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二律背反パラノイア  作者: 蔦乃杞憂
1/3

隣のストレンジャー

新作です。

更新不定期ですがよろしくお願いします。

『隣のストレンジャー』


 『ツウィッター』は、数年前スマートフォン専用として配信を開始したアプリケーションだ。


 種類的にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と呼ばれるものであり、その部類に合った内容のサービスを提供している。


 前述の通り、数年前の配信開始から利用者は三億人に及び、国内に留まらず国外へと流れ込んだ。


 利用者は自身のアカウントを作成し、そこに自分の身辺で起こった出来事や体験、あるいは趣味なんかを呟くわけだ。そのやり取りの間、意気投合した人物とフォロー、フォロワーの関係になることもある。


 ここまで人口が増えた原因は、アカウントを簡単に、かつ複数作れることによる『匿名性』と、誰でも、誰とでも繋がれる『気軽さ』にあるのだろう。しかし、長所は同時に短所にもなりえる。光が強い程闇が濃くなるように。


 俺こと有栖川アイラは、つい最近、偶然にもその闇と遭遇してしまった。偶然のように思えるが、偶然なんて単なる事象と事象の組み合わせだ。つまりは必然。そうなるべくしてなったのだろう。










 俺の友人の内の一人が、最近スマホを買ったと聞いた。名前はK。


 高校生にもなって今までスマホを持っていなかった理由は、単に彼が重度の機械音痴だったからだ。しかし、親や友人との連絡が難しいとのことで、これを期にスマホデビューしたという。


 それから数日後、俺のスマホに一件の通知が届いた。


『K@2の1HRさんからフォローされました』


 それはツウィッターからの通知で、正真正銘Kと同名の人物からによるものだった。Kもツウィッター始めたのか、その時俺はそう思い、フォローを返した。



『なあ、有栖川。お前の住所教えてくれない? DMで教えてくれればいいから』


『どうして』


『年賀状送りたいけど住所分からんから』


 少し不自然に思いつつも、俺は住所をKに教えた。今となって思い返せばこれが間違いだったのだと痛感している。




 年明けから数週間。冬休みは終わり、学校が始まった頃、俺は休み中に来た年賀状の整理をしていた。数十枚とそれなりの枚数がある中、何故かいくら探してもKからの年賀状がなかったのだ。


 例年なら何だ、来てないのか、で済ましてしまうが、今年はKから年賀状を送るから住所を教えてくれと言われている。そのKから年賀状が来ていないというのは話が合わない。


 スマホに入っている無料メールアプリを開き、Kにこの旨を伝えた。


『おい、年賀状届いてないぞ』


『年賀状? どういうこと』


 思わずスマホを触る手を止めてしまった。危うくスマホを落としそうになり、慌ててつかみ直す。何が起きている......? 文字を打とうとしたが、指先が震えて上手く打てない。


 何とか数分かけて打った文章を送信した。


『前にツウィッターで住所教えてって言っただろ』






『言ってないよ』






 それは、ある意味予想していた答えだった。額に脂汗が滲み、呼吸が荒くなる。空腹でもない、いたって平常の腹はきりきりと、まるで尖った何かで胃の内側を突いたように痛み出す。


『それに』


 既に狼狽しかけている俺に、Kは追い討ちをかけるが如く文字を綴った。






『僕はツウィッターなんてやってない。何せ自他共に認める機械音痴だからね』






 二回目、手から滑り落ちたスマホは、俺の手の支えを失くし今度こそ床へと落下した。低い音が部屋中に響き、鼓膜へと伝播した。呼吸が上手く出来ない。口をパクパクさせながら必死に酸素を肺に入れようと試みるも、上手くいかない。


「..................じゃあ」


 思わず口に出てしまう。掠れた小さな声で。ゆっくりとした動作で床に落ちたスマホを拾い上げると起動させ、ツウィッターを開く。


 ある人物のプロフィール画面を表示し、焦点の定まらない目で『ソイツ』を見て、言った。いや、『言ってしまった』。





「オマエ..........................................ダレダ」





 その瞬間、来訪客を告げるインターホンが鳴った。

この作品は全て、僕の経験談を基に作成しております。ですので、更新ペースが遅くなりがちです。

何卒ご容赦の程、宜しくお願い申し上げます。

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