十二の機影
『B-01、フォックス2!フォックス2!!』
ロックが敵の砲口にむけてミサイルを放つ。確実に破壊していくが、全長は約千メートルはあるだろうこの航空機、たった二機で堕とすのは不可能といっていい。レイズは黒い塊、アーレウスの上部、背中あたりを攻撃していくが、まるで対地戦闘と変わりない。いや、対地戦闘のほうがよほどいい。止まっているとは言え目標物は空中にあるので、多少は動く。ヘタをすれば壁に激突して死にかねない。
「ターゲット破壊!」
『あとどれくらいだ!』
「少なくとも、あと二百七」
『にひゃく・・・、・・・まじかよ・・・。それは・・・気が遠くなる・・・。てか、少なくともってなんだよ、これ以上増えるってのか?』
ABL照射砲破壊。これで26基目。ターゲット残りあと二百六。
「ああ、多分な・・・。・・・くっ!」
レイズ機の横をレーザーがかすめる。すんでのところで機体を傾ける。
『いままでEADSに頼ってたから、自分の力で敵を倒すとなると難しいね~。よっと!23基目破壊!!』
「だがどういうことか、敵さんにもEADSはついていないようだな」
『なんでだろうね、そこがずっと疑問だったんだけど』
「正々堂々が敵のモットーなのか」
『奇襲かけてる時点で正々堂々とは呼べないけど・・・ねっ!・・・よし、24基目!』
「大佐、ご無事ですか」
しばらく通信がないので、堕とされたんじゃないかと心配になったが、そんな心配は取越し苦労で、大佐機は海面のアーレウスに攻撃を続けていた。それも一機で。
『ミユ准尉、警戒しろ、来るぞ』
思わず、え?と呑気に聞き返してしまった。その時、
ピピッ、ピピッ
突然アラートが鳴り出す。今は常時敵からロックオンされている状態なのでアラートは鳴りっぱなしなのだが、それとは違う警告音だった。
「なんだ」
『レイズ!レーダーを!反応が増えてるよ!』
「反応・・・?」
ロックに言われるがままレーダーに目をやると、確かにさっきよりも数が増えていた。
『十二時の方角!数は十二!高速で接近中!!』
まだ続くか・・・。長期戦は覚悟だな。
「ロック、燃料と残弾数は大丈夫か」
『やー芳しくないね。もってあと3、40分てとこ』
「やれるだけやるぞ。幸い下は滑走路だ。燃料が尽きたらベイルアウトすればいい。イジェクションシートは正常だな?」
『ああ、大丈夫だ。いこう!』
アーレウスの表面を這うように飛行していた二機は一斉に離れ、接近する十二機へ向かっていった。
『こちらリューコス1。各機へ、これより作戦行動に移行する。これよりルクソフィア上空の制空権を確保する。手加減はいらん。向かってくるものは全て叩き潰せ』