ドラゴン転移
二匹の戦うドラゴン。その影響で住民は多大な被害を受けた。そんな時突如現れた男により、片方のドラゴンが異世界に転移さらられた。そしてそのドラゴンの向かう先には。
「キーーーーーーッ!」
「グァーーーーーッ!」
大きな声で叫びながら二匹のドラゴンが戦っている。片方は純白のキラキラとした鱗に、翼を型どる銀色の鉄のようなもの。もう片方は色も真反対の黒い鱗。さらに翼を型どる金色の鉄のようなものが付いている。
しかしあまりに上空にいるため、この程度の情報しか得られない。
「白と黒のドラゴン・・・・・・」
「あぁ、伝説通りのドラゴンだ。」
「でもどうして?あのドラゴンが出てくる時って、契約が破られた時だって・・・・・」
親子と思われる二人が上を見上げて話していた。父親はそれなりに年を取っており、娘は大きな目に銀色のショートヘアーだった。
この頃ドラゴンの使う様々な魔法に次第に親子のいる村にも被害が出てきていた。
「まずい、このままじゃ・・・」
「俺がやります。」
「あなた何を⁈」
黒い大きなフードを被った男がふと現れた。
「あのドラゴンどもを異世界に転移させましょう。」
「あなた!そんなことをしたらその世界がどうなるかわかっているの⁈」
「はい、わかっております。ですが今ここがやられれば、より被害が大きくなるだけです。」
そう言い放ちながら、男は両手を上げて何かをぶつぶつと唱えていった。大きな結界が上空に現れた。
「安心して下さい。ドラゴンの転移先はあまり人がいないところにします。」
「ですが、私もそこまで強力な結界を作れるわけではありません。最悪、すぐにこちらに戻ってきてしまうかもしれません。」
「それじゃあどうするのよ!」
「すぐにとは言っても短くても最低一ヶ月は保ちます。」
「だからそのわずかな間でも、兵力を回復させるのです。」
その言葉に銀髪の女の子の険しい表情も少し和らいだ。
「今から、白いドラゴンを転移させます。」
その瞬間男がまた何かを唱え始めると、結界の魔法陣が回転し始めた。すると白いドラゴンが結界の中に吸い込まれ、あっけないくらいに戦いは終わった。
「さぁ、これで少しは時間を作れました。今のうちに情勢を立て直すのです。」
そう言い残した後、男は蒸発するかのように消えていった。
「これで少しは時間ができる。直ちに負傷している兵士の手当て、被害の規模を確認せよ」
白いひげを生やしたおじさんが叫ぶと周りにいた兵士が動き始めた。
兵士や住民の顔はドラゴンの戦いが終わり、安堵の表情であった。
しかし、銀髪の少女は一人不安そうな顔をしていた。
「あのドラゴンによって誰も被害に遭いませんように、どうか、どうか。」
自分の現在の状況よりも、転移されたドラゴンによる被害の心配をする優しい彼女の願いは届かなかった。
届かなかったどころかむしろ逆である。
フードの男が転移させた先には一艘のボロボロの船があった。
その船には四人家族が乗っており、ドラゴンは上空からその四人にめがけて攻撃を始めた。
ドラゴンの周りに無数の黄色い魔法陣が出現し、そこから雷のようなものが船に向けて放出された。
最初の数発で危機を感じた家族は逃げようとするも、叶うはずがなく、ドラゴンによる一撃で一人の少年が船から飛び出てしまった。
少年は船に戻ろうと泳ぐも、ドラゴンが引き起こす波により船はどんどん遠ざかっていった。
「おい!待てーーーーーー!」
少年はもう追いつかないことを悟り、泳ぐのをやめた。
「ふざけるなよ。こんな理不尽なことがあるのかよ。くそっ!」
少年は海面を思いっきり右手で叩きつけ、目には涙を浮かばせていた。
しかし、そんな少年にもドラゴンは容赦なく彼にとどめを刺すように、雷を直撃させた。
「あーーーーーーーっ!なっ、なんで・・・・・・」
その言葉を最後に、ドラゴンによる第一被害者である彼、尾山公平は海の底へと沈み、息を引き取った。
読んでいただきありがとうございます。初めて書いた作品なのでまだまだ改善するべきところは多いとは思いますが、どうぞこれからもよろしくお願いします!