星の瞬き/蛍
都会に育った僕にとって、蛍などが居る世界や、当たり前ですが星の世界は途方も無く遠い世界です
蛍は綺麗な川に発生します
その綺麗な川には、きっと天空が綺麗に映ります
つまり、その川を見る事で、僕らを"擬似的に空を見る事が"出来ます
そこに星々は映り、また蛍達も映ります
蛍が生まれるには、かなりの障害があります
また、星の光が届くまでも、いくつもの障害があります
星は寿命の果てに、超新星爆発を起こして新しい星を作ります
蛍はその光の舞踏の後に、交尾の後、幼虫を生みます
この詩は、以上の事を踏まえてお読みください
遠い遠い彼方の世界で
その身に炎を宿しているか
その身が消えてしまったか
それさえ知る事の無い僕ら
ただただ空を見たのだ
闇に浮かぶ星の群れ
果て無き数の瞬きは
沈んだ輝きの墓場さ
遠く遠く、暗く暗く
計り知れぬ世界の果て
輝き、瞬く蛍達の宴は
やがて一つ、一つと
静かに消えてしまう
けれどもその輝きは
命の灯火の残り香は
幾千、幾万、幾億の
障害を乗り越えて
届いた、届くのだ
消え行く命の宴の中
新たなる光が宿った
散った星々の結晶が
小さく、けれど確かに
光をその身に灯した
あぁ、あぁ、あぁ
手を伸ばせば届くと
そんな錯覚を覚える
この美しい営みは
この夢幻の輝きは
"絶対に"届かない
"永遠に"届かない
その輝きを見る事しか
出来ない僕らの世界は
どれ程に醜く汚れて
どれ程に暗く沈んで
しまっているのだろう
生まれた新たな命達は
小さな子供達はやがて
その心に宿っただろう
その心に在っただろう
夢や希望の光を失うのだ
暗く、深い世界に呑まれて
けれど消えたその光は
新たな希望を生む事は
無いし、出来ないのだ
そうして彼らは"死ぬ"
抱いていた夢を忘れ
暗く、深い僕らの
仲間入りを果たす
やがて彼らは命を
生み出すのだろう
そうして、また
消えるだけの夢が
消えるだけの命が
その場に生まれる
やがて彼らは年を
積み重ねるだろう
そうして、あぁ
沈んだ夢の残り火を
沈んだ希望の残像を
動かぬ体の中で
思い続けるのだ
そうして、そうして
夢は瞬きさえ残さず
この世から消えて
本当の"夢"のモノに
成ってしまうだろう
それでも光は消えない
誰の心からも光が
誰の心からも夢が
消えてたとしても
世界の中で瞬き続ける
そんな永遠の光が在る
そう、僕は信じる
信じて今日を過ごす
心に希望の"死骸"を
残し続けながらも
静かに夜を待ち続ける
そうして来る光を見る
世界から光は消えない
例え、誰もが死のうと
絶望を心に抱こうとも
星々の、蛍達の輝きは
消える事は無いだろう
悠久に世界を漂う
悠久に世界で瞬く
僕らには届かぬ
その儚い営みを
繰り返しながら、ね