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石ころに転生してしまったようですが。  作者: 炭井 ユタ
chapter 1 《終わりも始まりも》
7/11

episode 7

 皆が完全に寝静まり返えった所で今日の学んだ成果を確認していた。

 まあ、いわゆる復習というやつだ。

 前世の俺じゃあそんな事しなかっただろうが、今は一刻も早くこの家族の役に立たなくてはならないのだ。

 彼らが焦らなくても良いと許してくれても、俺が俺を許したくないのだ。


 自分ばかりいい思いをしては、悪いからな……。

 それにあんな話を聞いてしまったらなおさらだ。


 さて、今日は冒険者のアディルから色々と聞いた。


 まずは、この世界に関してだ。

 村では、フレア王国の領内だと知ってはいるものの、あまり周辺地理に関しては詳しくないのだ。

 地図もなく、書物に関しても村では見かけなかった。

 だから、この国に関して、その周辺地理に関してと歴史だ。


 この世界は七陽大陸と言われる、七つの大陸があるのだ。

 まさに名前の通り太陽のように、一つの巨大な大陸を中心に六つの大陸がある。


 七つの大陸には名前があり、その全てが七大神の名前とされている。


 中央の巨大な大陸がバルヘアラ。

 その真上がハイラ。

 右斜め上にフォレラ。

 右斜め下にガンドラ。

 真下がリキューラ。

 左斜め下にギルベラ。

 左斜め上にニグラ。


 そう言えば、あのアホ神もこの中にいるのか?

 名前は聞いてなかったし、どうなんだろうな。


 そして、俺たちが今いるこの国フレア王国はリキューラ大陸のほぼ真ん中に位置するらしい。


 この辺りは一般常識らしく、村で聞いたので省いた。


 細かい地理に関しては、アディルも分からないということで大まかな内容だが、ざっと整理すると。


 リキューラ大陸には大体二十ほどの国と地域が存在するらしいのだが、流石に全て覚えられる気もしないし、知る必要はないだろうと感じたので、フレア王国の周辺国だけ聞くことにした。


 それにしても、これが一つの大陸で、この大きさだ、中央の大陸はさらに数倍の大きさを誇るときた。

 何百年通しても、周りきれないだろうな、と、あまりの巨大な世界観に呆れてしまう自分がいる。


 気を取り直そう……。


 中央に位置するフレア王国の周りには五つの国がある。

 フレア王国の右真横に位置する国、リューエン王国、この国はフレア王国の四分の一程度だ。

 そして上の方に巨大な山脈を越える二つの国が並ぶ、ウラとアラという姉妹国らしい。

 俺達の世界では聞き慣れない言葉だが、要するに同時に建国され、同盟国という形ではあるが、一つの国とも言え、国境と言った正確な境目はないらしい。


 なら、いっそのこと一つの国にしてしまえとも思うのだが……。

 そうも、簡単にはいかないのだろう。


 続いて、フレア王国の左下全面に至るほどの巨大な国、ティエラル魔法国。

 この国がリキュール大陸最強の国と呼ばれているらしい。


 続いて左の小さな国、モーラル共和国。

 まあ、国というよりは一つの都市国家と言った方が正しいかもしれない。

 王家は存在せず、代表が取り締まる国だ。

 まあ、大統領とか、総理大臣みたいな感じだろう。


 ちなみにフレア王国が同盟を結んでいるのはリューエン王国とモーラル共和国だけだ。


 ティエラルは基本的に好戦的な国、魔法至上主義故に、魔法が使えない者には厳しいらしい。

 まあ、暫くは行かないから大丈夫だろう。

 ゆくゆくはその国で魔法を習いたいものだ。

 ただ、好戦的なのは頷けないな。うん。

 俺は平和主義だし、いままでもこれからも。


 よし。

 それで話は戻り、フレア王国についてだが、フレア王国には王との他に四つの都市があって、俺達がこれから行く都市ローリエはその中で三番目に大きいらしいのだが、さして大きいのか小さいのか分からないからそこは気に留めずに行こう。

 各都市には転移陣なる物があるらしく、それで直接、王都に渡れるのだという。

 すごく便利だ。

 まあ、利用料なる物はきっちりと取られるのだが。


 前世の世界でも置いてくれたらどれだけ楽な生活ができたか……。

 

 そして都市の役目というのが国の貿易の拡大と都市領内の税収や、商業管理らしい。

 勿論、それだけではないが国を動かしていく上で大事な事らしいので念頭に置いておくとしよう。

 因みにいつも、というよりは半年に一度くらいらしいのだが、村長が付いてきて、ここで村の道具やらなんやらを買うらしい。

 そして冒険者ギルドなどもあって、アディルはこの都市の冒険者ギルドに登録しているのだとか。


 行商人達もまた、ここで国の商人達と取引をして王国に持っていくものを分けていくのだが、今回カリスはそれをせずにそのまま王国へと入るらしい。


 アディルはローリエに入った瞬間にカリスとの契約は終わりで護衛もそこまでという事だ。

 別れた後はすぐに報酬と次の依頼を受けにギルドへと向かうというのでそこで俺たちもお別れになる。

 ただ、アディルはまた近いうちに合う気がするのは気のせいでは無いだろうな。


 後、詳しい事は都市で案内人やら書物庫行って自分で調べろよ、という事だ。


 何にせよ村で聞けなかった基礎的な都市内での常識やマナーに関しては聞けたので一先ずは安心だ。

 これで俺もただの喋る石ころから、常識的な石ころに進化したわけだ。


 そうこう考えてるうちに光が木々の隙間から流れ込んでくる。

 鳥のさえずりもまた、朝を感じさせる。


 それにしてもこれだけ考え耽っていたのに頭の疲れが無いのは非常に便利な体だ、その点だけはな。

 それ以外は不便でしか無いのだ。


「おはようございます、お石様」


 唐突に声をかけられたが、魔力視のお陰で既に近づいてきている事はお見通しだ。故に驚くわけがない。


『おはようございます。カリスさん』


「おお!是非、私のところに来ていただけるのであればできるの限りの事を──っと失礼しました。少し。商人としての血が騒ぎまして……」


 商人としての血って、俺を売る気満々じゃねえかよ!

 だが、ここは冷静に大人としての態度を見せなければ。たとえ石ころだからと言って、大人の対応を怠ってはならないのだ。


 それと、カリスは気になる事を言っていた。

 それも聞かなければならない。

 今じゃなくてもいいが、聞けるなら早い方が良い。


『い、いえ、気にしないで下さい。それと、カリスさんに聞きたい事があるのですが……石霊とは』


「あれ?知らないのですか?まあ、無理もないですよね。あの村じゃ、流石に情報がなさ過ぎますからね」


 今のはカチンときたぞ。我が村を馬鹿にするか!

 お兄さんだって怒る時は怒るんだから!


『……』


「あっ、いえ、決して馬鹿にしてる訳ではありませんよ?寧ろ、知らなくて幸せな事だって沢山ありますから。私もこの様な立場でなければ、あの様な辺境の村で生まれたかったとも思いますしね」


 俺の無言の威圧とやらを感じたのか、すぐさま訂正する。


『はぁ……』


「あ、そうでした。石霊に関してですよね」


 俺はそれが聞きたい、あの時カリスは俺を見て石霊と言った。

 そして、あのアホ神も他にも意思がある石もあると言った。

 そうなれば、その石霊と言うのが意思のある石で間違いなさそうな気がする。

 たが、深読みしてはならない。

 俺はいつだってそうやって失敗してきたし、これからも間違いなくするだろう。

 だからこそ、聞ける時に聞く。

 これを忘れてはならないのだ。

 

『はい。教えて頂けますか』


「ええ、勿論。まあ、説明すると言っても詳しい事は私にも分かりません。私たちの業界でも幻の域ですので」


 簡単に説明すると、俺みたいな事を言うのだ。

 まあ、これは何となく分かってはいた。

 ただその原理というのが、俺とは異なる。


 石霊とは、行き場を失った彷徨える魂が石に宿るのだ。

 だが、本来、俺みたいな単なる石ころに宿る事はなく、魔晶石と呼ばれる、長い間魔力を吸い続けた結晶にのみ宿るとされている。

 それも、そんな奇跡は数百年に一度の割合だ。

 まあ、あくまでこの辺も言い伝えによると、らしい。

 もっとも、人間に見つけられずにというのもあるだろう。

 ただ、俺みたいに意思があるのは本当に珍しい。

 というか、見つけた者は歴史に名を残す程の代物だと言われているらしい。


 それ程の価値があるのだ。俺には。


 不味い。非常に不味いではないか。

 こんな事が多くの人に知れてしまったら俺は家庭教師どころではない。

 はっ!いや待て。気づいてしまった。

 俺を自ら売りに行けば家族を養えるのではないか。

 あ、いやいや。そんな事は考えてはダメだ。

 あくまで、俺自身が恩返しをしなければ意味が無いではないか!

 そうだ。そうだとも。

 で、でも、もし俺をエルウィズ家が売りたくなったらその時は……。


 悲しい、悲しすぎる!

 どうしていつも俺はこうネガティブになってしまうのだ。

 大丈夫だ、その時はその時でまた考えれば良いだけの話。


 よし、続きだ。

 で、その意思の石霊と言うのがこの王国、というか、大陸にも一個?いるらしい。

 その、石霊は今から四百年前にある迷宮で見つけられたのだと言う。


 こうして、数百年前とか、この大陸に一個とか聞くと、本当に珍しいものだと再確認できる。


 他にも何個か王国にあるらしいが、魂が宿っても、意思は持たない、ただ強力な魔力源としてのみ扱われるらしい。

 

 それで、その石霊は今はどうしているのかと聞くと、ゴーレムらしい。

 どういう事かと言うと、人工的に作られたゴーレムの中に石霊を入れて自らの魔力を使って、自分の意思で身体を動かす事が出来るのだ。

 そして、そのゴーレムの身体で、王様を守っているのだとか。


 俺はこれだと思ったよ。

 これしかないと、確信した。

 人工的に作られたゴーレム。

 これで俺のこの不自由な身体から解放され、更には家庭教師の仕事もこなせる。

 素晴らしい!


『ありがとうございます!カリス!これで、先が見えてきました!』


「満足していただけたようで何よりです、それで──」


『うぉぉおお!!』


 カリスの言葉を遮るように雄叫びをあげた。


「……なんだ?」


「……あれ?お石さん?」


「ん……んー」


 俺のやる気の嵐が念話として周囲の人達に聞こえてしまったらしい。

 それで、皆を起こしてしまったのだろう。


 この辺もしっかり制御しなければな!

 やる気が出てきたぞぉお!


 最初の目的がはっきりしたからな。

 魔法よりも、まずは身体ということで。

 本格的に計画を立てなければな。


 まずは資金調達だな、この辺りをどうするか……。


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