22話: グッバイ・この関係に終止符を
私はここ最近、黒岩くんの事で頭がいっぱいになっていた。
頭がいっぱいと言っても、好きでたまらないという訳ではない。彼が、私とどこかへ出かけるために演奏を褒め、近づいたという事実を受け入れたくないのだ。
黒岩くんは今までに無い接し方をしてくれた。
だから、彼を信じたい....いや、「信じたかった」と言った方が正しいだろう。
「明日、ちゃんと言おう。私の気持ちを伝えて、関係を終わらせる。」
私はそう決意した。
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「黒岩くん。今日は演奏はしないんですけど、とりあえず音楽室に来てくれませんか?」
白銀さんからのメッセージ。
また俺は彼女に呼び出された。
プレゼントの次はなんだろうか。少し期待を膨らませ、俺は音楽室へと急いだ。
「白銀さん、お待たせしました。演奏ではない用事ってなんですか?」俺はそう尋ねる。
「あ、来ましたか。ふふ、ここで貴方が突然入ってきて、ピアノを聴かせてと言ったんでしたっけ。結構最近の事なのに、懐かしく感じちゃう。」
なんだ?白銀さんは何を俺に言おうとしている?
「あの、話が見えてこないんですけど....」
俺がそう言うと、彼女はこちらを見て口を開いた。
「単刀直入に言います。もう黒岩くんに演奏をする事は金輪際ありません。ごめんなさい。」
「そうですか。....って、え!?」
今なんて言った?もう俺に演奏してくれないのか!?
「えっ、何かあったんですか。教えてくださいよ、もし俺に手伝える事なら...」
「手伝える事はありません。この関係が終わるだけ。」
俺の言葉を彼女が遮る。
この関係が終わる。なんで、どうして、
「どうしてそんな急に、納得出来ません。何があったか位は教えてくださいよ。」
あまりにも急すぎる出来事に動揺を隠せない。
これからもっと仲良くなっていこうと思っていたのに...
「私ね、黒岩くんの事信じてたんだ。それに、ちょっといいかもなとも思った。でも、嘘だったんでしょ、全部。私のピアノを褒めてくれた事もそう。」
「違う。もしかして、この前俺が白銀さんとお茶する為に〜みたいな話をしたせい?あれは言葉の綾で....」
「もういい、呼び出して悪いけど、出て行って欲しい。顔も見たくない、本当にごめんね。」
「そんな、引けませんよ。そんな事言われたら。俺の言葉が嘘だって?冗談じゃない。流石に怒りますよ、俺。」
彼女は無言だ。
「それで顔も見たくないだなんて、なんでそんな悲しい事....」
「帰って欲しい。」
「....わかったよ、帰ればいいんだろ。」
俺はそう言って音楽室を後にした。
.....もう白銀さんのピアノを聴く事が出来ない。会えない。そんなのは嫌だ。
クソ、俺が軽はずみであんな事言わなければ....
調子に乗っていた自分を恨む。だが、恨んでばかりではどうしようも無い。どうにかして、彼女との関係を修復しなければ。
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「ごめんね、黒岩くん。」
彼が立ち去った後、私は泣いていた。
しばらくはピアノを弾けなくなってしまうだろう。
鍵盤を見ると、どうしても彼を思い出してしまうのだ。ヘンテコな感想や拍手、微笑みを。
自分で関係を終わらせたのに、未練たらたらじゃん、私....
仲の良い人との繋がりを切るというのはとても苦しい。
しかし、こうでもしなければ前に進めない時だってある。今がその時だったというだけ。
そう自分に言い聞かせて、少しでも悲しみを減らす事にした。
だって、こうでもしないと胸が張り裂けてしまうから....
最近ぽかぽかしてきましたが皆様はいかがお過ごしでしょうか?私は家でゲームをしてます。
1500字程度で読み応えが無いとは思いますがキリの良いところで切っているのでご容赦を。
もし面白ければブクマ等よろしくお願いします。