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19話: 逆動・ディスクレパンシー

「黒岩、お前やるな。流石と言ったところだな。」

「全くだ。お前、かなりいいぜ。」

七原と鏡だ。

俺と白銀さんの件で褒めてくれるらしい。

「いやいや、お前らのお陰もあるって、映画のチケットとかもそうだしさ。俺だけの力じゃない。」

事実、彼らの協力があったのはとても大きい。

そもそも、俺が白銀さんを食事に誘う勇気を、きっかけをくれたのも彼らだし、本当に自分だけの力ではないのだ。

「黒岩、もう俺たちの助言は要らなくないか?あとは時間が解決してくれそうだし。」

「そうかもな。マジで助かった、ありがとうな。」

「くぅ、ついにお前も彼女持ちか。しかも相手は学園一と言っても過言ではない美少女.... 羨ましいぜ。」

鏡はどこか悔しそうに涙を堪えている。

「おい待てって、まだ付き合ってないよ。最後まで油断は禁物だ。」

そう、いくら距離が縮まっているからといい、慢心してはいけない。それで何かやらかせば全てが水の泡だ。

「どうせ今日も会うんだろ?確かに油断はできないが、仲良くなったんだ。楽しんでこいよ。」

やっぱり七原は鋭い。今日は個人的な用事とやらで彼女に呼び出されている。

「よくわかったな、俺も楽しむ事にするよ。おっと、時間だ。それじゃ行ってくるわ〜。」

俺は教室を後にした。


彼女との待ち合わせ場所は中庭。

先に行っていてくれとの事なので来てみたが、うちの学校の中庭結局広いんだな。ここに来るのは初めてだから、余計にその広さを感じる。

「あ、黒岩くん。ごめんね待たせちゃって。」

「いえいえ、大丈夫です。ところで、用事って何ですか?」

「用事ね、少し待って。」

そう言うと、彼女は自分の鞄の中をガサゴソと探り、何かを取り出した。

「これなんですけど、黒岩くんにプレゼントというか何というか、ほら、ピアノ聴いてくれたり、お茶したり、いろいろお世話になったからお返しを〜って。」

白銀さんが、俺にプレゼント?

そんな、願っても無い。

「お返しだなんて、気にしなくて良いのに。」

なんかドキドキする。

女の子にプレゼント貰うの初めてだからかな....

手汗びっしょりだけど大丈夫だろうか。

「これ、万年筆です。安物ですが、かなりいい評価のものを買ったので恐らくは大丈夫です。」

万年筆、なかなか高校生で万年筆を貰う事って無いのではないだろうか。

「ありがとう、とても嬉しいです。あ、でも....万年筆の使い方わからないんですよね。せっかく貰ったのに、自分の知識の無さを恨みます...」

「それなら、お守りみたいな感じで持っておくだけでもいいんじゃないですか?ほら、万年筆って持ってるだけで風格あるじゃないですか。」

確かに。普段使うのがシャープペンとかボールペンだから余計だろう。

「わかった、そうする。ありがとう、白銀さん。」

「いえ、お礼ですから。映画にも連れて行ってもらったし、とても楽しかったですよ。」

そうか、楽しんでくれたのか、白銀さん。

そう言われると誘った側としては嬉しい。

「いやぁ、もう。白銀さんと一緒にお茶するためにピアノ聴いてるようなもんですから〜 ははは。」

「へぇ、私とお茶するために。」

「えぇ、もう、全く。」

「そう。」

あれ、なんか態度よそよそしくなってないか?

「とりあえず、お礼は渡しましたので。私はこの後部活がありますから、ここらで失礼させて頂きます。」

「あ、時間取らせちゃいましたね。すいません。では、また。」

そうか、白銀さん忙しいもんな。変に引き止めちゃ、彼女に悪い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「白銀さんと一緒にお茶するためにピアノ聴いてるようなもんですから〜」

そうだったんだ。

あの時、私のピアノを聴きたいと言ってくれたのって色々計算した上での発言だったんだ。

黒岩くんは見てくれじゃなくて、私の内面を褒めてくれた。そう思ったのに。


とても楽しかった。私が彼に演奏し、談笑する。

黒岩くんが喜んでくれたから、私は....

なんだろう、この感情は。怒り?いや、悲しみだろうか。とにかく裏切られた気持ちで一杯だ。


とりあえず、今日の部活は休もう。

今は何もしたくない。





















歯を磨きながら書きました。

超爽快!!

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