15話: 不完全・頑張れ照くん。
石神 照は私の昔からの幼馴染みだ。
家が近く、小中高とずっと一緒。でも、彼は友達らしい友達を1人も作った事がない。
別に、彼自身顔面偏差値も決して低くは無く、私とは普通にコミュニケーションが取れている。
なのに、私以外の人はまるでダメ。
どもる・おどおどする・目を見て話さない 具体例を挙げればいくらでも言える自信がある。
「いらっしゃい。それにしても、照くんなんでこんなんなっちゃったかな〜...」
今日、計画を進める為に彼を家に呼んだ。
「こんなんとは何だよ、僕だって今こうして頑張ってるじゃないか。筋トレもサボらずやってるんだぞ!」
「えらいね、三日坊主になると思ってた。」
照くんは本気で白銀さんと付き合うと考えているみたいだ。茨の道も覚悟の上という話だし、彼の意思は本物だろう。
「ねぇ、突然なんだけどさ。どうして照くんって友達作らないの?」
「本当に突然だな、深い理由なんてないよ。単に面倒だから。」
「嘘だね、だって照くんいつも1人でご飯食べてるじゃん。寂しいでしょ?」
「そりゃ最初は寂しいさ、でもそんなものはもう慣れた。」
「ふぅん。」
「なんだよ琴葉、僕をからかいたいのかよ。」
面倒か。面倒くさいから友達を作らない。
では、私はどうだろうか。私も面倒な人に含まれているのかな。まぁ、からかったりするし多少は面倒と思われていそうではあるが。
「ねぇ、私って照くんのなんなのかな?」
思い切って聞いてみた。
「また急な質問だな。琴葉は幼馴染みだよ、それ以外何かある?」
幼馴染み、か。友人とは違う類には入れてくれてるらしい。少しホッとしたが、なんだか私を女性として見てないみたいでちょっとイラッとしたが、抑えた。
「なるほどね、また質問変えるんだけどなんで私以外の子には顔見て話せないの。」
「なんでって... いや、緊張しない?」
「でも、そういう所しっかりしないと白銀さん落とすなんて無理だよ。」
そう、外見をいくら変えたところで中身も変わらなければいずれバレる。
まだ彼は不完全なのだ。これではいけない、駄目な所はできるだけ潰していかないと。
「うーん、でもどうすればいいのさ。緊張するななんて無理だよ?」
「別に緊張はしてもいいの、でも自分から話しかける勇気が照くんには無い。ほら、田中とかいう子の班に入れて貰った時も私の助言無しじゃどうにもならなかったでしょ?」
「確かに、、、」
「今の状態で女の子に突撃したら何し出すかわからないかなぁ...」
策が見つからない、どうすれば彼のコミュ症が治るのか....
そうだ、いい事思いついた。
「ねぇ、私と何回か出かけない?いくら話やすいとは言っても2人きりで外出した事ってないでしょ。」
これならいい練習になるかもしれない。
正直上手くいくかは五分五分、といった感じではあるが。
「琴葉と外出?いいけど、どこに行くのさ。」
「そこは男なんだから照くんが決めなよ。しっかりエスコートしてね。」
「マジですか...」
これで彼に勇気を知ってもらえればいいな、そう思った。
「わかったよ、頑張って色々考えてみる。」
そう言って彼は帰っていった。
はぁ、何してんだろう私。
彼をイメチェンするとか言っちゃって、最初はからかうつもりで言ったのに。
ー好きな人見つけたんだね、照くん。
なんだか彼が遠ざかって行くような、そんな気がした。
昔からずっと一緒に居たのに、なんでだろう。
この気持ちはなんだ、モヤモヤする。
勿論、彼の恋愛が成就する事を願っている。でも、今のどうしようもない照くんにそのままでいて欲しいと心のどこかで願う自分がいる。
そう、私はあの口下手で、人見知りで、コミュ症な石神 照が好きだったのだ。
中学、私が彼を意識し始めた時期。
学年が進むにつれて声が低くなり、気づけば私は彼に恋心を抱いていた。
ーでも、照くんは変わるんだ、この気持ちは捨てないと。 私は照くんが変わる手伝いをする。
私が彼をカッコいい男に鍛えて、白銀さんの元に送り出す。そう決めたから。
さて、照くんはどんなプランを立ててくるのかな。
散歩とかしょうもない計画じゃないといいんだけれど...
楽しみにしておくとしよう。
「毎日の運動サボらないでね、あとヘアアイロンで髪を整える練習をしておく事。」私は彼にメッセージを送った。
私は応援しているから。頑張れ、照くん!
これ書いてるとき、めっちゃ寝落ちしました