レキシ世界
荒廃した世界、生き物の気配もなく死の灰が降り注いでいる。宛も無く歩き続けてどれだけ経ったのだろうか、もはや足の痛みを感じることも無くなってしまった。
いや、宛ならあるのだ。太陽すら隠れてしまったこの世界にも、1つだけ救いはあるのだ。
だが、それを見つけるのは一人だけで十分だ。寧ろ、他の奴に取られる訳にいかない。絶対に自分が見つけなくてはいけない。他の奴に利用されてたまるか
その執念が、運命を手繰り寄せたのだろうか、目の前にはシェルターの入り口。この先にあれがあるはずだ、厳重に見えるそれは簡単に開いた。まるで招いているようだ
中は円形の部屋。周りにはパソコンやらよくわからない機材やらが並んでいた。肝心なのは真ん中にある巨大な機械。きっとこれだ、固まりきった表情が緩むのを感じる。これこそが救いだ
「おい、侵入者。何しに来たんだ」
急に声をかけられた。自分に以外には人は居なかった筈だ。後ろに振り返ると何やら映像が浮かび上がってきた、ホログラフだ。ノイズのせいでよくわからないが、どうやらそのホログラフは人間の姿をしているようだ
「助かるために、ここの研究成果を使いたい」
この映像が何者かは解らないが、無下にするわけにはいかないだろう
「使ってもいい。ただ、条件がある」
それもそうだ。無条件で使わせてくれる訳もない。どんな条件か、無理難題でなければいいのだが
「俺の話を聞け、ちょっとした物語を話してやる」
「はっ?それが条件?」
どんな無理難題だろうと考えていたのに、拍子抜けだ。そんなの赤子にだってできる。
目の前のホログラフをじっと見る、真面目そうな雰囲気だ。強ち本当かもしれない。もしかしたら、ずっと一人で寂しかったのだろうか。いや、相手はホログラフ、つまりはプログラムなのだから、そんなことはないだろう。
その物語の中に、何かあるのかもしれない
「意志が交錯する、無意味な世界の話をしてやるよ




