死亡謎の少女
ドラゴンの最初の被害者尾山公平は他人に興味のない高校二年生、その彼の生い立ちは消して良いものではなかった。
「他人の人生にはなるべく干渉しない。」
それが彼、尾山 公平のモットーである。
彼のプロフィールを簡単に説明すると、現在高校二年生で現在絶賛不登校中のアニメやゲームが好きないわばヲタクである。
見た目は高校二年生の平均といった身長に体重の黒髪の死んだ魚の目をした、まさに陰キャというものである。
さらに、他人にそこまで興味がなく、そこまで干渉しようとしないおとなしい性格である。
そのため、友達を自分から作りに行くタイプでもないため仲のいい人間はそこまで多くはない。
またこんな性格の為、公平の指で数えられるほどしかいない友達も一癖も二癖もある人である。
そんなアニメでもモブキャラ的な普段目立たない彼が、一度だけ学校中の注目の的になった出来事があった。
それは、学校のマドンナと言われる女子から告白されたことである。
公平の場合モブキャラと言っても顔に関しては、アニメの主人公並に整った顔立ちだった。そのため、モテないわけではなかった。
しかし、彼の性格上彼女が欲しいとか、良い青春を過ごしたいとかが無かったため、その場でマドンナを振ってしまった。
しかしそれが間違いだった。
次の日から、なぜか学校では白い目で見られるようになった。後からわかったことだが、マドンナが自分を振ったからと、ありもしない噂を学校中に言いふらしたというのだ。
しかも、彼女は俺の一番の親友のような存在のやつに一週間後に告白し成功したそうだ。
それからというもの、数少ない友達ですら近寄らなくなった。
しかしそこまで他人に興味がなかったせいか、周りの酷い言いようにも全然気にしていなかった。それどころかこの事件を学校を休める良い口実だと思い、それから学校に行かなくなったのだ。
しかし、突然の不登校にさすがに疑問を持った学校の先生が色々と調査した結果、この事件の主犯がマドンナとその彼氏がわかり噂も全て嘘とわかり解決した。
だがやはり一度長期的に学校を休むと、そうそう簡単に生活を戻すことはできず、そのまま不登校の期間は続いた。
そんなある日、家族に気分転換に海外旅行にでも行かないかと誘われ、公平は家族と一緒に旅行に行くことになった。
旅行は嫌いではなかったため、言われるがままに準備をして行った。
父が今回は船を貸切にしたと言っていたため、ゆっくりできると思っていた。
今回の旅行は日本から韓国まで貸切船で行き、そこから韓国、中国と旅行をしようということだ。
公平は、この旅行を楽しくするためにはどのような船かが重要であると思っていた。
さすがにボロボロの船では楽しめない。せいぜいツッコミどころのない普通の船でと願っていた。
だが、今思えばあれがフラグだった。
父が借りた船は、この時代にはありえないくらいのボロ船。
正直もう旅行を楽しめそうにない。
「なんでこんな船なんだよ父さん。」
「仕方ないだろ!予算の都合だ。」
お金の話を持ちかけられては反論できない。
いつか大人になって金稼いでもっと良い船で今度は旅行しよう。
とはいえ、海に出てしまうと青い海に見とれてしまう。
「なかなかの眺めだ。」
「そうだろ、やっぱり海はいいよなぁー!」
公平の明るい顔に喜ぶ父親を見て、母親と妹も嬉しそうな顔をしていた。
だが数時間も同じ景色となると、さすがに飽きてしまう。
公平は服やタオル以外にスマホぐらいしか持っていないので、スマホで何かしようとしたが圏外で何もできない状態であった。
「暇すぎる。」
「あーーーーーーーっ!もう長い!お父さんあとどのくらいで着くの?」
妹も同じ気持ちでいたことに少し喜びを持った公平は、続けて父親に問いかけた。
「本当にいつ着くんだよ。」
「あと半分くらいだから待ってろ!」
ここまで来ての半分と聞き、急に無気力になった。
「それじゃあ、お母さんがお話をしてあげましょう!」
高校生と中学生の兄妹に物語かよと思いながらも、聞いてみることにした。
「昔、このあたりの海はいつも荒れており、当時の文明力ではこの海を渡ることはできませんでした。
しかし一人の勇敢な少年は、海に飛び込み自分の命と引き換えに、海は穏やかになったのです。」
「短っ!」
妹と同時に言った。感想コメントが同じとはやはり兄妹である。
「どう?面白かった?」
「う、うん面白かったよー!」
妹のあまりの棒読みにさすがの母も肩を落としてしまった。
「でも、お母さんが考えた作り話だから安心してね!」
妹が怖かっての棒読みと思ったのか、すかさず母親はフォローした。
「作り話かー。仮に作り話でも本当に起きたら怖いよなぁー。」
そう言いながら公平は海を眺めていた。だが、海を眺めているうちに思ったことがあった。
彼は悪いことに関しては必ずフラグをたてる。
数分後、少しずつ波が揺れ始めた。
「なんだ急に!」
すると上空に、なにやら光が発生した。しかも、綺麗な円型のマークである。
「すげー。アニメでよく見る結界みたいだ。どうやってるんだろう。」
アニメをよく見る公平は、少し興奮気味であったが残りの三人は今にもパニックに陥りそうであった。
「いいかみんな!しっかりつかまっていろ。」
父が言うと、三人とも椅子にかっちりとつかまって波がおさまるのを待った。
しかし波は治るどころかどんどん酷くなっていった。
すると、結界のようなところから白い光が出てきた。その光の中からさらに小さい無数の黄色い光とともに、雷が降ってきた。
そのたびに波は大きく揺れ、気を緩めれば船から飛び出てしまいそうだった。
その時、大きな光が薄れていき姿が徐々に見えてきた。
「なんだあれ?」
目を凝らしてよく見ると、長い首、鋭い目と牙、長い手に短い足。
「あれは・・・・・・」
公平はアニメであの姿の生物を見たことがあった。
「ドラゴン・・・・・・」
小声で言ったのにもかかわらず、公平の声に反応したドラゴンは、狙いを定めたかのように一発、船に向かって雷を打った。
その雷は船には当たらなかったものの、大きな波を作り、その反動で公平は船から飛び出てしまい、ドラゴンにとどめを刺され、海の中へと沈んでいき、死んでしまったのであった。
海の中へと沈んでいった公平だが、気を失う直前に、小さな少女が見えた。髪は長くポニーテールをしており、服は着ていなかった。
「おまっ・・・え・・・は・・・」
少女は笑顔で公平を抱きしめ、その直後公平は息を引き取った。
今回も読んでいただきありがとうございます。今回はキャラクターの生い立ちのみとなりましたが、次回からストーリーを展開させていこうと思いますので次回もよろしくお願いします!