32話: 告白・最悪で最高の結末
中野先輩は白銀先輩が好き。
僕は黒岩という2年生と中野という3年生から白銀結衣を奪わなければならない。
部活に入ったから会話はいくらでも出来るんだけれど、アプローチをどうしていけばいいか。
いきなりぐいぐい詰め過ぎてもかえって引かれるだけだろうし。
よし、ここはやはり彼女の力を借りるとしよう。
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「ねぇお母さん。少し女の子らしい質問をするんだけど、いいかな？」
「なに、どうしたの琴葉。」
私の悩み、照くんの事。自分では結論を出して行動に移す事がほぼ不可能だと分かったので、先人の知恵にあやかることにした。
最初は友人に質問をしようとしたが、内容が内容なためそれはヤメにした。
「恋愛相談、ちょっと聞いて欲しいんだ。」
「はいはい、いいよ。聞いてあげる。」
「ありがとう。あのね、これは例え話なんだけどさ。もし好きな人が居て、その人に別に好きな人ができて片思いをしている。そして自分はその人の恋愛を手伝う事になった。お母さんはどうする？」
例え話という事にして、あまり詳細は語らないようにした。
「それは大変な状況だ、精神ズタボロになっちゃうね。私なら、そうだなぁ....。」
母は少し悩んでから言葉を続ける。
「最初はそれとなく小出しでアピールするけど、結局あんま効果ないんだろうね〜。最終的に当たって砕けろで突撃するかも。」
「でも、絶対に失敗しちゃうよ。その人との関係だって終わらせたくないし....」
「まぁ失敗するだろうね。ただ、そうじゃなきゃいつかメンタルが壊れちゃうよ。人ってそんな強くないから、琴葉は子供だしね。それでおかしな事をしちゃう方がマズい。」
「おかしな事？」
「包丁持って相手を.... みたいな。」
「そんな物騒な事、しない。」
「それが分からないのよね〜、どうなるかなんて。でも、今辛いでしょ？長引かせるのはオススメしない。終わらせなきゃ。」
「うん...。」
「自分の気持ちを伝えなさい、最悪の結果には絶対にならない。保証する。」
「わかった....。うん、それが一番いいね。自分でもわかってたんだけどさ、自分の負けを認めるみたいで嫌だったんだ。それでどんどん苦しくなって、」
「恋というのは最初から答えはほぼ出てる。あとは立ち回りなんだよ。」
「ちゃんと終わらせるよ。勇気が出た、ありがとうお母さん。やっぱり長年生きてるお母さんは説得力があるよ。」
「？それは私がおばさんと言いたいのかな？？」
お母さんはもうおばさんだよ。とは言えなかったので適当にはぐらかして自室に戻った。
「あれ、照くんから不在着信きてる。」
多分いつもの相談事だろう、いつもなら電話で済ませるが自分の事もある。
「ちゃんと顔を合わせよう。」
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「昨日電話が出来なかったから学校で直接会おう。言いたいこともあるし。」
琴葉からのメッセージだ。言いたいことってなんだろうか。
とりあえず放課後教室に迎えに行き、帰りながらでも話そうかという話になった。
「迎えにきたよー、帰ろう照くん。」
「あぁ、了解。」
そんな訳で今は帰り道。琴葉の話したい事について聞いてみる事にした。気になるし。
「そういえば琴葉の話したい事って何？まずはそれから片付けよう。」
「ちょっと重苦しい雰囲気になるかもだけどいい？」
重苦しい雰囲気、なんの話をするんだ....
「いいよ別に、話して。」
「照くん、一回白銀さんを諦めそうになった事あったでしょ？」
恐らく、映画館で黒岩と白銀が2人で居るのを見た時の事だろう。
「あれか、あの時は助けてくれてありがとう。」
「うん、それはいいんだ。私あの時ね、諦めちゃえって思ったんだ。このままの駄目な照くんでいて欲しいなって。」
突然この子は何を言い出すんだろう。
よくわからない。
「えっと、どういう事なのかな。理解が追いつかないんだけど。」
「私、照くんの事大好きだったんだ。意識し始めたのは中学の頃から。」
衝撃の告白だった。今までそんな素振り全然見なかったのに、さらに理解が追いつかない。
「そう、なんだ。....あー、ならどうして協力なんて、琴葉辛かったんじゃあ、」
「うん、辛かったよ。だから今こうして打ち明けたんだ、後押ししたのはお母さんだけど。」
「でも、今までそんな素振り無かったじゃない。僕からするとすごい急で、よくわからない....」
「照くんは鈍感だなぁ。わざわざ幼馴染みっていうだけで他クラスの男子と一緒にお昼ごはんを週一で食べるお人好し、そう居ないって。」
琴葉は声が震えていた。いつもの感じを装おうとしているのだろうが、それも限界らしい。
「じゃあ、僕が今まで見過ごしていたせいで琴葉は..」
「やめて。それは違うの、照くんにそんな罪悪感を抱いてほしくて言ってる訳じゃない。踏ん切りつけないとさ、ね？」
「でも琴葉、今泣いてるじゃないか。」
本人は気付いていないのかもしれないが、彼女は今泣いている。辛いんだろうな....
すると、彼女が両手で僕の二の腕の部分を掴んできた。
「どうすればいいかわからなかった。ずっと気持ちを隠してアドバイスをしてたんだよ、私。」
琴葉.....
「ごめんね、多分君の重荷になるような事を言ってるんだと思う。ごめん、、ごめん。」
僕は涙を流す彼女を見るのが耐えられなかった、だから、抱きしめた。強く。
「重荷なんて言わないでよ、自分の気持ちだろ？」
琴葉は僕の行動に驚いている様子だった。
「確かに僕は琴葉の気持ちを受け取れない。白銀さんと付き合いたいってのが僕の気持ちだから。」
ただ... 僕は言葉を続ける。
「僕の前から姿を消したりなんてのは許さない。そんな理由で居なくならないで、最後までアドバイザーで居てよ。」
最後までアドバイザーで居ろ。これは彼女からしたら辛い事を言っているのかもしれない。
でも、今まで一緒にいた幼馴染みが僕の前から消える。それがとてつもなく嫌なのだ。
「酷いよ照くんは.... でも、わかった。絶対白銀と付き合うんだよ、最後まで私はアドバイザー。それでいいんだよね？」
「うん、それでいい。僕の相談は今度にしよう、今日はお互い、ね？」
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最悪の結末にはならない。
こう母は言ったが、これは最悪な結末だ。
私に最後までアドバイザーで居てくれだなんて言われちゃった。
ただ、照くんは私が離れる事を嫌がった、許さなかった。
「本当に照くんは酷いや.... 」
でも、私以外の人が見ればこれは最高の結末なのかもしれない。
最悪で、最高な結末。
これは照くんに白銀さんをゲットしてもらわないと困る。その為に私も精一杯応援しなきゃね。
奇跡の三本投稿。
書きだめとかしてないのでそこそこ大変ではありました。
