最期の約束
「来たぞロック」
『ああ』
ようやく敵機が視認できる距離になってきた。横一列に並ぶ機影が見える。
『隊長!合流します!』
先ほどまで迫り来るミサイルを撃ち落とし続けていたロックの部下達。敵機を堕とすんだと皆やる気になっているようだ。が、ロックはそんな部下達に冷たく言い放つ。
『お前らはB-00の直衛につけ。C班と合流の後アルモンドへ向かい任務を遂行しろ』
『そんな!』
『私たちはあなたの僚機です。隊長だけを置いて行くことなんてできません」
ロックはこう言われることが分かっていたんだろう。仕方ないとため息をつく。
『命令を聞け。隊長命令だ』
『ですが・・・』
『お前らならわかるはずだ、碧海、樋宮、奈雲。お前らがいなくなったら誰がB班のみんなを守るんだ』
『死ぬ気ですか・・・隊長は』
碧海の言葉に、ロックは言葉をつまらせる。そりゃ十二機相手にたった二機で挑もうなんて、傍から見れば自殺行為だろうな。そう言われるのは当然だ。
だがロックは。
『死ねるかよ』
いつもどおり淡々と。
『まだ約束を果たせてねぇんだ』
しかしその瞳には決意の火を灯しながら言った。
『こんないい加減な人生を送ってきた俺でも、母親との最期の約束を破るような、そんなクズになった覚えはないからな』
ブーストをかけ、ロックは敵機に向かっていった。
『隊長!!』
あとに残されたロックの部下。こうなることが分かっていたのだろう、力なく自分たちの隊長を送り出すことしかできなかった。
『・・・ミユ四等准尉』
「絶対死ぬなよ」
『え・・・?・・・あ』
未だに滑走路から上がる黒煙。早く機体から引っ張り出してやりたい。本人たちはどれだけ無念だっただろうか。あんな死に方、死んでも死にきれないだろうな。
『ミユ隊長・・・』
「あいつのことは任せな、そう簡単に死ぬようなタマじゃない」
『はい・・・』
「死ぬなよ」
『勿論です。自分たちに課せられた使命を全うするまで――――――』
「そうじゃない」
部下たちは何を言われたかわからないようだった。
「目の前で部下が死――――――」
この時の俺の声は震え、目からは涙が溢れていたと思う。ここから先は言葉が喉に引っかかりどうしても口に出せなかった。
ロックの部下に別れを告げ、先行していたロックに追いつく。表情に変わりはなかった。
『あいつらは』
全く・・・心配なら素直にそう言えばいいんだ。わざとそっけなく言いやがって、やっぱ見栄を張るのはお前には向いてないよ。
「護衛に戻ったよ。うちのガンシップとアルモンドに向かってる。俺たちも早く追わないとな」
『その前にお前の部下を』
「・・・ああ・・・そうだな」
互が互いの気持ち、考えを理解している。
「じゃあこいつらをさっさと片付けないとな」
『すぐに終わらせてやるよ』
「先走るなよ、久々の編隊飛行だ」
ザザッ・・・ザザー・・・
『お初にお目にかかる。ルクソフィアの若き少年よ』