔法を覚えたばかりじゃ仕方ないよ。それに、どうしても帰るって言うなら、手段がないわけじゃないよ。」

 「いや、それはない。覚えたてには違いないけど、俺が使えるのは火魔法なんで、吸血鬼どもには有効だろ? 守られてばかり、なんてことには絶対にならないから、むしろ一緒に戦わせてくれっ!」

 「もしかすると、由美子のおかあさんと戦うことになるかもよ?」

 「お袋は火遊びとか言ってたけど、俺だってそれなりに修羅場は潜っている。立ち塞がるなら、お袋だって容赦はしないよ。」


 迷いはないみたいだ。


 「わかった。それじゃ由美子、あらためてよろしく。」

 「おうよ!」

 「だけど、由美子って呼ぶの、やめた方がいいのかな? 見た目は昔から男の子みたいだし、今は普通に男言葉を使ってるから、とても女の子には見えないしねぇ・・・ わたしも、ゆーくん、て呼んでもいい?」

 「うーん・・・ なんか締まらない感じだけど、マユがそう呼びたいなら構わないよ。」

 「じゃ、ゆーくん、あらためてよろしくね。」

 「・・・なんか照れくさいな。」


 由美子・・・いや、ゆーくんは顔を真っ赤にしてわたしを見ていた。

 ゆーくん(由美子)と一緒にネオリクの王宮に転移してきましたが、既に皆は逃げ出した後でした。転移を使いまくったせいで、魔力残量が心配ですが・・・?

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