21話: 交差・新たなケツイ
僕は見てしまった、
白銀さんと黒岩さんが一緒に映画を見ている所を。
そして、その現実に打ちのめされてしまった。
「琴葉、ここまでしてくれたのにごめん。」
彼女はきっと少なからず応援してくれていたと思う。
そうでなければ、ここまで協力をしないだろう。
「いや、別にいいよ。時間をかけ過ぎちゃった、白銀さんともあまり話す時間を作れなかったし。そこは私の責任。」
.......空気が重い。
「照くん....。」
そう呟き、深呼吸をし、彼女は僕を抱きしめた。
「えっ。」なんだ、流石に驚いた。あまりにも突然すぎる。
「ちょ、琴葉。なに。」僕は琴葉を振り解こうとしたが、彼女の方が力が強く、それは叶わなかった。
「照くんは頑張ったんだよ。今辛いんでしょ?悲しくて、泣きたくて、でもそれをしない。違うかな?」
「.....!!」
「強いね照くん。力はへなちょこだけど、私よりも強い。でも、今はそれをやめよう?辛いなら泣けばいいんだよ。」
あぁ....
「私が抱きしめてあげるから。甘えなさいよ。」
甘えていい。
僕は抵抗を止め、琴葉を抱きしめ返してわんわん泣いた。
誰かにこの気持ちを吐き出したかった。辛かった。
「僕は頑張ったんだ。運動だってした、髪のセットも練習した。自分に自信を持つためならなんだってした。したんだよ。」
「うん。」
僕は怒り、苦しみを全て彼女にぶつけた。
「正直、あの黒岩さんが憎い。僕が白銀さんの隣に立ちたかった。」
「そっか。」
でも、彼女は何も返さず相槌をうち、優しく受け止めた。
いつもなら「そんな事私に言わないでよ」と、突っぱねていただろうに。
琴葉... ありがとう... ごめんね...
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...あれ
「あっ。目、覚めた?」
琴葉が僕を覗き込んで言う。
「照くん、泣き疲れて寝ちゃったんだよ。子供みたいに。ほら、私の膝枕。寝心地はよかった?」
「最悪だよ。でも、ありがとね。お陰で立ち直れそうだよ。」
「そう、それなら良かった。」
「ねぇ。」
僕は起き上がり、彼女の方を見る。
「僕、白銀さんを奪う事にした。このまま黒岩に持ち逃げされる訳にはいかない。」
負けたままなのは嫌だ。そう思った。ここで諦めてしまったら、前の僕と同じだから。
「へぇ、どうやって奪うの?」
彼女は僕に尋ねる。
「わからない。」僕は笑って答えた。
「でも、奪う。決めた。」
「そう、なら私はまだまだ応援しないとね。また負けたら泣きに来なさい。」
「悪いけど、あれは恥ずかしいからもうやめだ。それに、簡単に負けるつもりはない。」
とは言ったが、方法を考えないとな。
まぁ、それは明日にしよう。
今日は帰って、ご飯を食べて寝る!
「よし、新たに決意も固まったし、帰ろうか。琴葉。」
「え、決意固めて帰るの?変なの。」
「うん。帰る。」
ゴミの日なので眠気を封じてゴミ捨ててきました。
いい天気でした。
面白かったらブクマ等よろしくお願いします。