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R/W  作者: Maki
Chapter 1 : Repeated/World
24/26

出会うべくして

「全機発艦急がせろ!敵は待ってくれないぞ!」

 

 格納庫。発艦要員たちがあわただしく駆け回る。室内は何十機もの大小様々な機体で埋め尽くされていた。

「グランツ隊、リフトオフ!――――――続いてシューベスト隊、レディ!」

 戦闘機四機がリフトで上昇し、甲板の滑走路へ上昇していく。その一瞬、灰色がかった雲がその姿を見せた。


「・・・天候は良くないか・・・」

 格納庫に入ったフラム。今まで海に潜っていたせいで天候はまるで分らなかった。できれば快晴であることを祈っていたが、そう甘くはなかった。


「ちっ・・・」

 フラムの愛機はこの潜水艦キュークジェルエンにはなかった。今はおそらく、ルクソフィアの港にある航空母艦の格納庫に置き去りにされていることだろう。もしくは、敵の手に堕ちてしまったか。だからここにある戦闘機で出撃するしかなかったのだが、どれも旧式の戦闘機ばかりであった。しかも外観だけ見ても、手入れが行き届いていないのは明らかだった。

「こんなのに乗るのかこいつらは。・・・本当に大丈夫なのか・・・?」


 試しに手近な戦闘機に乗ってみる。だが、意外なことに中の機器系統には十分な手入れがされている様子だった。乗り心地も悪くはない。後方を確認しながらペダルを踏んでみても垂直尾翼は正常に左へ右へと動いて見せた。


「その機体でいいですか?」

 そばできれいな声がして驚いて振り返ると、声の主の顔がすぐ近くにあったので、さらに声を上げて驚く羽目になった。

「うぉ・・・!・・・びっ・・・くりするじゃないか」

「あ、すみません。驚かせてしまいましたか。これは失礼しました」

 声の主は少女だった。見た目はフラムよりも、そしてレイズよりも年下に見えた。


「なにか、用か」

「フラム・ミユ大佐。ですよね。ようやくお会いできました。私、本艦で整備士を務めさせていただいています、頂丘渚(かみおかなぎさ)と申します。よろしくお願いします」

 

言葉遣い、顔立ちからして、フラムの目にその少女は温厚で礼儀正しい性格の持ち主に見えた。だが初対面の相手にこの積極性。それに、梯子に片足、機体のコックピット席に片足を乗せ入れた状態での挨拶。見た目と行動にギャップがある。汚れきった整備士の服を身に着け、顔も錆か何かで汚れていた。おそらく、汚れが付いたその服で汗をぬぐった、その時に付いたのだろう。ショートカットで、フラムの藍色より少し明るい髪色。身長は低く、つぶらな碧い瞳、帽子のツバを横に向けた姿はまるで子どもだった。


「ようやく・・・?どういう意味だ、私を知っているのか?」

「渚、オーグ隊の整備完了したのか?」

 機体の下から声がする。男性の声だ。頂丘渚は頭を機体の外へ出し、

「問題ありません!」

 と大きな声で答えた。


「オッケーだ。――――――ってお前、誰と話してるんだ?」

「あ、紹介しますね。こちら、フラム・ミユ大佐です。このたび、本艦に配属になった――――――」

 淡々と話を進める頂丘の肩を、フラムはつかみ、

「おい、配属はおかしいだろ。それだと私がこのままずっと・・・」

 言われた頂丘は、きょとんとした顔でフラムを見つめる。

「・・・いや、なんでもない。――――――そろそろいいか、ここで油を売っている暇はないはずだろ」

 内心焦ってはいるのだが、できるだけ笑顔を見せてそう言った。


「ミユ大佐の班の皆様は、出撃されないのですか?」

「あいつらに慣れていない機体を操縦させるわけにはいかないからな。――――――もういいか」

「はい。失礼しました」

「いいよ。気にしてない」

 そう言いながら、フラムはコックピットの窓を閉める。


「今、テグエント隊がリフトで上昇中です。全機射出でき次第、リフトに乗り、発艦してください。初めての人の中にはリフトに乗るだけで苦労する人もいるので、そこだけは注意してください。後は発艦要員の指示に従って下さい」

 親指を立て、理解の意を示すフラム。

「僚機、いなくて大丈夫ですか?」

 先ほどよりも、グッと強く親指を立てる。

「わかりました。――――――ご武運を、フラムさん」

 そこまで確認して、ようやく梯子を降りる頂丘。先ほど声をかけてきた男性の横にスタッと着地。


 機体が動き出す。リフトに向かってゆっくりと動いていく。


「許可取ったのか?」

 男性が口を開く。彼も同じ整備士の服を身に着けていた。

「そんなことしている間に、この艦が沈むかもしれませんからね」

 男性は、はぁっとため息をつき、ポリポリと頭をかいた。

「やっぱりか・・・。あのなぁ・・・、そんなことして怒られるのは俺なんだぞ?渚」

「本当にダメだと思ったのなら、さっき止めていたのでは?ラザフォード整備士長」

 ニコッと笑みを浮かべる頂丘に、整備士の長は、苦笑いを浮かべた。


「それに」

 彼女、頂丘渚はリフトで上昇していく機体を見つめる。



「ようやく、会えたんです。あの人は、こんな小さな戦いで死ぬような人ではありませんよ」


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