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29話: 手紙・伝わる気持ち

6月も終わり、現在は7月。夜なんかは暑くてたまらないが二週間後には夏休みが控えている。

文化祭なんかよりも楽しみな行事であり、それを楽しみに毎日を過ごす、、、はずだった。

俺には心残りがある。

それは、白銀結衣との関係を修復すること。

夏休みに入ってしまえば彼女と会う確率はほぼゼロで、家は知っているが突撃する訳にもいかない。

ここが彼女との関係が続くかのターニングポイントだろう。 どうしたものか....


「今日は休日なんだがな。」

最初に口を開いたのは七原、それに鏡が言葉を返す。

「来ちゃった、家あがらせて。」

「なんだその彼女面した女みたいな言い方... 俺の部屋ならいくらでも。」

俺と鏡はアポ無しで七原の家へと押しかけた。

流石に迷惑かなとも思ったが、今許可が下りたのでそこは気にしなくて済む。

「それで、黒岩もいるのか。」

「よお。」

「事前にPINEでメッセージ飛ばすなりしろ、割と驚いた。」

そうですよね、すいません。

「んで、黒岩が居るって事は白銀さんだな。」

「あぁ、もうそろそろ夏休みに入るだろ?それで....」

俺は七原に事情を説明した。

「えっ、そんな事態になってんの!?やばいな黒岩。」

鏡は今の説明を聞いてたまげている。そこまで驚かなくてもいいだろうに、彼らしい。

「あぁ、まあそうだろうな。実は俺もそれは懸念していたんだ。黒岩が言った通り、ここが分岐点だと思うよ。」

「それで、もう時間があんまし無い訳なんだけどどうすればいいか打開策が見えない。協力してくれ!」

俺は七原と鏡に頭を下げる。

自分1人の頭では何も浮かばない。白銀さんとの接点を作ったのは自分だが、距離を近づけてくれたのは彼らの助力も大きい。

「頭を上げてくれよ黒岩、俺たちは同盟の関係だ。協力なんていくらでもするって。」

「そうだな、お前ら忘れてるかもだけど一応俺テストでも学年トップなんだ。黒岩、大船に乗ったつもりでな、任せろ。」

改めて、友達のありがたみを実感した。

とてもあったかい。


「そしたら作戦たてるぞ。黒岩、まずは彼女との行動。どこに行ったとか、あとは何かもらったとか。」

「行ったに関しては映画館と喫茶店じゃないか?黒岩事だしそれ以外は行ってないと思う。」

鏡... 合ってるけどなんかバカにされてる気がする。

「鏡の言うので合ってるよ、悔しいけど。あと、これをもらった。」

俺は彼女、白銀さんからもらった万年筆を2人に見せた。

「ん? 黒岩、なんだこれ。」

あれ、鏡さん?もしや、万年筆をご存知でない?

「鏡、説明面倒話が脱線しそうだからスマホで万年筆って検索してくれ....」

「おう、任せろ。」

何が任せろなんだ...

鏡ってなんで高校入れたんだろうか。

「にしても万年筆か、俺は正直白銀さんの感性がわからないよ。まるで出世したパパへのプレゼントだ。」

パパへのプレゼント、言わんとする事はわかる。

でも、これでも白銀さんからもらったものだ。とても嬉しい。

「でも、好都合かも。黒岩、それで手紙書いてみろ。」

「手紙?」

なぜ手紙なのだろうか、わざわざそんな事しなくても今はメッセージなどで済む。

「手紙だよ。今のネット時代じゃ、みんなメッセージなんかに慣れてるからな。そんな中手紙なんて書いてみろ、言葉の重みが違ってくる。」

「なるほど、確かに一理ある。でも、一体何を書けばいいのか...」

手紙、実際書いたことなんて指で数える程しかない。

上手く書けるだろうか、不安だ。

「何、怖がる事はない。気持ちだよ気持ち、自分の素直な感情を書けばいい。拒絶されたことへの悲しみ、一緒に居た楽しさ、まるまる全部言葉にするんだ。」

「...やってみるよ。」

「おっ、固まったか?俺何もしてない気がするけど。」

「鏡、お前はそこにいるだけでもだいぶ違うぞ。言うなれば、マスコットみたいな?」

「うげ、俺マスコットかよ!」


その後、方針も固まったので俺と鏡はそれぞれ家に帰った。

「さて、自分の気持ちを... 素直に」

カードリッチをペンに押し込み、万年筆が使用できる状態にした。

「筆圧が難しいらしいんだよな、、ちょっと練習しよ。」

試しに紙に色々と書いてみた。最初は上手くインクが出なかったが、慣れてくるとサラサラ書けて気持ちいい。これならいける。


「白銀さん、こんにちは。顔を見たくないと言われてしまったので手紙を書きました。馬鹿にしている訳ではないのでどうか怒らないで読んでください。」

出だしはこんなものでいいだろう。

「最初に白銀さんに会った日、俺はあなたのピアノに導かれて音楽室へと誘われました。あれは偶然音が聞こえただけで、その偶然が無ければ白銀さんとの関わりは無かったと思います。」

ピアノを弾く彼女の姿が浮かんだ。

とても綺麗でその姿はまるで天使、一瞬で恋に落ちた。

「一緒にお茶をしたり、映画館に行ったり、それはとても楽しかった。色んなお話をして、色んな一面が見れた。」

今までの日常ではありえなかった日常。

つまらない自分の世界を変えたいと願ってから、それは叶いつつある。

彼女が俺に与えた影響は計り知れない。

「だから、悲しい。顔も見たくないなんて言われた時は本当に辛かった。でも、白銀さんの前で泣きたくはないから我慢した。」

家に帰ってからは何も出来なかった。

それと同時に、人間同士の関係の崩れやすさも知った。簡単に、つまらない勘違いでボロボロになる。

「それで、手紙じゃ書ききれないのでもし白銀さんさえ良ければ、今度会いませんか?これを読んで、その気になったらメッセージを下さい。いい返事を期待しています。」

これでいいだろうか。

文章もめちゃくちゃになっているかもしれない。でも、これには心が篭ってる。

俺の気持ち、彼女に伝わるといいな。

後はどうやって渡すかだけど、、下駄箱に入れるのは周りの目が怖い。

少し距離はあるが直接ポストに投函しに行こう。

俺は外出の支度をし、家を飛び出た。






珍しく二話投稿。

今は黒岩くんつよつよムーブですが、これからの他の2人の動きにも期待してください!

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