困惑
「艦載機を全機射出!弾幕を展開しろ!別勢力の解析を急げ!」
副艦長のエフィーがマイクを使って声を張り上げている。
「ミサイル更に接近中!距離八百!!十二秒後に着弾予定!!」
「何としても食い止めろ!」
「艦長!前方のガンシップに動きが!艦載機を射出しました!!」
神宮寺が声を上げる。今まで静観を守っていた所属不明のガンシップが突然動きを見せたのだ。
「やつら、このタイミングで!・・・やはり・・・!」
エフィーが苦みを潰したような顔をする一方で、隣の艦長の顔は相変わらずだ。
「攻撃あるまで、ガンシップには手を出すな」
「艦長!!」
エフィーはたまらず、声を荒げる。
「ここでやつらにまで攻撃されては、もう勝ち目はありません!先手を打つべきです!」
その眼は充血し、額には汗が、体のあらゆるところが震えていた。
ドォン!!
艦内に振動が響き渡る。
「敵ミサイル消失!」
「まだ来るぞ!あと九秒だ!――――――艦載機はまだ出ないのか!?何やってる!!」
ほんの少しの間、篁とエフィーのにらみ合いが続いた。
「君のそういう心配性な性格。私は良いと思うが、悪い結果を生み出す可能性もあるということを、肝に銘じておいたほうがいい」
「な・・・にを・・・!」
この状況になって、まだ平静を保っていられる篁に、エフィーはさらに困惑していた。本当にこの状況を理解しているのか、それとも自分の采配によほどの自信があるのか。
艦長は構わず、マイクを手に取る。
「敵はさらに増える――――――、いや、レーダーから姿を消しているだけで、まだたくさんいるぞ。レーダーから目を離すな。わずかな変化を見逃すな。一秒遅れれば、生き残る可能性は減るぞ」
ドォン!!
「ミサイル迎撃!消失しました!!――――――!ミ、ミサイル第二波、接近中!!」
「二時の方向から、距離四千!!三時、七時の方角からも多数接近!」
「艦長、キュークジェルエンの武装だけでは、防ぎきれません!」
「EADSがあれば、こんな数・・・!!畜生!」
各部署から悲痛の声が上がる。すべては混乱しきっていた。もちろん、実戦経験がない彼らには厳しすぎる初陣だった。訓練など、実戦とは天地のように分け隔たっている。実戦経験豊富なら、訓練の繰り返しは効果が期待されるのだが。
『こちら甲板!戦闘機の射出準備、完了しました!』
「順次射出!発艦後は敵を見つけ次第、各個に撃破!時間との勝負だ、一機でも多く上げろ」
艦長は、間髪入れずに答える。
『了解!――――――ちょ、ちょっと!あんた!!』
だが、甲板の発艦要員から困惑の声が上がる。
ブツッ――――――
「・・・艦長・・・?どうしたんですか・・・!?甲板で何かあったんですか・・・!?」