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R/W  作者: Maki
Chapter 1 : Repeated/World
25/26

護るべきもの

  操舵室。上のほうで次々と轟音が鳴り響く。おそらく、戦闘機が発艦していく音だろう。


「艦長。グランツ隊、シューベスト隊、オーグ隊、テグエント隊、全機発艦しました!」

「了解。――――――ミサイルは」

「二時の方角、距離千五百!七時の方角から、距離二千!こちらは複数です!」

「三時の方角から接近中のミサイル、消失!グランツ隊が撃破した模様です!」

 


「艦長!発艦許可のない機体が一機、発艦しようとしています!」

「なんだと!?」

 驚いたのは篁ではなく、エフィーだった。

「誰が乗っている!?」

「ナノコントローラーに接続・・・。――――――フラム・ミユ大佐・・・?D班班長の、フラム・ミユ大佐です!・・・どうしますか!?」


 篁は何も言わない。驚いた様子もまるで見せない。ただ帽子を目深にかぶり、椅子に腰かけている。


「やめさせろ!!許可もなく発艦など、論外だ!!至急、滑走路への回路を切断――――――」

「構わん。そのままいかせろ」

「・・・艦長!?」

 エフィーは唖然とする。鳩が豆鉄砲を食らったような顔というのは、まさにこのことを言うのだろう。だが彼だけじゃない。周りの通信員たちも、同じような反応ばかりだ。それは神宮寺も一緒だった。

「あのクワイン・ソルに次ぐ空戦技術を持つという大佐の腕前、拝見させてもらおうじゃないか」




「この風景も久しぶりだな・・・」

 フラムの機体はすでに空中にあった。直感で選んだこの機体。もう少し操縦してみないとわからないが、故障個所は特にないらしい。レバーを引いても上昇しないだとか、ブーズトをかけても速度が上がらないだとか、そこまでおんぼろでもなかったようだ。そんな状態では、勝てる戦いも勝てない。


「さて、状況は――――――」

 真下にはキュークジェルエン。その前方約四百メートル先には、先ほどからその場から動かないガンシップが四機。あとは、キュークジェルエンから三、四千メートル離れたあちらこちらの海面で爆発の連続。キュークジェルエンに迫るミサイルに、グランツ隊やらシューベスト隊やらが対応しているのだろう。ミサイルは彼らに任せて大丈夫そうだと、フラムは見た。


『ミサイル、距離八百!!』

 キュークジェルエンからの通信だった。真下を見ると、海中を一本の白い筋がキュークジェルエンに向かって進んでいるのが見えた。あと6、7秒で潜水艦に直撃するかという距離。

「迎撃する」

 フラムがミサイルを射出しようとしたその時、


『邪魔だ。女』

 そう聞こえたのと同時に、フラムの機体のすぐ横を赤いレーザーがかすめた。レーザーはキュークジェルエンを沈めようとするミサイルを、あと五百メートルというすんでのところで爆発させた。


「・・・・・・」

『なにしてる』

「あ?」

 通信の声は男だった。おそらくフラムの後ろにいる機体からだろう。今ABLレーザーを放ったのもこの機体。赤と黒に配色され、大きさは戦闘機の中では大きいほうだ。


「見てわかんねぇのか」

 少し間違えればレーザーが機体に直撃し死んでいたフラムだが、その声はあくまでも冷静だ。

『許可もなしに出撃した。ということぐらいはね。――――――君、あれだろ。アルモンド社へ調査に行くはずだった。確かD班の大佐で。・・・でも何もできずにキュークに逃げ込んできた。ははっ、笑える』

 

「だったらなんだ」

『情けないよねー。あっさり敵にルクソフィア奪われちゃって。ちゃんと守ってほしかったよ。普段からちゃんと訓練してるの?おねーさん』


「・・・・・・」

 いつもはからかわれるとすぐにカッとなるフラムだったが、この時は違った。なぜかははっきりわからない。だが、この男の言い分は正しいように思えた。

「・・・訓練はしてるさ。にもかかわらず、敵に空け渡しちまった。すまないと思ってるさ。ああそうだよ、お前の言うとおり、何もせずに命からがらあの潜水艦に逃げてきた。大勢の仲間を見殺しにしてな」


『なんだよ、わかってんのかよ。だったら、今すぐキュークに戻るか海に消えるか、どっちかにしてくれないかな。空にいると、目障りなんだ。できれば後者がいいね。もう腰抜けの顔見なくて済むから。てか、戦闘機が一機戦場に入り込むだけで、どれだけ作戦に支障が出ると思う?・・・大佐の君ならわかるよね』


「勘違いするな。“すまない”って言ったのは、別にお前に向けてじゃない」

『・・・あ?』

 海面で爆発したのが見えた。少し遅れて、爆音が耳に届く。戦闘機が真下をかすめていくのが見えた。


「・・・それに、私は別にお前たちの邪魔をするつもりはないさ。そして、ましてや共闘するつもりもな。私は、私が護るべきものを護りたいだけだ」

『おいおいかっこつけてんじゃねぇぞ。どう言い繕おうが、お前がのこのこ逃げてきたって事実に変わりはねぇんだ。そんなやつのことが、戦場で信用できると思うか』

「信用してほしいと言った覚えはないんだがな」

『・・・!』

 男は言葉に詰まる。一方で、フラムは淡々と言葉を続ける。


「それに、戦闘機一機紛れ込むとどうとか言ってたな。たかだか一機に戦局を左右されてどうすんだ。そこはお前、戦闘機乗りとしての腕がないって、反省するところじゃないのか」

『――――――なんだと・・・!?』


「あとな、最初っから逃げることしか考えていないような奴に、ガタガタ言われる筋合いはないんだよ、クズ野郎」

『何言ってんだ・・・!ルクソフィアを守るのはお前たちの役目だろ!俺たちは関係ない!お前、俺たちも戦いに参加していたらって言いたいんだろ!自分たちの失敗を、人のせいにしやがって!はっ!守れもしねぇで、よくそんな大口が叩けるな!笑わせやが――――――』


「次に――――――」


「話しかけてきやがったら――――――殺すぞ」


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