No.3 後始末
3話目になりますが、まだ「異世界」にはたどり着けません。(^_^;
このままだとタイトル詐欺になってしまう・・・
頭からカレーをかけられた・・・ こんな経験したことある人って、そうそういないだろう。いい経験をした・・・な訳あるかいっ!
これはシャワーでも浴びないとダメだろう。せっかく着替えた服もカレーまみれなので、できれば洗濯したい。しかし、そんな都合よくいくだろうか?
冷静にこれまでのことを思い返してみると、灯りを点けたこと以外は、まず、失敗から始まっている。水を飲もうとして頭からかぶるは、乾かそうとして熱風に曝されるは、極めつけは「頭からカレー」だ。服やリュックを呼び出せられたのは水の失敗があってこそだから、最初からうまくいったことなど無いと言ってもいいくらいだ
そう考えると、シャワーなんか出そうとしても、適温のお湯が出てくるなんて考えにくい。ただの水だったらまだいいが、熱湯だったらシャレにならない。わたしは、しばらく魔法の発動は控えることにした。
もちろん理由はそれだけではない。今点いている光だってわたしの魔法なんだから、わたし自身の魔力みたいなものが尽きれば消えてしまうだろう。そして、いつまでもつのかはわたし自身にもわからない。
「ステータス画面とか、あるといいのに」
いくらイメージしてみても、そんな画面は出てはこない。体力がなくなればめっちゃ疲れるが、それと同じで魔力切れが近づくとなんかしらのサインみたいなものがあるかもしれない。そういう意味で言うなら、まだ大丈夫そうだ。
「とりま、これ、なんとかしなきゃ」
わたしは、タオルを何枚かと水の入ったバケツをイメージして呼び出し、タオルに水を含ませて身体にかかったカレーを拭き取った。服はあとでなんとかすればいいやと、濡れたジャージと一緒にビニール袋に入れリュックに詰め込んだ。当然、別の着替えも出してある。
「やっぱり拭き取るだけじゃ、まだカレー臭いわね」
まあ、まだカレーだからよかったかも。これが大量の納豆だったら・・・あぶない、あぶない、またやらかすところだった。
今度は普通のカレーライスをイメージして、ようやく食事にありつけた。こんな目にあってもなお、カレーライスを食べるんかい・・・いいでしょ、別に。(笑)
* *
通路の壁を背もたれにして座り、ぼんやり上を見る。光は照度を上げてからずっとそのままで消える気配はない。ここに入ってから2時間は経ったが、迎えに来るようなことを言っていた父は未だに来ない。まあ、わたしを連れ去ろうとした男達がまだ近くにいて近づけないのだろうから、仕方がないのかな。
まあ、変なことをしなければ、水や食料はなんとかなるし、通路の自浄作用のおかげで(行き先がものすごく気になるが)いわゆる生活排水もなんとかなる。モンスターはおろか、虫一匹いないのだ。わたしの魔法が尽きない限り、こんなに引きこもりに適した場所はないだろう。・・・とは思ってみたものの、やはりスマホが圏外というのは困るし、そもそも魔力が尽きたらどうなってしまうのか?
光が消えて真っ暗になったとしても、寝れば魔力が回復するなら寝てればいい。だが、回復しないかもしれない。そうなったらもうどうしようもなくなる。やはり、光が消える前に一度ここから出た方が良いかもしれない。
そうなると、入ってきた扉は内側からは開かなかったので、最初の予定通りに反対側の扉を目指すしかないようだ。わたしは立ち上がり、反対側を目指して歩き出した。
・・・ちなみに、カレーを拭いたタオルや水を入れたバケツは、水を流した後、リュックに入れた。ついでに食べ終わった食器やコップなども同じで、汚れた水だけを通路に処理してもらった。水がどこに流れていく(?)のかがわからず、自分の部屋につながっている可能性を否定できないので、通路に処理してもらうのは必要最低限にするしておくほうが良いと考えた。
「この通路って、やっぱり異世界とかにつながっているんだろうね?」
壁1枚しか隔てていなかったはずの、父とわたしの部屋の間にあった扉だ。この中自体が既に異次元だし、魔法の発動、通路の自浄作用・・・これだけでも、反対側の扉の向こうが現実世界ではないと言い切る根拠になる。
「しかし、異世界に行くのに、なんで濡れた服やら、使い古しのタオルやら、使用済みの食器を持って行かなきゃならないの?」
もし、相方がいたなら、「それ全部、あんたのせいやないかーい!」と突っ込んだに違いない。
次回、ようやく「異世界」にたどり着きそうです・・・たぶん(笑)