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遠のくということ
遠い落日から潮騒はやってくる
零れおちた輝きは
海硝子にはなれない貝殻たち
のこるものは夜光貝の
幻というかそけき冷たさ
空の螺旋のうちに響いている
遠のいてゆくというさみしさは
砂をさらってゆく漣だ
さようなら、と
掲げた手の隙間から
落日の遠さを測っている
あの遠方からやってくるのだ
こんなにも眩いというのに
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